むずむずのことば
「ご来店の際には、リレキジコウゼンブショウメイショと法人の印鑑証明と、運転免許証など個人を確認できる書類を・・・」
法人口座を開設しようと銀行に電話したときのことです。リレキジコウゼンブショウメイショ? ええ、2回聞きなおしました。リレキはわかる。ジコウもたぶんあれだ。履歴事項だ。ショウメイショは間違いなく証明書だろう。でも、でも、ゼンブってなんだ? なんど聞いても担当者さんは「ゼンブ」的な発声をしている。税務か? 履歴事項税務証明書か? なんか意味が通る気がしてきたぞ。でもそんな書類、完全に初耳だ。つくった覚えがない。あわてて税理士の先生に連絡をしました。
「あ、履歴事項全部証明書は、登記簿謄本のことです」
・・・登記簿謄本かよ! っていうか、ゼンブってほんとに全部なのか!
調べたところ、登記簿謄本の電子化にともない、正式名称が「履歴事項全部証明書」に変わったのだそうです。
なんてむずむずすることばだ。「登記簿謄本」ということばにあった重厚感、トップシークレットな桐の箱感、先生お願いします感に対して、どうにもぺらっとしたプリント感、即席感が拭えない。しかも「全部」って。なんか「まるっと」みたいなフランクさ、日常語感がありますよね。
と、考えていて先ほどむずむずの正体に気づきました。「履歴事項全部証明書」って、主体がなんだかわからないのが気持ちわるいんですね。なんの履歴事項の全部を証明する書類なのか。これが「登記履歴事項全部証明書」とかだったら、すっと理解できるのでしょうけど。
主語って大事だよね、というお話しでした。まあ「全部」にはいまだ納得できないままなのですが。