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#暮らしと文化のためにいま休業補償が必要です 【鼎談】舩橋淳×松田“CHABE”岳二×福山哲郎 4月17日

新型コロナウイルスで営業自粛を余儀なくされている全国のミニシアターを守るSAVE the CINEMAや、クラブやライブハウスを救うSave Our Spaceなどさまざまな団体が、補償や助成を求める署名活動を行い、与野党国会議員や各省庁へ提出しています。4月17日は、映画監督の舩橋淳さんと、ミュージシャンの松田“CHABE”岳二さんをゲスト迎え、お話を伺いました。

※鼎談様子はYouTubeでご覧いただけます。

4:17配信バナー

新型コロナ、ラブハウスやミニシアターへの影響は?

福山:まずは映画館・ミニシアターの状況について、具体的にお話をお伺いしたいと思います。

松田:ライブやコンサートのためには、音響、PA、楽器のプロフェッショナルの人など職人のような人たちがフリーランスのチームを作り、ミュージシャンやライブハウスのスタッフとともに働いています。しかし、ライブやコンサートがないので、彼らは3月、4月ともに仕事がない状態です。収入がゼロになっている人も多く、4月の家賃を払えないという話もすぐ出てくると思います。

舩橋:東京都の自粛要請があってから、2月下旬から3月にかけて映画館には人が来なくなって、今は休館状態のところがほとんどです。昨日(4/17)、緊急事態宣言が全国に拡大されましたが、小規模の映画館が、どんどん休館になっています。このままでは、6月ごろには休館どころか閉館になってしまう映画館がバタバタ出てくる。そこで、ミニシアターを救おうじゃないかという運動になりました。それが「SAVE the CINEMA」です。有志の映画関係者だけでなく俳優の方、弁護士の方も参加されています。4月上旬から15日までで、およそ67000筆の署名をいただいて、15日には4省庁、内閣府・厚労省・経産省・文化庁に提出してきました。

10万円一律給付だけじゃ足りない。200万でも...

福山:今は休業されている状態なので雇用主の方々も給料が出しにくい状況にあるのでしょうか。

舩橋:はい。映画館に雇用されているアルバイト、チケットのもぎりから上映する技術者まで様々な雇用がなくなりつつある状態です。なので休業補償という形で補償をお願いしたいとは思っているのですが、未だに政権の方は休業補償という形では認めていません。そこが、一つの大きな争点だと思います。

福山:僕たちが10万円一律給付と言ってきたのは、そうした方々にまずはつなぎの生活費がいるという認識があったからなんです。結果として今日(17日)やっと10万円が決まりましたが、給付されるのが、5月中盤以降になると思うんですね早くても。それと、本来なら収入が激減されている方々には、30万円給付の可能性があったわけです。これも無くなるというのは、一つ大きな問題だと思っています。

舩橋:まずそういう繋ぎの休業補償をしていただかなければ映画館はやっていけないと言われています。個人向けの10万円以外にも、中小企業向けの200万の救済支援の枠があるのですが、家賃や経費を払ったら200万では足りない。扉を閉じなきゃいけないってことですから、それらを補填していただかなければ、続けるのは難しい。また、わたしたちがSAVE the CINEMAとして特に声をあげているのは、ミニシアターの価値です。美術館や博物館やコンサートホールが日本の芸術文化にとって価値があるように、アート作品やドキュメンタリー作品を見せるミニシアターにも文化的な価値があると主張しています。だから、ミニシアターも文化施設として支援されるべきであって、経産省以外にも、文化庁にちゃんと支援してもらわなければいけないと声をあげています。

福山:ライブハウスも同様ですよね。今、若いミュージシャンや演奏者の皆さんがアートとして自分たちを表現する場としてのライブハウス、それが無くなるリスクがあるということですよね。

松田:そうですね。それと、緊急の話では、やっぱりスタッフの給料がなくなるし、10万円じゃ、施設にとっては何にもならない。

福山:お二人が言われるように、ミニシアターもライブハウスも続けるためには家賃や人件費を払わなければいけない。興業ができずに先々の見通しが立たないので、200万とか借金を当面すればいいと言われても、見通しがないと閉館の選択を取らなければいけないというところが出てきてしまう。これが、お二人の今言われたことだと考えてよいのでしょうか。

舩橋:大きな企業体や組織だったら、少々のダメージでも吸収できる体力があるかもしれませんが、小さな興業主や会社、小さなライブハウスというのは存続できなくなってしまう。そういう一番底辺から助けてもらえないかというところで連帯ができたらなと、僕らは思っています。

