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#おうち旅行 中学生男子がスナックに吸い込まれた日in鹿児島:中編

中学1年の春休みに無目的に九州一周した話。スマホやPCがいろんなとこに連れてってくれる素敵企画 #おうち旅行 に参加してます。

昨日の前編。界隈の一部から「フィクション疑惑」がもたれがちなんだけど、実話です。

いつもnoteで現実と非現実が入り混じったり、時空の歪んだ話を書いてるから仕方ない。

桜島からフェリーで鹿児島港フェリーターミナルに着いて、そこから何も考えずに鹿児島中央駅(当時の西鹿児島駅)を目指してとことこ歩いてると、スナックの前でお店のママに呼び止められた。

「どこ行くけ?」

たぶん、天文館通りの裏あたりの通りだったと思う。賑やかな歓楽街の水際みたいな感じの通り。メインの通りからちょっと外れたとこを歩くのが昔から好きだった。

開店準備をしていたんだろうか。店のドアが開いていて、ドアの前には仕入先から運ばれてきたのか何かの納品物が積まれている。

どこ行くって聞かれても、とりあえず駅に向かってるだけなので素直にそう答えた。

お店のママは納得したのかしてないのか、ちょっとだけ考えたあとで「ごはんは?」と僕に言う。

ご飯? 考えてなかった。とりあえずパンでもおにぎりでも適当に買って食べられればそれでいい。中学生男子の一人旅ごはんなんてそんなもんだ。それに、その日は西鹿児島駅から夜行に乗る予定だったから。

そうなんだ。基本は夜行列車とか駅で寝るスタイル。どこかの宿に泊まるなんて贅沢はできないし、そもそも泊めてくれないだろうから。若かったし、べつに夜行列車のシートでも駅のベンチでもどこでも寝れたんだ。

22時ぐらいの夜行に乗るってママに伝えたのだけど、じゃあまだ時間あるからうちで食べていきなさい的なことを言う。

正直、ちょっとやだなと思った。どう考えてもゆるぎなきスナック、つまり大人の店と中学生男子は不釣り合いだ。それに、ぼったくりの店だったら面倒くさい。

いやいや、そこまでそんな無法地帯じゃないとは思ったけど(鹿児島の人ごめんなさい)、中学生男子が「ぼったくられました!」とかお巡りさんに訴えても信じてもらえない……。

それより何より、こんなスナックで晩ごはんなんて食べたらお金もったいないという感覚のほうが強かった。お酒も飲めないのに、なんで鹿児島までやって来て知らないスナックのママと晩ごはんを食べなくちゃいけないのか。

もう少し思春期が進んで大人に近づけば「まあ、そういうのも楽しいかも」って思えたのかもしれない。けどさすがにまだ13歳とかだとそうはならない。

なのに、スナックのママは「いいから」という感じで強引に僕の手を引いてお店に連れ込んだ。どういう状況なんだ。

人生で初体験のスナック。まあ、そりゃそうだ。ドラマとかで見る感じを完コピしたみたいな店のつくり。カウンターがあって、無駄にゴージャスを演出したライトがあって、ワインレッドのモケット張りの椅子が並んでいて。

スナックってこういうものだよねの概念が実体をつくり出しているのか、こういうスナックの実体の集合体が概念として結晶化されてるのか。

僕がどうしていいかわからずにいると、ママは「空いてる椅子に荷物置いていいから」と言って、カウンターの中に入り何かをつくりはじめた。

まじか。困った。中学の家庭科の授業もっとまじめに受けておけばよかった。そしたら、僕がつくるのでママはテレビでも観ててくださいとか言えたのに。

それでお店に入ってきた常連さんが「ママ、その子どしたの? え、まさか……!?」とか驚いて「あら、ばれちゃった?」みたいな展開になったかもしれないのに。

結局また長くなったので、続きはこんどこそ後編。やっぱり目的地に着かないマリナさんスタイルのnote旅。

後編へ続く