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きょうのわたし、その前半戦。

先ほど飛行機が羽田空港を離陸した。

つまり現在、ぼくは機上の人である。帯広行きの飛行機のなかで、パソコンを広げてこれを書いている。自分はどうしてここにいるのかと、いろんな意味で不思議に思う。

そもそも今朝、6時くらいに羽田に集合する予定だった。早朝から札幌(新千歳)に飛び、大きなレンタカーを借りて、そこからわいわい騒ぎながら帯広をめざす予定だった。それが台風15号の接近により、なにがなんだかわからない経過をたどる。

前日入りしよう、というプランが立てられた。最終便で札幌に行って、空港近くのビジネスホテルに泊まって、翌朝レンタカーで出発しようという案も出た。みんな予定を切り上げ、ビジネスホテルも予約し、さあ行くぞと鼻息を荒くしたものの、最終便が飛ぶ時間帯の羽田は相当ヤバイらしいとの情報が入った。だったらしょうがない、もう一本前の飛行機に変更しよう。するよ、してもいいよね。みんなで確認を取って、変更した。が、ほどなく欠航の連絡が入った。そして最終便も、やはり欠航になった。

早朝の便も欠航だから、いちばん早い昼の便、13時過ぎの便で帯広をめざすことにした。札幌からのレンタカー旅はあきらめ、帯広に直接入る。まあ、もう、それでぜんぜんいいよ。「あんぜん第一、おもしろ第二」だよ。ぼくらは互いを慰め合った。

そして今朝。

生意気にも羽田までタクシーで向かおうと思っていたのだけれど、タクシーがつかまらない。迎車アプリもエラーの連続。まあ、そういうものなんだろう。運行を再開したばかりだという電車に乗って、まずは渋谷をめざすことにする。そこから山手線に乗り換えて品川、そして京急に乗り換えて羽田へ。これがいちばん早いはずだ。

もう、この、渋谷までの電車がひどかった。間違いなく自分史上最高の混雑具合で、途中の駅ホームでは突き飛ばされて転倒する人も出ていた。渋谷に到着するころにはすでに汗まみれ、疲労困憊アールの二乗だった。

しかもここで山手線に乗り換えようとすると、なんと品川方面行きの電車は運転を見合わせているのだという。「外回りに乗ったほうが早いと思われます」なんてアナウンスしている。いやいやいや。ぼくは駅を抜け出し、タクシー乗り場をめざした。長蛇の列だった。わっはっは。伊達に何年も渋谷で働いてきたわけじゃない。わたしは渋谷でタクシーを確実につかまえられる穴場スポットを、複数知っておるのじゃよ。スポットに向かう。来ない。来ない。待てど暮らせど、タクシーが来ない。たぶん、ここで待っていてもぜったいに来ない。

「もしかして、間に合わない?」

あせってみんなに連絡を取ると「地下鉄とモノレールは走ってる。大江戸線で大門をめざせ」との指示をいただく。岩清水のごとくに汗をかきながら渋谷駅に走る。銀座線に乗り、青山一丁目から大江戸線に乗り換え、大門をめざす。

「えっ、きょうって誰か、ここでコンサートやってる?」

大門の駅を出て、モノレールの浜松町駅にたどり着いたとき、そんなボケをかましたくなるほどの大行列が眼前に立ちはだかった。列の整理をしている駅員さんに聞いてみると、「1時間待ち」だという。ここから山手線で品川をめざして、品川から京急で羽田に向かうほうが早いという。自分の不運を呪いながら山手線で品川をめざす。

品川から京急に乗り換えようとするも、ここでもホームは人であふれ、羽田空港行きの電車は一向にこない。時計を見ると12:30。もう、どうやっても間に合わない。みんなに「なんとかどうにか向こうで追いつきますから、先に行っててください」とメッセージを送る。

が、なんと飛行機の搭乗も大幅に遅れているらしい。

「まだ間に合う!」
「いや、むりです」
「あきらめたら試合終了」
「その漫画、読んだことないんです」
「読みなさい」

そんなやりとりを交わしつつ羽田空港駅に到着し、猛ダッシュで走り抜け、航空会社の人に LINEグループの画面を見せつつ「お願いします! みんなが待ってるんです!」などと訴え、なんとかどうにか間に合うことができていま、ぼくは機内でこれを書いている。



そして恐ろしいことに、そろそろ着陸の時間である。