芸術文化は、私たちの生活に必要なもの。いま、支援が必要

福山:実は、文化庁と経産省の担当者も苦しんでいます。補償措置がない中で行政としてできることに限界があることを、彼らも理解しています。ライブハウスやミニシアターは、映画でいえば若い監督や脚本家の方々、ライブハウスでいえば若いミュージシャンや音響の方々が、アーティストとして大きく羽ばたいて成長していく足掛かりとなっています。そういった場所がなくなることは日本の芸術文化にとって問題だということを、彼ら一人一人は理解しています。ただ、政府全体としては補償ということを言わないので、今ある支援策しか言えないというのが彼らの本音でした。経産省も文化庁の方も、危機に直面している方々の心情を本当によくわかっておられたので、とにかく現場の方の声を聞いてくれと、みんなが声を上げているということを省庁の上部、政府に伝える努力をしてくれと、伝えられました。

舩橋:やはりすごいと思うのは、ドイツのアーティスト救済策だと思います。ドイツの文化大臣は、「アーティストは生命維持に必要なのだ」と言っていました。日本では不要不急という一点のみで線が引かれていますが、アートや音楽、映画というものも、日本国憲法が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」の理念に照らせば不要不急ではなく、生活に必要だと思うんですよね。

福山:感染が広がり皆さんが不安に思ったり、将来の生活に暗雲が漂っている中で、芸術文化と接している瞬間だけ心が安まる、という場面もたくさんあります。その芽を摘んでしまうということは非常に問題だと思います。

松田:僕自身もそうですけど、映画や音楽に救われてきたので、そのための場所がなくなってしまうことは考えられません。

舩橋:現場は本当にひっ迫していて、とても6月まで待てません。政府は救済策として、復興期の助成とか、反転攻勢期のこととか、ウイルスが落ち着いて上方に向かうときの助成について話していますが、そうではないんです。「今」支援が必要なんです!そのことを、みなさんにも考えてほしいです。

福山:イベントと聞くと、ドームやホールなどの大きな会場をイメージがされるかもしれませんが、小規模なものもたくさんあります。今日、お話のあった小さな劇場にとっては本当に今日明日の問題であり、維持ができないということも含めて切迫しています。

舩橋:小さな映画館が地方にはたくさんあります。そうした映画館が細々と、なんとかそこの地域の映画を守ってきているような状況があります。そこで映画ファンが育ち、文化が育まれている場所が全国にはたくさんあります。そういう場所を大事にしていきたいという思いがある。なぜこれだけSave the Cinemaに映画人が集まっているのかというと、みんなその場所に借りがあるし、恩があると思っているから。活動の中でわたしたちは、ミニシアター・エイドというクラウドファンドをやっています。始めて3日でなんと1億円が集まりました。補償を引き出すために国や省庁と交渉していくのと同時に、民間でもできることをやっていこうと映画人たちが立ち上がっています。

福山:すごく大事なチャレンジだと思います。しかしながら、やはり自粛要請や休業要請をしているのは国なのですから、その責任を補償という形で表してほしいと、わたしたちはずっと主張しています。

松田:ライブハウスもクラブも、各施設がクラウドファンディングをやっていて、ものすごい量が同時に立ち上がりました。僕もお世話になったところに支援していきたいと思うんですけれども、個人としてできることには限界があります。ネット上の署名活動、Save Our Spaceが、「持たざる者が持たざる者を助ける」という内容の文章を出していましたが、相互扶助だけでなく、休業補償のような公的な仕組みを求める声を出していくことが必要だと思っています。

福山:今回は、芸術文化の話題が中心となりましたが、お二人が話されていることは、決して芸術文化だけの枠にとどまりません。中小企業や飲食業、ホテルや旅館も含め、たくさんの方々が今、お二人が訴えておられるような状況に置かれています。芸術文化「だけ」ではなく、同じような境遇に立たされている人たちが無数にいるというのが、現状だということを知っていただきたい。

舩橋:わたしたちには、映画業界以外の方を押しのけようという意識は毛頭ありません。皆さんと一緒に「連帯」しながら、足りないものは皆と一緒に獲得していきながら、共に声を上げていきたいと考えています。皆で一緒に助け合おうという気持ちを打ち出していくことが大切だと考えています。

福山:お二人とも、本当にありがとうございました。

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