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ゲストハウスの女将になってよかった話

2019年8月に「ライター」から「ゲストハウスの女将」に転職して11ヶ月。大学時代から住み慣れていて知り合いも多かった岩手県盛岡市から、思い切って知り合いのいない花巻市へと引っ越してきて、あっと言う間に1年が経とうとしている。

2020年6月いっぱいで、私はゲストハウスmeinnの女将を卒業しました。今日7月20日まではアルバイトとして入っていましたが、今日が最後の日。残しておきたい気持ちがたくさんある充実した女将生活だったので、振り返りnoteを書こうと思います。

このnoteを書くにあたって、どんな内容にしようかなと悩みました。ゲストハウスをはじめ宿泊業に興味のある方、場を持つことに興味のある方、私の活動が気になっている方、ローカルへの移住を考えている方…いろんな人に届けたい思いや学びがあるのだけど、膨大な情報量になって私も読む人も疲れちゃうなと思ったので、これから自分の人生を生きていく自分自身のために、書くことにします。自己満足noteになってしまうけど、もし良かったらお付き合いください。


どうして女将を辞めるのか?

「女将って、ふみぽんにぴったりだよね!」

そんなうれしい言葉をいただく機会が、自分の想像以上に多かった。辞めることを公表した時にも、「もったいない〜!」「天職だったのに!」「次はどこの女将になるの?」などの反応をいただいて、自分はこんなにも”女将”としてしっくりと生きてきたのか!と驚きました。自分自身、新しいもの・こと・人との出会いに喜びを感じる人間で、ゲストや地域の方々とお話しするのがとても楽しかったので「天職だなぁ〜」と思っていました。

それなのに、なぜ辞めてしまうの?って声がたくさんあったので、先にその理由を二つ書いておきますね。

一つは、女将としてやるべきとわかっているけどできないことの多さに無力さを感じて、「学びたい」という気持ちが大きくなっていったこと。25歳の今、ちょうど20代の折り返し地点。学ぶなら、今だ!と思った。実践は知識よりも学びになると思っている私なりに、女将生活でいろんなことに挑戦してきて、未経験のことや苦手なこともその都度インプットしながらやってきた。だけど足元がふわふわしている感覚がなんとなくずっとあって。「もっとこうしたい」と思うことはたくさん出てくるのに、それを形にする実践力がない。がんばればできたこともあると思うし、「言い訳してないでここでトライアンドエラーでやってけばいいじゃん!」とも思ったけど、私は自分の性格やこれまでの経験を踏まえて、環境を変えて学びにいくことを選択しました。

もう一つは、「自分が心地よく生きる方法」を追い求めるようになったから。今までは、「無理をしてなんぼ!体力勝負!」みたいに思っていて、周りにもたくさん迷惑をかけたり心配させたりしてきた。でも、それじゃダメなんだなと思うようになった。私は「半径5メートル以内の人を幸せにしたい」というモットーみたいなものがずっとあって。大切な人たちに幸せでいてもらうためには、まずは自分のことを大切にして自分がご機嫌でいることが何より大事だと、ここ数年で思うようになった。だから、心地よく生きるためにいろんなことに挑戦して、失敗したりよろこんだりを繰り返して環境を最適化していくのをやっていきたいな〜と考えていて。どんなに遠回りでも苦しくても、それが自分に一番合った生き方だと思えるようになったから、「天職だと思える仕事に出会えて幸せ。ってことで、もう少し自分の喜びを知りに旅に出てきます!」という境地にいたりました。



女将になって良かったこと

①「会いにいく」から「会いに来てね」になった

ライター時代は主に岩手県内を飛び回っていて、話を聞きたい人に会いにいっていた。そして、岩手で面白いことをしている人のところや興味のあるイベントにとにかく足を運んだ。自分で会いたい・行きたい・感じたいと思ったことは徹底的に自分の目で確かめにいった。「文香っていつどこにいるかよくわからない」と言われてたりもした。(笑)そうやって「会いにいく」をやっていた私が、ゲストハウスという場所を持ったことで、「ここに行けばふみぽんがいるから、会いに行こう」と思ってもらえる環境に変化した。自分が動かないことで、いろんな人が好きな時に会いに来てくれる。それを受け入れる側に立てたことがとてもいい経験になった。場所を持つことで、誰かの拠り所になることができたり、元気を与えたりすることができると気付けて、自分に自信を持つことができた。そしてそういう「自分の好きなタイミングで行けて、不思議と落ち着く場所」の必要性も感じた。

