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あなたはマドンナじゃない。

仕事で、マドンナの評伝を探していた。

アマゾンを訪ね、検索欄に「マドンナ」と入力する。虫めがねのかたちをしたサーチボタンをクリックする。当然、彼女のCDやDVDがずらずらっと表示される。うん、CDやDVDもいいけどね、ぼくがいま調べたいのは彼女について書かれた本なんだ。左側のカテゴリウィンドウ内にある「本」の文字をクリックする。わあわあわあ。官能小説やらそれに類する雑誌がわんさか表示され、あわてふためいたのちに、ふと思う。

本屋さんではありえないことだよな、と。

たとえば紀伊國屋書店に行ってマドンナの本を探しているとき、CDコーナーやDVDコーナーに迷い込むことなど、皆無に等しい。さらには官能小説コーナーの「マドンナメイト文庫」なんて棚の前に立ちつくす可能性も、さすがにないだろう。

もちろんマドンナの評伝がどこにあるのか、一発で探しあてることもまた、むずかしい。サブカルチャーの棚かもしれないし、ノンフィクションの棚かもしれないし、楽譜・バンドスコアなんかが置かれた棚という可能性もある。なんといっても「置いていない」という可能性もある。

でも、「CDコーナーじゃない」や「官能小説コーナーじゃない」くらいは、あらかじめわかるはずだ。


もしもあのとき、ぼくが探していたのがジャニス・ジョプリンの評伝だったとしたら、官能小説がヒットする可能性はなかった。あの検索結果は、マドンナという特殊すぎる名前がもたらした不幸だったともいえる。そういう大前提はさておきながら、うーん。

それでもやっぱり本屋さんで「マドンナの評伝とかってありますかね?」と聞いて、マドンナメイト文庫なる官能小説シリーズを両手いっぱい抱えてもってくる書店員さんがいたら、さすがにそのひとはクビになってもおかしくないと思う。

まあ、アマゾン大好きだし、毎日のように利用してるんですけどね。