見出し画像

クラプトンの『パープルレイン』。

観た回数だけで言えば、いちばん好きなミュージシャンということになる。

ぼくにとってのエリック・クラプトンだ。この人のライブには、何度足を運んだことかわからない。けっこうな頻度で来日してくれる人だし、そのつど複数回、観に行っている。たしか前回の来日(2019年)は武道館5デイズで、そのうち4日、観に行ってしまった。

そんなクラプトンが前回の来日後におこなった母国ロイヤル・アルバート・ホールでのコンサートで、プリンスの『パープルレイン』をカヴァーした。

正直、それほどいい出来ではない。けれどもプリンスへの敬意と愛情が伝わる、ちょっと感動的な演奏だった。

プリンスが亡くなったとき、クラプトンは自身のフェイスブックにこんな追悼コメントを寄せている。

"I'm so sad about the death of Prince, he was a true genius, and a huge inspiration for me, in a very real way....
In the the eighties, I was out on the road in a massive downward spiral with drink and drugs, I saw Purple Rain in a cinema in Canada, I had no idea who he was, it was like a bolt of lightning!...
In the middle of my depression, and the dreadful state of the music culture at that time it gave me hope, he was like a light in the darkness...
I went back to my hotel, and surrounded by empty beer cans, wrote Holy Mother....
I can't believe he's gone...."
「プリンスの訃報にひどく悲しんでいる。彼は本物の天才であり、ぼくにとって(真の意味で)おおきなインスピレーションの源だった。1980年代、ぼくがアルコールとドラッグの悲惨なスパイラルのなかにいたとき、カナダで映画『パープルレイン』を観た。彼のことなんて知らなかった。なのに、まったく雷に打たれたような気分だった! うつ病の真っ只中にいて、ミュージックカルチャーの惨状に絶望しきっていたぼくに、希望を与えてくれた。プリンスは、暗闇の中に輝く光だった。ホテルに戻ったぼくは、ビールの空き缶に囲まれながら『ホーリー・マザー』を書いた。あの彼が逝ってしまったことを、信じることができない」

収録アルバムは1986年の『オーガスト』。プロデューサーにフィル・コリンズを迎えた、決して評価が高いとは言えない「回復期」の佳作だ。

しかし、「ホーリー・マザー」の素晴らしさは際立っており、のちにパヴァロッティと共演した際にもクラプトンはこの曲を選んでいる。


クラプトンの半生を描いたドキュメンタリー映画(壮絶すぎるけど大傑作)を観ると、彼の70年代から80年代はほんとうにひどい。後年のインタビューやライナーノーツその他で語られていることの何十倍も、ひどい。ボロボロにもほどがある。

そんな彼も『オーガスト』のあと、『ジャーニーマン』で復活のきっかけを掴み、あの『アンプラグド』で奇跡の大復活を果たす(そこにも息子コナーの死という悲劇が絡んでいるのだけれど。そしてアルバム『オーガスト』のタイトルはコナーの誕生月に由来するのだけれども)。


えー、なにが言いたかったかというと「1本の映画が人生を救う」は、ほんとうにあり得るということで、自宅に引きこもらざるを得ない今年のゴールデンウィークは、どんどん映画鑑賞にあてていきたいな、というお話です。