IMG_7043のコピー

はじめて乗った電動アシスト自転車。

恥ずかしながら今日、生まれてはじめて電動アシスト自転車に乗った。

別に恥ずかしいことではない。なんなら自分も乗ったことない。そういう人もいてくれるとは思うのだけど恥ずかしいことにペダルを踏んだ瞬間「わあ」と声を上げておどろいた。ぐん、と押し出されるようなパワーに。たくさんの老若男女が平然とこれを乗りこなしているという事実に。「わあ」なんてよろこびつつ通勤しているのが、おれだけであるという2017年の冬に。

ぐん、と押し出されるこの感じ、なにかに似ている気がする。もやのかかった記憶の谷に目を凝らし、ようやく思い至る。ああ、これは補助輪を外して練習していた自転車を、父親に後ろから押してもらっていたときの感覚に似ているのだ。ねずみ色のもやが晴れ、あやふやだった記憶に輪郭線が引かれていく。運動公園のようなその場所で、背の高い木々に囲まれながらぼくは、自転車にまたがって父親に後ろから押してもらっていた。前日だか当日だかに聞かされた「木も草も生きている」という話に納得できなかったぼくは、自転車そっちのけで父親に「じゃあ、あの木も生きてるの? あの木も?」と訊いていた。「なんで? ぜんぜん動いてないよ?」と。

どれくらいの練習を経て自転車に乗れるようになったのか。乗れた瞬間、自分はなにを思ったのか。そのへんはちっとも憶えていない。ただ緑の濃い、春から夏にかけての季節だったこと。「木も生きている」と聞いて以来、風に揺れる木がおそろしく感じられたこと。木漏れ日と風、運動公園の陸上トラック。そんな風景ばかり憶えている。


事務所にこもってキーボードを叩いているばっかりじゃ、そんな景色の記憶はなにひとつ残らないんだろうなあ。忙しいし面倒くさいんで昼ごはんは出前にしようかと思っていたのだけど、これを書いているうちに気が変わった。ちゃんと外に出て、歩いてなにかを食べに行こう。歩きスマホもせず、ちゃんと風と景色を感じよう。

冒頭の写真は、はじめての散歩に出たときのぺだるです。