見出し画像

意味のあるリサーチを実行するための考え方

『競合調査などのリサーチをお願いされることがよくあるけど、正直、いまいちリサーチの意義が分からないよ。』『調べた情報を整理したり加工したりするのが上手くできないよ。』という人に向けて、リサーチの考え方についてやわらかく説明したいと思います。

僕の働いている会社では、調べ物に時間だけが掛かってただ情報を集めただけのものに留まっている様子を良く見るので、とても勿体無いなと思っており、こういうふうにリサーチを捉えて取り組んでみたらどうだろうか?という現時点での思考をメモしておきたいと思います。

#1. はじめに - リサーチは情報収集と情報整理 -

僕は、リサーチとは、お題に応じた情報やファクトを収集して(①情報収集)収集した情報を構造的に整理して意味のある情報にする(②情報整理)ことだと思っています。もっと言えば、事業上の意思決定を手助けするインサイトを抽出できていないのであれば、それはリサーチではないと言っても過言ではないと思っています。

市場を勝ち抜くインサイトを抽出するためには、お題に応じてリサーチを設計した上で情報を収集し、意味のある情報にまとめあげる必要があり、意味のある情報にまとめあげるためには、収集した情報から意味合いを見出す力が必要です。ここでは、リサーチの進め方、①情報収集・②情報整理の方法について、考え方・ポイントを記載しておきたいと思います。

#2. リサーチの進め方

リサーチの進め方について、便宜上大きく、①お題・目的の確認、②リサーチ自体の設計、③リサーチの実行・アウトプット作成、の3つのプロセスに分類して考え方を記載してみたいと思います。

①お題・目的の確認
なんと言っても、まずはお題・目的の確認がとても重要です。

例えば、新しい機能の開発を検討しているのか、マーケティングプランを検討しているのか、お題によってリサーチすべきスコープやリサーチの深さが変わりますし、お題・目的が分かっていないと、リサーチに着手したものは良いものの、何を調べれば良いのか分からず、途中から情報を収集すること自体が目的化してしまい、「我々の事業はどういう方向性に向かうのが良いのか?」というような問いに答えるために必要な情報が無いという事態になってしまいがちです。

リサーチから得られるインサイトでどんな課題を解決したいのか必ず確認した上でリサーチに着手したり、メンバーに作業をお願いしたりすることが重要だと思います。

②リサーチ自体の設計
お題・目的の確認ができると、どれくらい詳しく調べる必要があるか(どれくらいの時間で、どれくらいの網羅性を以て、どれくらい精緻にリサーチをするのか)掴めるので、どの情報源にいつどの順番で当たるかリサーチ自体の設計をします。

実際に自分で類似サービスを使って観察するのが良いのか、公的機関の調査レポートから情報をピックするのが良いのか、あるいは、Web検索で二次情報を集めるのが良いのか等、それぞれざっと調べてみて大凡のあたりをつけることをお勧めします。

ざっと調べることでどれくらい時間がかかりそうか、どんな情報がとれそうか感覚が掴めるので、そこから、どの調査にどれくらいの時間をかけるのか、どれくらいの時間で調査結果のアウトプットを作成するのか見積もり、与えられた時間内で必要な情報を集め、意味のある情報に変換することができるように事前にワークプランを練っておくことが重要です。

③リサーチの実行・アウトプット作成
ワークプランに沿ってリサーチを実行する際には、情報の確からしさが分かるように、それぞれの情報鮮度・出所が分かるようにしておくことが重要です。

また、どのように整理できそうか考えながらリサーチを進め、ワークプランに入れていなくても整理する上で追加で必要な情報が出てきたら、柔軟にワークプランを変更してその情報を収集するのが望ましいです。今取り組んでる事業が競争優位に立つには何が重要か?等、今取り組んでいるリサーチの目的を念頭において情報を収集し、収集した情報を見てまた考え、どのように整理すべきかを考え、そして、その整理に足りない情報を再度収集し、整理した情報の意味合いを見出し、よって以て、我々の事業はどうすべきなのか?という問いに対する答えに繋がるインサイトを出すという繰り返しの思考過程・思考力がリサーチには求められるのだと思います。

#3. ①情報収集:どうやって情報を集めるか

例えば、定性的な情報収集には、Web検索、記事検索、民間調査レポートの参照、アンケート調査、ソーシャルリスニングといったものがありますが、目的に応じた適切な情報収集のアプローチを取れるかどうかが重要です。

初期的にどのアプローチを取るのが良さそうかあたりをつけたり、基礎知識をインプットしたりする際にはWeb検索がお手軽な手段なので、そのTipsをメモしておきたいと思います。Web検索の僕の Tipsは、

A. 検索のキーワードを工夫すること
 └ 調べたい内容に関するキーワードの代替キーワードを複数試すこと
 └ 調べながら重要な関連キーワードを見つけること
 └ それらを組み合わせてみること
 └ 複数言語で検索し、
   言語に合わせた検索エンジン(Naver, Baidu, Qihoo等)で探すこと
B. 時には画像検索を活用して最適なページをクイックに見つけることC. Google検索の論理演算子を活用すること(or, and, "", cache 等)
D. 日頃から情報感度高くアンテナを貼っておくこと
  (Google Alerts, Twitter, Quartz, Dow Jones Factiva 等)

です。あと、作業効率という面ではページを開く時に別タブで開きまくった後に、使えるかどうかを判断し、また、使える情報がある場合にはページ情報とセットでメモしながら一気に各ページを見るのが良いような気がしています。Web検索は、調べているうちに目的から離れて自分の興味のあることを調べて時間が経過してしまいがちになるので、取り掛かる前にWeb検索のゴールと時間を設定しておくのもおすすめです。                                    

#4. ②情報整理:どうやって意味のある情報にするか

インサイトを見出すためにまず必要なのは、収集した情報を構造化することです。

「構造化された状態」とは、(1) 全体像が把握でき、またその構成要素も明らかで、(2) 構成要素間の関係がMECEに分かりやすく整理されている状態のことですが、目的に対して重要なインサイトを出すためにどのような構造化ができるのか、また、どのような切り口で見ると良さそうかを考えながら、その切り口に関連する情報を漏れなく収集した上で、情報を体系化していきます。

構造化をするためには、全体を定義し、構成要素に分解する「切り口」を見出すスキル、切り口に応じた構成要素に分解するスキル、構成要素同士の関係性を見出すスキルが必要です。これらは一定の経験と所謂ロジカルシンキングと言われるスキルのトレーニングが必要な部分だと思いますので、参考文献を本記事の末尾に僕の備忘録として記載しておきたいと思います。

#5. さいごに

自分たちが提供している事業の中で、より効果的な企画/設計をするためには、市場の全体的な流れ、ユーザーの課題・ペインポイントを本質的に理解する過程が必要です。

どんな事業やサービスが上手く行っていて、社会やユーザーからは何が求められていて、どういうビジネスモデルや仕組みが今あるのかを知らずに、良いサービスを作ることなんてほぼ不可能に近いのではないでしょうか?

何故一番良いサービスを作れるのか、という問いに対してもっとも単純かつ確実性が高い答えは『世界中のサービスを見た上で、最も良い事例を組み合わせて作るから』だと思います。「良い成功事例を見抜く力」と、単純に真似るのではなく「複数の事例や、自社のサービスと組み合わせる力」を養っていきたいと思います。


#6. 参考文献

The Craft of Research, Fourth Edition
外資系コンサルのリサーチ技法
ロジカル・ライティング
考える技術・書く技術
論点思考 
アナロジー思考

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?