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2種類のハイプレスを用意する(ミランに見た、敵陣でのプレッシング)

20/21 セリエA 第3節
ミラン vs スペツィア

~ミランに見た、通常のプレッシング時と相手ゴールキック時のプレスのかけ方~

 ゴールキックのルールが変更されたことにより、ボール保持側はゴールキックからのショートパスによるビルドアップの開始が容易になりました。そのため、ボール非保持側はボールの出だしからプレッシングを行うのか、プレッシングの開始点を下げるのかという議論になり得ます。
 そんな中、セリエA第3節のミランvsスペツィアにて、ミランがゴールキックの局面とそうでない局面でプレッシングの構造を変えていて面白いと思ったので分析していきます。


スタメン(home : ミラン)

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(away : スペツィア)

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結果 : ミラン 3 - 0 スペツィア
( 前半 0 - 0、後半 3 - 0 )


ミランの守備
(プレッシング)

 ミランは敵陣でのプレッシング時、相手ゴールキックの局面とそうでない局面でプレッシングの構造を使い分けていた。そのため、相手の通常のビルドアップとゴールキックの局面で分けて分析する。

通常のビルドアップ

① 開始点
 ミランは敵陣でのプレッシング時、下図のエリアがプレッシングの開始点となる「超攻撃的プレッシング」を行う。

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② 陣形
 陣形としては下図のような「4-2-3-1」となる。
 具体的には、ボランチのトナーリとクリニッチが相手インサイドMFを、トップ下のブラヒム・ディアスが相手アンカーをあらかじめマークする。

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③ スイッチと追い込み方
 プレッシングのスイッチはCFのコロンボで、相手CBにボールが出たところをサイドに誘導するようにアプローチする。
 その後、全体がボールサイドにスライドし、ボール周辺のエリアでマンマークとなる。
 マンマークの仕方としては、SHのサレマーカーズ(右)とラファエル・レオン(左)が相手SBを、SBのカラブリア(右)とテオ・エルナンデス(左)が相手ウイングを、ボランチのトナーリとクリニッチが相手インサイドMFを、トップ下のブラヒム・ディアスが相手アンカーをマークする。

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ゴールキック

① 開始点
 ミランは相手ゴールキック時も同様に、「超攻撃的プレッシング」を行う。


② 陣形
 陣形としては、下図のように相手の配置に合わせてマンツーマンとなるような配置となる。
 具体的には、左SHのラファエル・レオンがFWラインに、左SBのテオ・エルナンデスがMFラインに上がる。また、右SHのサレマーカーズは大外に残り、後方のDFラインでは3バックとなる。

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③ スイッチと追い込み方
 プレッシングのスイッチは、GKからボールが配球された時(スペツィアはゴールキック時、基本的にペナルティエリア内に立つCBにボールを出し、そこからビルドアップを行っていた)で、相手CBにボールが出たところをあらかじめ監視していた左SHのラファエル・レオン(左)、CFのコロンボ(右)がアプローチする。
 このとき、ボールサイドのエリアではそれぞれがマークの強度を高くする。その後、相手SBにボールが入ったときは、下図(3枚目)のようにボールホルダーに対して2枚で挟み込む。

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 ゴールキックのルール改正により、攻撃側(ボール保持側)はよりビルドアップの開始が容易になり、選択肢が増えました。
 これは、守備側(ボール非保持側)としても、相手がショートパスでゴールキックを開始した場合に、そのGKからのパス出しからプレッシングを開始するのか、それともプレッシングを剥がされたことを考えてプレッシングの開始点を下げるのかなど、選択肢が増えることになります。
 個人的な意見としては、ゴールキック時のパス出しからプレッシングを開始するような構造が最適ではないのかと考えています。

 しかしながら、例えば今回のミランの場合では、全体としてマンツーマンとなる分、DFラインでは数的均衡となっており、仮に相手FWの選手に対して最終ラインの選手が質的不利になっている場合(相手CFがロングボールの競り合いに長けた選手だった場合や相手ウイングの足が速い場合など)には、そこをロングボールで狙われてしまう可能性があります。
 そこで今回面白かったのが、ゴールキックの時はマンツーマンという構造、それ以外はゾーンマークとマンマークを両立させることでDFラインの数的優位を保ち、サイドに追い込んで全体でボールサイドのスペースを消すという一般的な構造、といった2種類のプレッシングを用意していたことでした。

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