見出し画像

爪痕なんて、残さない。

きのうの深夜、博多華丸・大吉さんの番組が放送されていた。

昨年の10月にテレビ西日本(フジテレビ系列の福岡ローカル局)で放送された、コンビ結成29周年の特番らしい。ふたりがハワイに出かけ、ゆるゆると観光してまわるパートと、千鳥のふたりを招いて華丸さんが特製鍋をふるまうパートによって構成された番組だった。

お酒を飲みながら、岡崎家特製の鶏鍋をつくり、食らう華丸さん。そのあいだ大吉さんは千鳥のふたりに、コンビ結成の経緯や、下積み時代、(華丸・大吉との)初対面時のエピソードなどを訊いていく。トークに加わるでもなく、ひたすら鍋をつくり、酒を飲み、鍋を食らう華丸さん。すると、我慢ならなくなったように大悟さんが笑いながら叫んだ。


「華丸さん、アンタここまで1回もボケてねえやろ!」


爆笑する一同を受け流しつつ、大吉さんが言い添えた。


「そうなんよー。この人、自分からボケてみたり、笑いをとりに行ったり、まったくせんのよ。もうね、ただ『ふざける』だけ。いっつも、ちょっと『ふざける』だけなんよ」


ものすっごく納得した。華丸・大吉さんの淡白なおもしろさ、そこからくる好感度、希少性、いろんなものが腑に落ちたひと言だった。ご本人がどれくらい意識的にそうしているのかわからないけれど、「爪痕を残す」みたいな発想や表現が一般的になってきたお笑い界のなかで、ただ「ふざける」だけのおじさんっていう存在は、とてもとてもありがたいものだよなあ、となかば感動するほどの指摘だった。

なんだかギスギスしている世のなかで、ぼくも「爪痕を残す」みたいな発想に走らず、華丸さんみたいなおじさんになりたいなあ、と思ったのだ。高校の先輩だしね。