見出し画像

予定調和をやめる問い

韓国での『嫌われる勇気』プロモーションツアーを終え、いろいろ思うことがありました。ありがたいことに韓国では6週連続でベストセラーランキングの1位となり、書店には『嫌われる勇気』韓国語版のみならず、たくさんのアドラー本が並び、まさにアドラーブームの真っ只中。2泊3日の滞在中、十数本のインタビューやトークショーをこなし、たくさんのことを聞かれ、たくさんのことを答えました。

ひとつうれしかったのは、記者さんたちからの質問に「記事を埋めるための質問」がほとんどなかったことです。

ぼくもライターなので、たまに取材を受けると「ああ、これは記事を埋めるための質問だな」と気づくことが多々あります。つまり、原稿用紙4枚なら4枚ぶんの記事を書かなきゃいけないとき、ひとつのコンテンツとしての体裁を整えるための、汎用性が高い、けれども情報として一定の価値がある質問です。

わかりやすいところでは、来日したハリウッドスターに聞く「日本の印象はいかがですか?」「好きな日本食は?」「日本のファンにひと言」などの質問がそれにあたります。そのひとに応じた質問というより、そのシチュエーションに応じた質問、といえるでしょう。

こういう質問は、聞くのもラクだし、その回答にも一定の需要や価値があり、聞き手はついつい、多用してしまう傾向があります。「この映画の見所は?」とか「役づくりで大変だったところは?」なども同じ類いの質問といえますよね。

で、今回韓国では、こうした「記事を埋めるための質問」がほとんどなく、記者のかた個人の疑問や感想に寄った質問ばかりだったんです。要するに、『嫌われる勇気』をしっかり読んでいるし、疑問を解き明かそうという意欲に満ちている。それが瞬時に伝わるからこそ、こちらも真剣に答えるし、回答を言語化していくなかでたくさんの発見がある。予定調和に終わらない、刺激的な時間を過ごすことができる。

こういう取材をしなきゃなあ、と襟を正させられる、2泊3日の旅でした。