見出し画像

「読む空間」をつくる─「concrete block museum」のこと

この度、運営としても参加しているVR空間デザインアワード「VRAA02」に「concrete block museum」というワールドを提出しました。

8/1 18:00から下記審査員と一緒にファイナリスト作品を巡る「審査配信」を行います!ぜひご覧ください!

画像10

https://youtu.be/A0IZxID3p4w

ワールド制作は2個目だったので、色々とギミックやライティングやReflection probeが汚いとか数えきれないくらいやりたくてもできなかったことがあるのですが、とりあえず提出できてよかったです。


「ワールドに誰かが来て楽しんでいる」という事象を観測するのははじめてなので、それだけで嬉しいです。

このワールドをつくる時に考えていたことをざっくりと書いてみようかなと思います。
この後、つらつらと続きますが、一言で言えば「読む空間」をつくることがこのワールドの目標でした。
僕は本業が雑誌編集なので、ある事柄を伝えるときのメディウムは主に文字なのですが、それ以上、それ以外の方法がないかを常々考えていました。
そこで考えたのがこの「読む空間」です。


「コンクリートブロック塀」の近代性

このワールドは2017〜18年に運用していたマガジン「コンクリートブロック路上観察記録」をもとに制作しています。
これはごくごく個人的なアーカイブであり、元々の趣味であった街の徘徊にコンテクストを与えるべく、特定のものに注視することを半年くらい試みた個人的記録です(なので、透かしブロックに特化した卓越した観察者はほかにいっぱいいます)。

コンクリートブロック塀に着目したのは、その存在が日本独特のものであること、また近代化という点では、敷地境界を規定する個人住宅の「塀」という存在は極めて注目すべき存在であるからです。
かつて町家などで壁を共有していた人びとはいつしか境界に分け隔たれ、核家族化していきます。それと共に住居のあり方も変わっていき、住宅同士の境界を規定するものとしてコンクリートブロック塀が現れます(このあたりはもっとほかの影響や細かい流れはありますが)。

つまり、近代化の象徴のひとつとして捉えられるのではないかと考えました。「コンクリートブロック塀」はそうしたことに思いを馳せれる存在ではある一方、唐突に文脈なく存在しているのがこの「透かしブロック」というやつです。


「透かしブロック」はなぜ多様なのか?

こいつらの存在理由としては然るべきググりをかけると「通風のため」という理由が出てくるのですが、その説明がされた時に透かしブロックに「さまざまな意匠が存在すること」を説明する必然にはなっていません(塀には「意匠性が必要とされる」としれっと書いてあったりしますが、社寺などは分かるものの一般住宅でなぜ必要なのかは分かりません)。
だとしたら、こいつらの多様性は一体なぜ生まれたのか?

そうした疑問からも収集を始めたのが先のマガジンです。更新は2018年で止めましたが、収集自体は今も細々と続けています(研究とかあればご教示いただきたいです!)

(漫画家panpanya氏のブログでも収集されている)
https://f.hatena.ne.jp/panpanya/


バーチャルな博物館を建てる

さて、このワールドをつくった理由としては、コンクリートブロックは物質であり、その存在感を写真という二次元メディア、またはテキスト情報だけでは表現しきれないので、その存在感をなんとか出したいということからでした。

たとえば、マガジンには収集した透かしブロックの写真がサムネイルで並びます。しかし、そこではスケールはなくなり、ただただグラフィカルな意匠としての印象が残されるのみとなっています。

コンクリートブロック路上観察記録|FUKUKOZY|note - Google Chrome 2020_07_25 23_42_59

それはそれとして図案の読み取りやすさはありますが、三次元物体としての透かしブロックの存在感といったものはありません。また、フラフラしていて予期しない図案に出会うという偶然性も透かしブロックを楽しむ時の魅力のひとつです。

画像2

積み方まで含めて楽しめるようにしたかった

画像4

こうしてアーカイビングすることは個人的にも楽しいのですが、写真以外のメディアで残せないものかなと常々考えていました。
そうしたことを前々から考えていたこともあり、VRAA02がよいきっかけだったので、これまで集めた図案を3Dモデルとして起こし、それを収める博物館をバーチャル空間として立ち上げるのはどうかなと考えました。

画像5


「個人的なアーカイブ」であること

ただ、近年ではフォトグラメトリと言った選択肢もあります。なぜ、3Dモデルだったかというと、ここでは「個人的なアーカイブ」であることが重要であるからでした(実際にはフォトグラメトリだと透かしブロック単体を取り出すのが難しいというのがありますが...)。

個人的なアーカイブであることというのはつまり「主観と客観の混在」を意味します。
その透かしブロックの図案自体は現実に存在するものの、それに対して私がどう感じたのか、そうした「解釈」みたいなものが個人的には重要だったのです。なので、この「concrete block museum」ではフォトグラメトリと言ったものではなく、写真+3Dモデル+コメントというフォーマットを設定し、それを収蔵しています。

画像3

ここで感じてもらいたかったのは
透かしブロックの図案が単純に量的に豊富であること(ブラウザを繰るだけで一覧できるのではなく、歩き回って発見すること)、そしてそれへの制作者の感じ方(アーカイビングした制作者との対話)です。

画像6

画像7

画像8

ということで、VRAA02 にはこの作品のタイトルを「個人的なアーカイブを個人的な空間で収蔵すること」として出したのでした。
つきましては、このワールドを訪れて「透かしブロック」というリアルワールドの存在のことに興味を持ってもらえたら嬉しいですね。

画像9

この空間はVRChat上で体験することができます。興味のある方がいれば、ぜひ!


余談:「集合記憶」的なアーカイブ

余談ですが、龍lileaさんが同じくVRAA02に提出した「Miyakonojo Civic Center」は僕が考えていた「個人的なアーカイブ」の上位互換になっていました。

このワールドは、フォトグラメトリによって生成された菊竹建築設計事務所設計の「旧都城市民会館」をVRChat上で体験できるようにしたものです。
フォトグラメトリの精度はもちろん素晴らしいのですが、ワールド内には「『都城市民会館1000の記憶プロジェクト』に寄せられたメッセージ」が各所に配置されています。

つまり、ここではフォトグラメトリという「客観的なデータ」と多くの人の思い出という「主観的な記憶」が配置されているのです。ここでは「個人的なアーカイブ」から「集合記憶的なアーカイブ」に昇華されています。
なんてこった...

というわけで、このワールドは素晴らしいので、ぜひ一度体験してみてください。


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
note.user.nickname || note.user.urlname

サポートして頂いたものは書籍購入などにあて,学びをアウトプットしていきたいと思います!

やったー!
71
福田晃司.建築専門誌の編集者です.転職活動中.91年生まれ.デジタルデータと建築が融合すると何が起こるのかをウォッチングしたく,Unityなどをいじりつつネットサーフィンする日々.xRと建築のコミュニティ「xRArchi」/計算分離派/日本バーチャルリアリティ学会認定VR技術者

こちらでもピックアップされています

XR空間を考える
XR空間を考える
  • 37本

来たるべきパラレルリアルの世界へ向けて,XR空間について考える. 主として建築を参照しつつ新しく生まれつつある空間への思考を深化させるための断片記noteです.気になった方はまずは一番上らへんの記事をどうぞ!

コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。