②ゲストに世界の広さと面白さを教えてもらった

私は大学を卒業するまで海外にいったことがなかったし、旅行もあまりしてこなかった。だから実は、岩手と宮城以外の土地のことをほとんど知らないままゲストハウスに勤めることになった。meinnには全国各地、全世界からゲストがやってくる。バーカウンターでお話しするとき、それぞれの生まれ育った土地の歴史や文化をたくさん教えてもらった。自分の中にあった「当たり前」がどんどん拡張されていく感覚。聞く話すべてが新鮮で、日本中・世界中に行きたい場所がたくさんできた。そして、もちろんゲストひとりひとりのバックグラウンドや価値観は多種多様だから、どのひとの話も本当に面白かった。「こういう考え方もあるんだな」と、視野が広がる瞬間を何度も感じてきた。meinnで過ごした1年近くを通して、ゲストの皆さんに世界の広さと面白さをたくさん教えてもらって、好奇心旺盛な私に取ってはかなりのエネルギーをいただいた。

③自分が好きな人たちとイベントを開催できた

アパレルブランドのALLYOURSが試着会岩手編をmeinnで実施してくださったり、お隣のホップが有名な町でクールなビールを作っている遠野醸造さんがmeinnでビールを振舞ってくれたり、旅するデザイナーのヨハクデザインさんを呼んで1日限定スナックをやったり、漁師のお友だちと一緒に食べて歌って海の幸を楽しむイベントを開催したり…。meinnの場を生かしてたくさんイベントをしてきた。どれも本当に楽しくて、そう思える・思ってもらえるイベントを一緒にできたことがうれしかった。魅力的な人たちやプロダクトが集まるプラットフォームになっているのをじたし、こういうことができる仕事の楽しさを知った。イベント運営もほぼ未経験だったけど、やりながらコツを掴んできて、かなり勉強になった。イベントはこれからもやったりお手伝いしたりしたいなあ…。

④自分のことが前より好きになれた

「女将〜!」とみんなが親しみを込めて呼んでくれて、肩書きも性別も年齢も国籍もさまざまなゲストと楽しくお話しして、いろんな人が「会いにきたよ!」と遊びに来てくれた。やることなすこと全部自信がなくて弱腰だった私が、「私って女将向いてるかも?」と思えるようになった。これが私に想像以上の自信を与えてくれた。本当にたくさんの人に感謝したい気持ち。さらに、いろんな考え方を持った人と話すことで自分のことがよく分かるようになってきた。自身をつけてもらったこと、自己理解が進んだことで、前よりも自分のことが好きになったし、生きやすくなった。女将をやらなかったら出会えなかった人たちとたくさん出会ってきて何度も奇跡を感じたけど、何よりも、知らなかった自分に出会えたことが財産になった。

⑤花巻の魅力を存分に味わい、知ることができた

花巻に来るまで、レトロな大衆食堂「マルカンビル大食堂」のことくらいしか知らなかった私は、女将になってから花巻中の美味しいお店を回ったり観光スポットに遊びに行ったりした。老舗の定食屋や地産地消のイタリアン・中華。宮沢賢治についてや花巻の温泉郷、伝統工芸…。まるで今まであることを知らなかった宝箱を開けたらどんどん自分好みの素敵なものが溢れ出てくるみたいに、花巻のディープな魅力にはまっていった。meinnのInstagramでそれを勝手に紹介してきたのだけど、反響があってうれしかったのもありどんどん発信した。「お客さんがいっぱい来て、なんだろうと思ったら紹介していただいたみたいで…ありがとうございます」と菓子折りをいただいたこともあった…。(勝手に紹介してごめんなさい)今では花巻のデートコースを提案したり私のおすすめスポットを紹介したりして、勝手に観光大使みたいなことをしています…。今も日々花巻の素敵なところを発掘し続けているのだけど、尽きないです…


