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サザンオールスターズ。

なんだか個人的にサザンオールスターズ熱が高まったので、ずいぶんむかしにミクシィに書いた日記を、年数とか状況とかだけ現在に改編して再掲載しますね。うん、ぼくはほんとに大好きだったんだよ、サザンオールスターズ。

もう18年前の話である。

突然に、Kという同年輩の男から電話を受けた。

たぶん知ってるとは思うけど、

サザンオールスターズという国民的バンドがいる。

そして彼らが、浜名湖の渚園で結成20周年の記念ライブをやる。

そのチケットが1枚余っているので一緒に行かないか。

と、そんな内容のお誘いだった。


当時、ぼくは東京にほとんど知り合いがいなかった。

Kも知り合いといえるほどの仲ではない。

前年に自主制作映画の撮影現場で知り合い、

たまたま連絡先を教え合っていた、その程度の仲だった。

Kがぼくを誘ったのも、

ぼくがサザンのファンだと知っていたからではなかった。

名古屋から上京したばかりの彼も、

東京に数えるほどしか知り合いがいなかったのだ。

ぼくは彼の申し出を喜んで承諾した。


浜名湖にはレンタカーで出掛けた。

男が4人、女が4人くらいの大所帯だった。

当然、K以外のみんなは初対面だ。もう名前も顔も覚えていない。

浜名湖に向かう車中では、ずっとサザンが流れていた。

Kは筋金入りのサザンファンだった。

曲が変わるたび、収録アルバムやその曲にまつわる雑学を披露し、

バカンス気分の女の子たちに

いかにサザンが素晴らしいバンドであるかを説いていた。

ぼくは語りたい自分、歌いたい自分をぐっと抑え、

眠るでもなく、

しゃべるでもなく、

笑うでもなく、

指先でリズムをとる真似事などをしながら、

不機嫌そうな表情で、ひとり窓の外を眺めていた。


浜名湖での20周年ライブがどんなものだったのか、

もうほとんど覚えていない。

ライブの翌日、海で泳いだ気もするけど

水着なんか持ってなかったはずで、そのへんの記憶も曖昧だ。

ただひとつ覚えているのは、Kと交わした言葉である。

フリーターだったKは、広告関係の仕事を探していた。

俺はクリエイターより営業マンに向いてるし、人が好きだしね。

お前はどうする?

俺?

うーん。俺はライターを続けつつ、小説書くかな。

小説?

うん。

どんな話?

説明するのは難しいけど、SFっぽい話だよ。

タイトルは?

とりあえず『高速回転ミートボール』にする予定なんだ。

ミートボール? なんだそれ!?

読めばわかるよ。

Kは書き上げたら送ってくれ、と目を輝かせた。

普段、俺は小説なんか読まない。

でも、お前のそれ、ミートボールは読んでみたい、と。


そしてサザンが活動停止と復活とをくり返し、

国民的バンドとしての地位を盤石なものとしている現在、

ぼくはKの連絡先を知らない。

広告の仕事にありつけたのかどうかも知らないし、

東京にいるのかどうかさえ知らない。

そしてぼくの『高速回転ミートボール』も書き上げられることはなかった。

どんな物語をイメージしていたのか、

どのへんまで書いていたのかも、漠たるものしか覚えていない。


あれから18年が過ぎようとしている。

25歳だったぼくは、なんということだ。

この夏43歳になる。