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あのころのファッション。

すこーし、違うんだよなあ。

時代がそういうめぐりになってきたのだろう。このところ、いろんなところで「90年代」に焦点を当てた記事や創作物を見かける。かく言うぼく自身、それに絡んだテーマで何年か前、燃え殻さんと対談させていただいたことがある。

でね。ぼく自身がそれをやっちゃってるんだけど、こういう感じで「あのころ」を振り返るとかならず「90年代=渋谷系」って話になるんですよ。いやもちろん小室哲哉さんの時代だったとか、ミリオンヒット連発の時代だったとかの振り返りもあるんだけど、サブカル的な文脈でいうともう完全に90年代は渋谷系だった、ってことになるんです。

で、それが間違いだとも思わないし、渋谷系とされる人たちの音楽をぼくも聴いていたんだけれども、じゃあ自分がファッションの面においても渋谷系とされる人たちの影響下にあったかというとぜんぜん違っていて。

10代から20代の多感な時期を生きていた自分の実感からすると、90年代の少なくとも前半は、渋谷系の時代というより、むしろ「グランジ」の時代なんです。ニルヴァーナとか、ダイナソーJr.とか、パールジャムとか。ソニック・ユースとか、たぶんティーンエイジ・ファンクラブとかまで含めて。そのへんは「オルタナティブ」とも言われて、分類するのがむずかしいんだけれども。

それでグランジの人たちはちっともオシャレじゃなくって、古着のネルシャツに、だぼだぼのダメージジーンズなんか履いてるんですよね。ステージ上でも。足元はほとんど穴が空いたようなスニーカーで。「ステージ衣装を着る」ということ自体がカッコ悪いし、「ぴかぴかの服を着る」ことさえもダサいとする空気があった。だから古着屋さんも繁盛していたし、ぼくもわざわざ古着屋さんで、へろへろにくたびれたウエスタンシャツなんかを買っていたんです。

んで、もしも現在90年代ブームみたいなものがあるとしたら、それはそれでうれしいことなんだけれど、もう一度90年代と同じファッションに身を包むことはたぶんないだろうなあ、と思ったのでした。

やっぱり、流行りのファッションって「若い人」のためにあるものなんですよね。90年代ブームがきたからといって、夢よもう一度みたいな感じで当時と同じ格好を(当時若者だった)おじさんのぼくらがやっても似合わない。あれは「あのとき」に着るべき服であり、いまそれを着るべきなのは、いまの若い人なんです。