女将をやって学んだこと・次に活かしたいこと


①自己理解が進んだ→強いところをより強く、弱いところは向き合って

女将の仕事を「いいね!」と褒めてもらったり、多種多様な考えを持つ人と話したりしていくうちに自己理解が進んで、適性を知ることができた。例えば、「どんな人とも臆することなく会話することができる」「人に寄り添う力が高い」「聞き手と話し手どちらもナチュラルにバランスをとってやっている」「自分が何かをやりたいというより、人を支えたり、応援することに喜びを覚える」「自分の好きなもの・人・ことはいろんな人に教えたくなる性格だから発信するハードルが低くて広報に向いてる」とか。逆に自分が弱い「きっちり計画を立ててその通りに動く」「体系立てて物事を進める」「わからないことを理解するのに人一倍時間がかかる」「考えていることをうまく言葉にできないときがある」などは、この1年で少しずつ理解&克服してきたので、いいところも直していけたらいいなと思うところも理解して、今後も自分とうまく付き合っていける方法をさがしていこうと思う。

②多種多様な考えを知って世界が広がった→誰かの「自信」を支える人になる

女将になったことで世界が広がって自然と多様性を面白がれるようになり、それと同時に「こんなにいろんな人がいるなら、私も私が好きなものを信じて私なりに生きていけばいいじゃん」と自分を認めてあげられるようになった。自信がついた。なのでこれからは、私と同じように自信がない人や他人と比べて落ち込んでしまう人に、「あなたって素敵だよ。そして世界って私が知ってるだけでもこんなに広くってね、あなたが選んだ道が道になっていくから、大丈夫だよ」と、誰かの自信につながることを積極的に行動していけたらいいな。もちろん、おこがましくない範囲で…。

③働きやすい環境づくりに時間を取ること→時間をかけてでも掴み取る

仕事を効率的に進めるためには、自分の環境と体制を整えることに時間を割くのが大事だとわかった。例えばイベントの企画から開催までのやり方をある程度マニュアル化しておいたり、情報を共有しやすいルールや書式を作ったり。「これもっと効率的な方法ないかな?」とアンテナを張りつつ、ビビッときたらすぐに自分や一緒に働く人たちが動きやすいようにカスタマイズするのを億劫がらずにやっていこうと思う。

④考える時間をたくさんとった→考えすぎず実行して形にしていくこと

もともと後先考えずに行動する派の人間で失敗して学んだりもしてきたけど、ライター時代の経験から「考える」ことに時間を取ることが増えて、自分的にはいい方向に成長できたなと思っていたのだけど…meinnに来て、考えすぎてリスクや効果の不確実性に目がいって実行しなかった、みたいなことがあったりした。これでは意味がないので、これからはその間をとって「考えて実行する」をセットでちゃんとやっていきたい。形にすることで見えてくるものも多いし、その過程でどんどんアップデートしていけると思うので、実行力を高めていきたい!


まとめ

夜な夜な人生について熱く語り合ったひとり旅のあの女性は、元気にやっているだろうか。定年退職して奥さんに頭を下げてまでしてひとり旅を続けていたあの人は、今はステイホームしてご夫婦仲良くやっているだろうか。インドのデリー在住で、帰省したついでに寄ってくれた日本人の親子は、今どうしているだろう。日本語はもちろん英語も通じずGoogle翻訳とパッションで会話した台湾からの女性ゲストたち、最終日には私のことを「シスター」と呼び台湾式うどんをご馳走してくれたこと、覚えているだろうか・・・

たくさん書いてきたけれど、ゲストハウスの女将になれて、本当に良かった。悩むこともあったけど、そのたび助けてもらいながら乗り越えることができて成長させていただいたし、毎日刺激的でとにかく楽しかった。今の私は1年前には想像もできなかった私で、ここまで歩いてきた自分に「がんばったね!」といってあげたいし、関わってくださった皆さん全員に全力でありがとうを伝えたい…。

私はこれからも、すっかり大好きになった花巻にいることになりました。ありがたいことに尊敬する人の仕事をお手伝いできることになったので、また新しい環境で一から学びます!女将をやりながら細々と辞めずに続けてきたライターの仕事も続けていきます。隔月で出している「花巻まち歩きマガジンMachicoco」の編集も続けさせていただきます。ライターの仕事は向いてなくても大変でも続けたいことだから、この環境が本当にありがたいです…。最近はまっていて反響のあるタロット占いも、本格的にやってみようと思って勉強中。ああ、やりたいことたくさん。


女将の私と関わってくださったたくさんの皆さん、
本当に本当にありがとうございました。
自由奔放な私なりに、これからも悩みながら笑いながら素直にいきていきます。


卒業記念にもらったお花たちが、不思議とイエローとピンクの柔らかくて明るい印象のものばかりだった。うれしいな


サポートしてくれたら好きがこぼれおちます。