マガジンのカバー画像

日々雑感2018

106
テキストなどを放り込んでいく場.基本的には読書録・映画録になると思います.2018年は精読を心掛ける!
運営しているクリエイター

#都市

トヨタの新しいコンセプトカー「e-Palette」がちょっと面白そう

トヨタは”モビリティ版アマゾン”を目指す トヨタがCESで発表した新しいコンセプトカーがちょっと面白そう. どういうものかというとまずは下の動画をご覧くださいませ. 自動運転車にさまざまなサービスを付加し,モビリティを耐久消費財ではなくサービスとして提供する,という,まあありそうといえばありそうな提案なんだけど,それがビジュアライズされて公式に発表されたということは大きな意味を持つのだろうな. つまりこのニュースはトヨタのような一時代を築いてきた会社が自動車産業において

「おひとりさま」の都市─『ひとり空間の都市論』

同調圧力が高い日本の、おひとりさま。だが都市生活では、ひとりこそが正常だったはずだ。つながりやコミュニティへ世論が傾く今、ひとり空間の可能性を問直す。 *** 南後氏の単著,読了.面白かった.ざっくりと読書メモ. 導入はなんと『孤独のグルメ』から. 「ところで、『孤独のグルメ』の場面構成をパート別に分けた際、何か気づくことはなかっただろうか。そう、「食事」に関する描写と「都市」に関する描写が、ほぼ半々の割合を占めるのだ。都市を手厚く丹念に描写する『孤独のグルメ』は、漫

「初音ミク」を考える─『初音ミクと建築』1

初音ミクと建築について何か考えられないかと勝手に妄想したものです。時間ある方は暇つぶしにでも。 初音ミクとは 初音ミクは、クリプトン・フューチャー・メディアが2007年から展開している、ヤマハが開発した音声合成システムVOCALOIDにより女声の歌声を合成することのできるソフトウェア音源。初音ミクは「未来的なアイドル」をコンセプトとしてキャラクター付けされた。名前の由来は、未来から初めての音がやってくるという意味で、「初めての音」から「初音」、「未来」から「ミク」。ソフト

初音ミクから都市・建築を考えるための断想録─『初音ミクと建築』2

「初音ミク」を考える─『初音ミクと建築』1 ここからは、何か都市や建築につなげれないかなーと妄想したモノです。断片的な思考ですが。 「動員」の性質が変わることによって変わる音楽ホール 劇場や音楽ホールといったビルディングタイプは普段の私たちにとって馴染みのないものである。日本建築学会によって編集された『音楽空間への誘い-コンサートホールの楽しみ』という本にはこんな一節がある。 「…新しいデザインを生む以前にクラシックコンサートホールを支える社会的環境が微妙に崩れようと

卒業制作について

色々悩み始めた時は自分が卒業制作にあたってつくったステイトメントを眺めてみたりするのだが,毎回読むたびに,自分はここから(良くも悪くも)離れられてないなー,と思う.結局制作したものがよかったのか悪かったのかも判断できずに,なんとなく「建築」とか「都市」というものを理解することすらできずに,それに近いのか遠いのか分からないような職について,今もずっとその周辺をうろうろしている. そんなどっちつかずな態度がこのステイトメントにも表れている.そして,このステイトメントは「ここが悪

夢の場所、夢の記憶

さて,前回の予告通りに今回は建築計画学の創始者である吉武泰水氏による著書『夢の場所,夢の記憶』を紹介します. 合理性の極みと言っても良い建築計画学をつくり上げた人による夢日記の空間分析という一見チグハグな本書.そのチグハグさがとても興味深い本書を簡単に紹介していきます! なぜ夢には自分が育った場所がよく現われるのか。25年間にわたってとり続けた自らの夢の記録をもとに、建築計画学の第一人者が、夢に現われる場所/建築の考察に取り組む。 *** 建築計画学とは?吉武泰水とは

