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書店員でもないのに、身近な人に本をすすめまくってきた話【#読書感想文】

子どもの頃から、本を読むのが好きだった。
そして布教するのである、自分が面白いと思った本を。
他人にとっては、いい迷惑だろう。

だが本を多く所有しているため
「面白い本、紹介して!」
と言われることもしばしば。
ありがたいことだ。


好きな本を共有すると、もっとその人と仲良しになれる気がする。
内心しめしめと思いながら、
「どんな本が好きなの?」
と聞いてみる。
作者の名前を言ってくれる方は、好む方向がなんとなく推察できるものだ。

でも自分が好きなものを把握して、言語化できる方は、意外と少ない。
「何でも読むよ」
という人の言葉の裏には、"ただし私に合う本であること"という本音が含まれている気がする。


現代ミステリーしか好まない人。
ハッピーエンドが好きな人。
イケメンが出てくるストーリーじゃなきゃダメな人。
好むものは人それぞれだ。

"私に合う本"というのは、選ぶのがとても難しい。
私が面白いと思った本を、絶賛されることもあれば、イマイチの反応をされることもあるし、あの人が面白いと言った本が、別の人も同じく感じるかはわからない。
例え仲の良い人通しであっても、面白いの基準は違うのだから。

花田菜々子・著『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』を読んだ。



タイトルどおり、出会い系サイトを通して現役書店員が本をすすめまくってきた日々を綴っている。
出会い系サイトのプロフィールに、

「変わった本屋の店長をしています。1万冊を超える膨大な記憶データの中から、今のあなたにぴったりな本を1冊選んでおすすめさせていただきます」


と記載したという。

何それ、1万冊!?
本好きなら絶ッ対会って見たいよ、この人に!
そんな思いから読み始めた。

本書の本一覧を見ると、バラエティ豊かな選書の数々に圧倒される。
小説あり、実用書あり、哲学書あり。
そして紹介されている本を、思わず手にとってみたくなるのだ。

出会って30分の間に話した内容から、その人に合う本をチョイスするなんて。知識に幅がないとできないことだ。
私にはムリだなぁ。そもそも私には、見知らぬ人とどんどん会って行くガッツもないし。

でも人と本を結びつけていく生活の中で、著者が得られたものを、本書では読者も共有することができる。

書籍のガイド本でありながら、著者の心の充実感まで味わえるエッセイなのである。


思えば私にも、本を通していろんな出会いがあった。
クラス一の地味女だったのに、性格の全く違うイケイケ系女子と仲良くなれたこともあったし、気難しい上司と本の話で盛り上がったこともあった。

そう、最近だって。
入社年数の短い後輩女子。自然、経験のある私が指導することもある。
でも勝ち気な彼女は、それが煩わしいみたい。
ちょっぴり身構えているのを感じる。
…嫌われちゃったかな。
そんな彼女が、私が人に本を貸しているのを見て、
「私にも、オススメがあったら教えて下さい」
と、声をかけてきた。

好きな作家を数人教えてくれる。
小説が好きみたい。
手持ちの本を見せたら、少し困った顔で
「それはもう、読みました」。

えーと、えーと。
1冊だけひらめいた本を紹介すると、パッと顔を輝かせて、
「それは読んだことないです、面白そう!」
持って帰ってくれた。

翌々日。
「夢中になって読んじゃいました。出てくるお料理もお酒も美味しそう。楽しかったです」
ステキな笑顔と共に、お菓子持参で本を返しに来てくれた。

人が喜んでくれる。本を紹介する一番の楽しみだ。
その後、彼女は肩の力が抜けたように、私に話しかけてくれるようになった。

みんな、本が繋いでくれたご縁だ。

本は、私にとってコミュニケーションツールのひとつ。

本を介して人と気持ちを交換できる


という意味の一文があったが、まさしく本を紹介することの醍醐味は、自分の心と、そして人との繋がりを深めることだと思っている。

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