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エリアごとに可変するビルドアップ(ビジャレアルに見た、自陣からのビルドアップ)

20/21 ラ・リーガ 第2節
ビジャレアル vs エイバル

~ビジャレアルに見た、エリアごとの可変式ビルドアップ~

 ビジャレアルは、今シーズンから戦術家として有名なウナイ・エメリ監督が就任しました。また、ダニ・パレホ、コクラン、久保、など強力な選手を獲得し、非常に期待のできるチームになると思います。特にバレンシアから加入したMFのダニ・パレホは、すでに攻守にわたりチームの軸として機能していて個人的にはとても驚きました。
 そんな中、第2節では前線からのプレッシングを得意とするエイバルに対して、可変システムを用いた効果的なビルドアップを行っていました。
 


スタメン(home : ビジャレアル)

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(away : エイバル)

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結果 : ビジャレアル 2 - 1 エイバル
( 前半 0 - 0、後半 2 - 1 )


ビジャレアルの攻撃
(自陣からのビルドアップ)

 ビジャレアルは自陣からのビルドアップ時、相手のプレッシングの開始点によってファーストサードからのビルドアップとミドルサードからのビルドアップで異なる陣形を用いていたので、この2つに分けて分析する。

ファーストサード

① 陣形
 ビジャレアルはファーストサードでのビルドアップ時、下図のような陣形となる。数字で表すなら「2-3-2-3」のようになる。
 具体的には、右ボランチのコクランが右インサイドMFの位置に、左SHのモイセス・ゴメスが左インサイドMFの位置に立つ。つまり、2枚のアンカーから1枚のアンカーへ可変する。また、右SHのチュクウェゼと左FWのパコ・アルカセルがFWラインの外側に立つ。

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② プレー展開
 プレー展開として、原則は後方から「ポゼッションによるビルドアップ」を行うが、相手のプレッシングの強度によっては前線へロングボールを送る「ダイレクトなビルドアップ」も頻繁に行っていた。
 まず、「ポゼッションによるビルドアップ」を行う時は、下図に示すように、GKを含めた後方の6枚で相手の第1プレッシャーラインを越えようとする。ここで、相手のプレッシャーラインを越えるパスを出すのは基本的にCBのアルビオルとパウ・トーレスで、攻撃のタイミングとボールの方向づけを行うレジスタとしての役割はアンカーの位置に立つパレホが担う。

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 また、ビルドアップのルートとしては基本的にサイドで、下図のようにCB、SB、アンカーの位置に立つパレホ(左ボランチ)、インサイドMFの位置に立つコクラン(右ボランチ)あるいはモイセス・ゴメス(左SH)の4枚でダイヤモンドを作り、パスコースを3つ確保する。

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 このとき、インサイドMFの位置に立つコクランあるいはモイセス・ゴメスがパレホの脇に下りてきてボールを受けることもあった。

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 次に「ダイレクトなビルドアップ」を行う時、ロングボールを蹴るのはGKのアセンホかCBのアルビオル、パウ・トーレスであることが多く、ロングボールを送る基準点はFWライン内側に立つジェラール・モレノであった。そして、ボールを収めたジェラール・モレノが前を向き、FWライン外側に立つパコ・アルカセル(左)、チュクウェゼ(右)の裏へスルーパスを送るシーンが多々見られた。
 特に、ロングボールの基準点となるジェラール・モレノは、ロングボールを足元に収めるのが非常に上手い選手だった。

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ミドルサード

① 陣形
 相手のプレッシングの開始点が下がる、敵陣から自陣へバックパスで攻撃をやり直すなどの状況から始まるミドルサードからのビルドアップ時は、ファーストサードからのビルドアップの陣形とは異なり、下図のような「3-1-4-2」となる。
 特徴としては、右SBのガスパール、CBのアルビオル、パウ・トーレスで3バックに可変し、左SBのペドラサが大外で高い位置を取る。また、中盤ではアンカーの位置にパレホ(左ボランチ)が立ち、ハーフスペースの入口(インサイドMFの位置)にコクラン(右ボランチ)、モイセス・ゴメス(左SH)が立つ。

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② プレー展開
 プレー展開としては、下図で示す3バック+アンカー(左ボランチのパレホ)の4枚でショートパスを繋ぎながらボールを散らしていく。このとき、3バック中央に立つアルビオルが、相手プレッシャーラインを越えるパスを出すことが多かった。

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 ここでも、ビルドアップのルートはサイドのエリアで、大外レーンに立つペドラサ(左SB)やチュクウェゼ(右SH)を経由して相手最終ラインの背後を狙っていた。

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 また、ハーフスペースの入口に立つモイセス・ゴメス(左SH)やコクラン(右ボランチ)が大外に開き、ここを経由してペドラサ(左SB)やチュクウェゼ(右SH)の裏を狙っていた。

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 また、CBのアルビオルからハーフスペース入口に立つコクラン(右ボランチ)やモイセス・ゴメス(左SH)への斜めのパスを狙ったり、ロングボールを用いて大外レーンに立つペドラサ(左SB)、チュクウェゼ(右SH)の裏を狙ったりしていた。

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 ビジャレアルのサッカースタイルとしては、相手最終ラインの背後を積極的に狙うという非常に攻撃的なゲームモデルを持つチームだと思いました。
 その中で、より効果的なビルドアップを行うことができれば、それだけ相手最終ラインの背後を取るチャンスが増えるのです。
 そして、ビジャレアルのビルドアップは、相手最終ラインの背後を積極的に狙うというゲームモデルを軸としたものでした。つまり、ポゼッションによるビルドアップなのか、ダイレクトなビルドアップなのかはあくまで手段であり、目的は相手最終ラインの背後を取ることなので、ポゼッションか、ロングボールかのこだわりはないという印象でした。
 今後については、久保選手の出場機会も増えてくると思うので、注目していきます。

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