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片づけのあした

近藤麻理恵さんの著書『人生がときめく魔法の片づけ』が、すごいことになっている。英語版が全米で150万部を超え、著者の近藤さんは米TIME誌の「世界でもっとも影響力のある100人」に選出。もちろん日本でもミリオンセラーを超えてたくさんの人に愛されている。

決して大著ではないし、著者の作品群が作品群として評価されているわけではない。たった1冊の本が、ここまで世界を変えるのだ。出版業界の人たち、あるいはコンテンツ全般に関わる人たちは、この「すごさ」をどれだけ理解しているのだろう。ぼくは今世紀の日本の出版物で、いちばん「すごい」ことを成し遂げた本だと思っている。

モノを片づける、とは、要するに捨てることだ。捨てるためには感情をゼロにして、厳格なルールを設定して、システマチックに、機械的に捨てていかなければならない。……ぼくの理解するかぎり、近藤さん以前の「片づけ指南」本は、そういう前提に立っていた。著者も男性陣が多く、理屈としては理解できながら「そんな無味乾燥な生き方がたのしいのかな?」という疑問も、ゼロではなかった。

そこに対して近藤さんは「機械的であるな」と言う。「むしろ感情をベースにしたルールをつくりなさい」と。その感情ベースの判断基準が「ときめき」になるのだが、これによって「捨てる」という機械的な作業が、自分自身を見つめなおすこと、自分自身を変えていくこと、という自己啓発につながった。ボストン在住のエッセイスト・翻訳家である渡辺由佳里さんの記事によると、アメリカでは禅カルチャーの延長のようにして受け入れられているという。


そんな感じで「片づけ」に興味を持ちはじめていた8月のある日、Sumallyの山本憲資さんから、まったくあたらしい「片づけ」サービスをつくる、という連絡を受けた。

「なにをやるんですか?」

ぼくの質問に山本さんは堂々と答えた。

「四次元ポケット、つくります」

「はい?」

そして後日、山本さんは渋谷まで訪ねてきて、そのサービスについて説明してくれた。サービス名は「Sumally Pocket」。びっくりした。これ、ほんとうに四次元ポケットじゃないですか。

(明日へつづく)