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素敵な商品と交換しませんか?

一年経てばいろんなことが変わる。

散々、いろんな人が言ってるけど一年前の夏の終わりだか秋の初めに、一年後がこんなふうになってるとは思わない。変わり過ぎの一年。

なんだけど、思ったほど変わってないなということもある。

メール文化もそうだ。出版業界はなぜか伝統的にメールをよく使う。TwitterのDMでもSNSやチャットツールのメッセージでもなくインターネットのメール。

いや、プロジェクト系の書籍だとビジネスチャットも並行して使うのだけど、それでもなぜか「ちゃんとした感じの用件」はメールが未だに多い。

メール文化でいまさらだけど独特だなと思うのは《件名》subjectがくっついてることだ。

これって、よく考えたらふしぎじゃないですか? ダイレクトに相手にメッセージする文化では、件名の概念が形骸化してるし、むしろ面倒くさいと思われてる。

アナログな手紙やはがきの世界でも「件名」を付けることはなかったと思うし、なぜメールの世界だけ《件名》がデフォルトなんだろうか。

まあ、これは「電子メール(E-mail)」(なんか懐かしい響きだな)の、そもそもの成り立ちとか仕組みな話が絡んでくるので、そういうものとしてメール黎明期につくられたということなんだろう。

メールがやりとりされるとき、メールの外見からはわからないヘッダーフィールドと呼ばれる付属の情報(何時何分に作成され、どこを経由してきたとか)がメールにくっ付いて来て、その中にSubjectという項目があるからメールには「件名」がついてる。ざっくりいうと、そういうことになる。

出来のよくない夏休みの自由研究みたいに逸れてしまったけど、なんでそんな話をしてるのか。

送られてきたメールで送信者と件名を流し見て「緊急度」「重要度」をだいたい判別するからだ。原稿の手を止めてでも対応すべきメールなのか、少しあとからでもいいのか。

いちいち全部のメールをその都度読みこんでるとさすがに効率が悪すぎる。

で、メールの流れが穏やかな日にこんなのが来る。

《件名》素敵な商品と交換しませんか?

スパム(迷惑メール)ではない。あるポイントサービスから送られてきたメールだ。これは緊急で重要だろう。すぐ中身を確かめないと。

だけど、素敵な商品。そんなものがあるのか。いや、あるんだろうな。僕が知らないだけで。

仕方ないからメールを開く。ファーストビューで飛び込んできたのは「タルタルソースセット」だった。素敵―――!!! なんだろうか?

いや、タルタルソース嫌いじゃないけど。でもタルタルソースだけのセットって素敵な商品か? というとすごく微妙なところだ。なんじゃこりゃ、というほどひどくもないし、やべぇこれとなるほどじゃない。

まあべつに、すごく期待したわけでもないしいいんだけど、じゃあいったい何だったら「素敵な商品」だったのかがわからないのだ。

これは単純に「釣られた」というだけなんだろうか。メールの件名は奥深い。件名のある世界とない世界は何かが違うのだ。

そして、もし「素敵な商品と交換しませんか?」で、うっかりこのnoteを開いてしまった人がいたらあなたの「素敵な商品」教えてください。月に行ってタルタルソースセットと交換しましょう。


※昔のnoteのリライト再放送です