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男子の遊びは、つまらない。

あれはもう10年近く前になるのかなあ。

ずいぶんむかし、ブックデザイナーの祖父江慎さんが「情熱大陸」に出演されたことがありました。『伝染るんです』のブックデザインにぶったまげたのが高校生のころで、以来、いろんなところで目にしてきた祖父江作品。ほぼ日のテキスト中継でもよくお見かけしていたし、かなりたのしみにして放送当日を迎えました。

それで、いちおう大きく同じ「本の業界」にいる者として、放送開始直後からびびりまくりました。当時のぼくは年間15冊くらいの本を書いていて、かなり忙しかったつもりだったのですが、もう、ぼくなんかより明らかに忙しい。なんなら、数倍忙しいと言ってもいいくらい、修羅場。こんなところまで道は続いてるんだ、と空恐ろしくなったのを覚えています。

そしてマッチョや体育会系の対極にあるような祖父江さんが、番組のラストあたりに、ものすごい話をされていたんです。記憶を頼りに、要旨とニュアンスだけ再現してみますね。細かい文言は、たぶん違うと思います。

子どものころ、おままごとみたいな「女の子の遊び」が好きだったという祖父江さん。その理由を問われ、こんなふうに答えていました。


「男子の遊びっておもしろくないもん。だって男子って、最初にルールを決めるでしょ。ルールを決めてから、その中で遊ぼうとする。それが子どものころから大っ嫌いだったの。ルールの外で遊ぶからおもしろいのに」 


体育会系の出身で、そういうノリも決して嫌いじゃなく、自分の忙しさに酔ってるところもあった当時の自分に、このことばはかなり重たくのしかかりました。


ちなみに、『嫌われる勇気』のブックデザイナーである吉岡秀典さんは、祖父江さん率いるコズフィッシュのご出身。事務所にあそびに伺うとき、上がってくるラフを最初に見るとき、いつもいつも「マジっすか!」な驚きを提供してくださる、いまいちばん熱いブックデザイナーのひとりです。

いまも、次回作のブックデザインを吉岡さんにお願いしていて、とてもワクワクする日々を送っています。

みんな修羅場、毎日がラストスパートですよ。