フクロウラジオ

今語るべき思想やコンテンツを様々な角度から論じる番組です。出演:大熊弘樹、ほか。 感想…

フクロウラジオ

今語るべき思想やコンテンツを様々な角度から論じる番組です。出演:大熊弘樹、ほか。 感想はfukurouradio@gmail.com。podcastでも展開中!

最近の記事

#48『穏やかなゴースト−画家・中園孔二を追って−』を読んで。            

少しの後悔 著者の村岡氏と会ったのは今から2年近く前だったと思う。中園のお母さんからの紹介で、新宿のカフェで中園の評伝を書くための取材を受けた。 中園が亡くなった時どう感じたかという質問に「悲しかった。でもホッとした」という常識はずれな回答をしたことは、今となっては少し後悔している。 だが、中園が亡くなりホッとしたというのは嘘偽りない本音だった。 それほどに中園の存在は自分にとっては大きく、誤解を恐れずに言えばいつでも中園の作品を恐れていた。 芸術新潮連載時、その発

    • #47『君たちはどう生きるか』を観て。

      〜音声版はこちら〜 (※配信内で「よねづげんし」と言っていますが、正しくは「よねづけんし」です。申し訳ありません。) 〜文章版はこちら〜 フクロウラジオ第47回目。今回扱う作品は宮﨑駿監督の最新作『君たちはどう生きるか』です。 本当は語るつもりはなかったのですが、映画を観た後あまりにも変な気持ちになってしまったので、この場で思いの丈を語っていきたいと思います。 ネタバレには配慮しますが、話の流れでネタバレしてしまう部分もあるかと思います。ぜひ一度映画をご覧になってから

      • #46 武尊、狂気のその先。

        〜音声版はこちら〜 〜文章版はこちら〜 はじめに フクロウラジオ第46回目。今回話していくテーマは、格闘家、武尊選手についてです。 フクロウラジオ、主に映画やアニメ、そして思想哲学などの話題が多いこのポッドキャストですが、今回のテーマは格闘技。 唐突な話題に思うかもしれませんが、基本的にフクロウラジオで僕が話す場合は一つのテーマで語っているつもりです。 それは言葉や論理の外側といった、いわゆる芸術の本丸を浮かび上がらせるための語りで、大袈裟ではありますが、きっとあるは

        • #45『現代思想入門』を語る

          ■番組概要
 久しぶりの配信となる今回のテーマは、千葉雅也さん著『現代思想入門』について。 哲学書としては異例のベストセラーとなった本書を、出演者の日常的なエピソードと絡めながら語っています。 脱構築、差異、エクリチュール、本の中に散りばめられた現代思想のキーワードを独自の観点で深掘りします。 ■キーワード 現代思想/ポスト構造主義/ドゥルーズ/デリダ/脱構築/メイヤスー/有限性/東浩紀/否定神学/誤配/文学性/フランス語/エクリチュール/外部/複数性/アンリ・ベルクソン

        #48『穏やかなゴースト−画家・中園孔二を追って−』を読んで。            

          #44『竜とそばかすの姫』-「風景」が語る内面-

          〜文章版はこちら〜 『竜とそばかすの姫』の持つ映像美 今回扱うコンテンツは映画『竜とそばかすの姫』についてです。 『竜とそばかすの姫』は『サマーウォーズ』『未来のミライ』などを手がけた細田守監督が、超巨大インターネット空間の仮想世界を舞台に少女の成長を描いたオリジナル長編アニメーションです。 ストーリーに関しては毀誉褒貶のある今作ですが、細田監督独自の演出は健在で、細田作品の通奏低音となっていた「背景とキャラの関係性」といった面に焦点を絞ると、むしろ到達点とも言える内容

          #44『竜とそばかすの姫』-「風景」が語る内面-

          #43 ソール・クリプキ-名前に宿る神秘-

          〜音声版はこちら〜 天才、ソール・A・クリプキ フクロウラジオ第43回目。今回は追悼クリプキを語るということで、9月15日に亡くなった哲学の巨人ソールAクリプキについて話をしていきたいと思います。 クリプキは哲学史のなかでも歴史上の偉人といった位置付けなので、まだ存命だったことに驚いた方も多かったかもしれません。クリプキは早熟の天才で、1958年、クリプキが18歳の地点ですでに、様相論理学の基礎理論を完成させています。 クリプキの天才エピソードは枚挙に暇がなく、6才で

          #43 ソール・クリプキ-名前に宿る神秘-

          #42『フィッシュマンズ』-魂を揺さぶる普通の詞(ことば)-

          〜音声版はこちら↓〜 映画『フィッシュマンズ』 今回扱うコンテンツは映画『フィッシュマンズ』についてです。 この映画は孤高のバンド、フィッシュマンズの真実に迫ったドキュメンタリー映画となります。 2021年の夏に公開され話題を呼び、今年に入ってから各サブスクリプションサイトで配信が開始され(サイト内課金)、再び話題性を獲得している注目作です。 音楽や映像はもちろん、話の構成が大変素晴らしく、一般のドキュメンタリー映画の枠を超え、芸術の普遍性をも指し示す大作映画となってい

          #42『フィッシュマンズ』-魂を揺さぶる普通の詞(ことば)-

          #41 意識の外側に宿る"リアル"

          〜音声版はこちら〜 大熊 こんばんは。フクロウラジオ第41回目。 今日は、前回の『偶然と想像』の収録で生煮えで終わってしまった議論を、少しだけ掘り下げながら話をしていこうと思っています。話していくのは、大熊弘樹と、そして米地彩さん。 今回は、この二人で話をしていこうと思います。お願いします。 米地 お願いします。 大熊 まだ前回の内容も整理ができてないままなんだけど、 前回、塚越さんと僕らの間で、『ドライブマイカー』についての評価だったり『偶然と想像』についての評価が別

