8.店
地元のお気に入りのビアバーが閉店する。
この知らせを聞いた時の喪失感は、「店」がなくなるということよりも「空間」がなくなることに対してだった。
回数は少なくとも、私がその店で感じ取った空気や、たまたま隣になった人との会話、マスターとの会話、食べたもの、飲んだもの。すべてを一度に失ってしまう。
店というものは、ある種の媒体である。
取り扱うものに、価値をつけて発信する媒体。
その媒体を気に入ることはそんなに多いわけではない。
もともと人と関わることが得意ではない私は、何かのきっかけがないと媒体との関係を組み立てることができないからだ。できないというよりも、どうしてよいのかわからないというほうが正しいか。
要素は転がっていても、どう扱ってよいのかわからないのである。
勇気を出して店に入り、注文し、会話を交わす。
すべて気持ちの動きにより支配されている。気持ちの動きなしに店を選ぶことはないし、複雑なものである。
何が言いたいかというと、このビアバーは最高だったということ。
本当に素敵な空間を、ありがとうございました。
私もいつの日か、空間の感じられる店を開きたいと思う。
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