batons_CI_白抜き

来年のことなどを考える。

もともとぼくは、ライターになるつもりなどなかった。

大学時代までは映画監督になりたいと願っていたし、そこから先の数年間は、小説家になりたいと思っていた。いや、後者のほうは積極的に「なりたい」と願っていたというより、「なるんだろうな。そうに決まってるよな」くらいに考えていた。

ライターになったのは、その準備期間のようなものだった。もしも小説家になるんだったら、雑誌のライター原稿くらい左手ですらすら書けるようになっとかなきゃダメだよな。どうせお金も仕事もないんだし。と、かなり舐めくさった態度でライターになったのだった。


ところがあるとき、ふと気づく。「あ。おれたぶん小説家にならないや」

才能がどうこうという以前に、このままだとぜったいに書かないし、「小説を書かないおれ」に失望する気持ちもほとんどないや。こころのどこかに貼ってあった「小説を書く」の付箋が、静かに剥落した。その後、何度か「小説を書きませんか?」の依頼はいただいたものの、床に落ちたかさかさの付箋を拾って糊づけするまでには至っていない。


けれども一方、このままこの働き方を何十年と続けていくことはないだろう、という予感はある。不格好ながらも会社をつくったことは、ぼくにとっておおきな変化だった。けれどももうひとつ、わかりやすくておおきな変化に、たぶん踏み出すのだろう。

来年かなあ。来年のいまごろには、ちゃんとしたかたちでアナウンスできるようにしたいなあ。いや、ぜんぜん当てずっぽうな話で、まだプランらしいプランはないですよ。ただ、思い続けて、考え続けていれば、ちゃんと出会えるはずなので。人に出会ったり、アイデアに出会ったり。