          #41 意識の外側に宿る"リアル"

          #40『偶然と想像』-思想なき思考-

          ■番組概要 今回扱うテーマは濱口竜介監督の最新作『偶然と想像』について。 ベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞し、現在も大ヒット上映中の注目作を語り尽くします。 映画の文法を更新しようとする鬼才、濱口竜介の方法論について議論が白熱しました。 (※番組内で扱うコンテンツはネタバレに配慮していません。) ■キーワード 『ドライブマイカー』/様式美/『恋の渦』/『カメラの前で演じること-映画「ハッピーアワー」のテキスト集-』/フィクションとノンフィクション/シ

          #40『偶然と想像』-思想なき思考-

          #39 『ドライブ・マイ・カー』-深層よりも深い表層-

          〜音声版はこちら↓〜 大熊 フクロウラジオ第39回目、今回扱うコンテンツは映画ドライブマイカーです。 話していくのは大熊弘樹と米地彩さん。今回はこの2人で話していこうと思います。お願いします。 米地 お願いします。 大熊 今日話していく濱口竜介監督の映画ドライブマイカー、公開してから4、5ヶ月くらい経っているのですが、米地さんはこの作品はいつ頃観ましたか?(※収録時は2022年1月) 米地 10月のいつか、でしたね。 大熊 ぼくも同じくらいの時期ですね。 観てから3

          #39 『ドライブ・マイ・カー』-深層よりも深い表層-

          #38『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を語る

          ■番組概要 先日テレビでも放送された『ヴァイオレット・エヴァーガデン』について、手紙の持つ機能や、概念の獲得とは何かという切り口から話をしました。 ■キーワード 京都アニメーション/自動手記人形/背景美術/概念/胡蝶の夢/可能性/進撃の巨人/内宇宙/J・G・バラード/アナイアレイション/実存 ■参照コンテンツ 『ヴァイオレット・エヴァーガデン』 『アナイアレイション』 ■出演者: 大熊弘樹(https://twitter.com/hirokiguma3) 神田聖ら(h

          #38『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を語る

          #37 『イカゲーム』を語る

          ■番組概要 今回は話題の韓国ドラマ『イカゲーム』を取り上げました。情報社会学者の塚越健司さんにイカゲームの爆発的ヒットの背景を分析してもらっています ■キーワード イカゲーム/カイジ/BTS/バトルロワイヤル/愛の不時着/アート ■参照コンテンツ イカゲーム(Netflixより) ■出演者: 塚越健司(https://twitter.com/KenjiTsukagoshi) 大熊弘樹(https://twitter.com/hirokiguma3) ■番組の感想は

          #37 『イカゲーム』を語る

          #36 理解することの不可能性について

          ■番組概要 これまでで最長の収録となった今回は、朝井リョウ『正欲』で書かれたテーマの深掘りにはじまり、性的嗜好の表現論、宗教論、そして実体験に基づいた性愛論など、かつてないボリュームの議論になりました。 後半では誰もが通過しうる性の問題について、「愛とは何か」という切り口から話を展開しています。 ■キーワードとコンテンツ 朝井リョウ『正欲』/水溶性・水溶感覚/ミシェルフーコー『同性愛と生存の美学』/尾崎翠『第七官界彷徨』/南方熊楠/稲垣足穂/ジャック・ラカン/倫理/三島由紀

          #36 理解することの不可能性について

          #35「多様」であることの功罪

          "■番組概要 今回の議論は「多様性」について。 昨今錦の御旗のように喧伝される多様性擁護の議論について、批判的な視点も混じえながらその重要性や可能性に触れています。 多種多様な感情が言語によって分類されていくことによる避けられない問題系など、多角的に論じています。 ■キーワードとコンテンツ 朝井リョウ『正欲』/多様性/正義/リベラル/ロールズ/Z世代/ミレニアル世代/トー横キッズ/ミシェル・フーコー/『グリーンインフェルノ』 ■参照コンテンツ 『正欲』(朝井リョウ 『正欲

          #35「多様」であることの功罪

          #34「演劇」がいざなう社会的身体の解体と構築

          ■番組概要 今回扱うコンテンツはアーティスト高山明さん初の単著『テアトロン』。演劇という概念の拡張を試みる刺激的な一冊です。 高山氏の特殊なトランス体験を演劇史の中に落とし込む作業。それを通じて芸術の社会的な意義が徐々にあぶり出されます。 フクロウラジオでたびたび語られてきた身体性をめぐる話と絡めながら議論しました。 ■キーワードとコンテンツ 高山明『テアトロン』/サルトル『嘔吐』/ギリシャ悲劇/ワーグナー/ブレヒト/全体主義/トランス/アピチャッポン・ウィーラセタクン『フ

          #34「演劇」がいざなう社会的身体の解体と構築

          ex.2『急に具合が悪くなる』から考えるコミュニケーションの可能性(後編)

          ■キーワードとコンテンツ 往復書簡『急に具合が悪くなる』(晶文社/2019)をきっかけにして死や運命について語り合いました。 出演者の実際の経験談とも相まり、議論は予想のしない方向に。「開かれたコミュニケーション」というキーワードをもとにして、見落とされがちな会話の行間にスポットライトが当てられています。 失われゆくものに対する感受性の持ち方や言葉を使うことによる言葉からの解放など、独自の切り口でテーマを深掘りします。 後半ではミュージシャンのくるりや映画監督の押井守、哲学

          ex.2『急に具合が悪くなる』から考えるコミュニケーションの可能性(後編)