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牛丼、持ち込むべからず

先週末に神戸出張したときの話です。神戸に向かったのは金曜日の夜。直前までドタバタ仕事をしていたこともあり、また向こうに着いたらロクにお店も開いていないだろうとの危惧もあり、車内でお弁当を買って晩ごはんとしました。いわゆる、駅弁というやつです。

ああ、神戸に行くんだったらおいしい牛肉が食べたいなあ、と思っていたこともあり、購入した弁当は「牛すき弁当」的なもの。敷きつめられたごはんの上に、甘辛く煮込んだ牛肉がのっかり、しらたきと白菜もついていた気がします。お代は1000円。

うん、肉だ。すき焼きっぽいぞ。しらたきも甘いぞ。もぐもぐ。ぎゅうぎゅうに敷きつめられた上に冷えきってしまったせいで、やや餅のようになったごはんを噛みしめながら、ふと思いました。

「これって、要は牛丼じゃね?」
「っていうか、これと吉野家の牛丼、どっちがうまい?」

使っている肉は、この弁当のほうが高いのかもしれない。でも吉野屋で食べればごはんも肉もあたたかい。七味や紅しょうがもついてるし、なんといってもお値段半額以下、380円だ。「牛すき弁当」とか言われると高級食のような気もするけど、てめえほとんど冷めた牛丼じゃねえか。っていうか牛丼まじハンパねえ。新幹線のホームに吉野屋があれば、どんなに助かることか。

と思ったところで、「あ、それはやっぱりいやだな」と気づきます。ふーん、とドアが開いた瞬間に牛丼の匂いが立ちこめる新幹線車内。乗客の過半が一心不乱に牛丼をむさぼり食らうグリーン車。仕事の続きをすべくノートパソコンを開いた隣で、牛丼の蓋を開くおじさん。うんざりですよ。体調によっては気分悪くなりますよ。

なるほど。駅弁というやつは、味と同時に「においがしない」ことが求められる、マナー食なのだな。たしかに牛丼やカップラーメンじゃこうはいかねえや。

冷めた弁当をもぐもぐ食べながら、ひとり納得しながら缶ビールのプルタブを開けた夜のひとときでした。