シーズンオフを賑わす二人。真のスーパースターとは。

シーズンオフでも、様々な話題が尽きないプロ野球界。この時期には契約更改や、FA等の移籍に関するニュースも飛び交う。その中で、今年に関しては、「プレーヤー」でありながら「現役選手」ではない、二人の名前がメディアを賑わせている。

48歳、トライアウトを経てプロ野球界への復帰という、間違いなく前例のないシナリオを実現させようとしているのが新庄剛志だ。世間を仰天させることとなった現役復帰宣言からおよそ1年。テレビなどを通して多くの話題を提供し続けてきた元・プロ野球選手にとって、再びプロのユニフォームに袖を通すための関門が2日後に迫った。具体的な内容は解からないが、シート打撃によってテストが行われると記憶している。

現役時はバッティングもさることながら、「一級品」と評された守備、走塁も大きな武器だった新庄。引退から14年後の現在も同じパフォーマンスが期待できるかと言えば、はっきり言って無理、である。それでも、縦縞の頃からそのプレーを追い続けたファンは皆、「新庄ならば」を口にしてしまう。

イチロー。もう一人、現役では無いながらもプレーヤーとして連日、目にする名前だ。今日まで、智辯和歌山高校で野球部員に指導していた様子がニュースで伝えられている。とはいえ、イチロー自身のプレーを実際に行う姿の写真が殆どで、まるで現役選手そのもののような取り上げられ方だ。

昨年3月の引退後も、草野球でプレーを披露し、打撃のみならず投手としてマウンドに登るなど、投打で躍動する姿がみられた。今年2月、研修の後、学生野球資格を回復したというものの、指導者としての活動よりもやはりグラウンドでプレーするイメージが先行してしまう。状況を変えつつも、この先もしばらくはバットを鋭く振り抜き、グラウンドを駆け巡るイチローのプレーを目に、そして耳にすることは間違いなさそうだ。

同世代であり、平成初期から日本の野球界を盛り上げ、奇しくも同じ2001年からメジャーに渡った二人の現在。進んで行く先は違えども、今なおグラウンドに立つことで、多くの人々を惹きつけていることは確かであり、それ以外の姿を想像することも、難しい。

さらに共通していることは、両者のその一挙手一投足を追うことで、観るものが背中を押されるような感覚を憶えることだ。新たなフィールドに向かいながらも、これまで通りの「自分」を保ち続けている表情に触れると、我々一般人も、前を向き、上を見上げるエネルギーが心から沸き上がる。

ユニフォームを脱いだままでも、新庄、イチローの二人はプロフェッショナルであり、スーパースターであることに変わりはないと改めて感じた、2020年のシーズンオフである。(佐藤文孝)

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