東京駅丸の内駅前広場にもっと注目してほしい

最近,日本の都市空間においてとてもインパクトのある空間が誕生しました. それが,2017年12月7日に全面供用が開始された「東京駅丸の内駅前広場」です. 2012年に復元が完了した東京駅の駅舎はインパクトを持って完成し,すっかり東京のお馴染みの顔となりました.そして,歩行者空間「丸の内中央広場」,交通空間からなるこの駅前広場も地味ではありますが,東京駅の駅舎と同じくらいとても興味深いプロジェクトです. 何が興味深いのか簡単に解説します(正確な表現ではなかったら,ご指摘く

都市景観についてのノート

パーソナルな世界実写版『ゴーストインザシェル』などで描かれている多言語の看板が入り混じる都市風景に違和感を感じていたが、ウェアラブルデバイスやインプランタブルデバイスで文字をリアルタイム翻訳して表示言語の統一化をはかれるようになると考えれば、その風景に自分が違和感を感じてしまうのもなるほどなと感じた。 リアルタイム翻訳が浸透すれば、今のように日本語の下に英語、中国語を書く必要もないしいちいち表示選択もする必要がないので、むしろ広告のありかたがスッキリするのではないか。そし

場所と空間と認識についての断片的なノート

「マンション」 マンションの廊下。ただただドアや窓などの開口部が延々と続くように立ち並ぶ空間、そこは映画「マトリックス」に出てくるような無機質な空間にも思える。空き室があっても廊下からは知ることはできない。実はそこにはだれもいない何も無い空間がぱっくり口を開けて待っている。資本主義の欲望によって生み出されたこの空間は空間が人間を欲望している。 「新しい」 「人間にとって既に熟知した建物と基本的に、類似した空間構成を持つ建物は、外見的にかなり異なっていても、なじみやすく受

二重橋駅に〈丸の内〉が追記された

少し前から地下鉄に乗っていて「あら?」と思っていたことがあったのだが,ある人のツイートを見て,やっぱりそうだったのか,と改めて思ったことがある. それは,千代田線二重橋駅に〈丸の内〉という名称が追記されたことだ. 確かによくよく考えてみれば,東京駅に行くには二重橋駅で降りるのが結構近い.これまではなんとなく大手町駅から降りてしまっていたけど,僕がいつも用があるところからは二重橋駅の方が大手町駅より近いかもしれない. そもそもなぜ「二重橋」だったかと言うと皇居へかかる橋に

行けない場所

駅にはどこか、舞台を思わせるところがある。別々のところから来て、別々のところに向かう人々が、すれ違う空間だからだ。街のほかの場所でも、知らない人とすれ違う。しかし、すれ違いの密度がもっとも高い都市空間が駅だ。 都市には行けない場所が溢れている.それはRPGみたいに条件を達成すると行けるようになるわけではない,本当に立ち入ることのできない場所(ある一定の職業に就けば行けるようになるという意味ではRPG的かもしれない)だ. 上の記事のように線路を挟んでホームがある地下鉄はそう

【名古屋と建築】篠田進の御園座1

名古屋の都市は、「顔のない都市」、「白い都市」のような揶揄的な表現をされるように、いたって特徴の無い街だと言える。 「今度、名古屋に行くんだけどオススメの場所ない?」 なんて聞かれても、即座に出てくるような答えはなく、とりあえず「まあ、名古屋城とか?あと、名古屋じゃないけど豊田市美術館いいよ」 なんて言って、次には「まあ、といっても名古屋はなんもないよ」といってしまう始末。 本当に何もないのかと聞かれれば決してそうではないのだけど。 たとえば、大須などは活気に溢れて

建築に入り込むための10冊

4月ですね。僕の所属している場所ではあまり新年度感ないのですが、建築系の学生さんと話す機会があって、ふと思い立ち、自分が建築を学び始めの時に特に学びが大きかった本をサクッと紹介でもしてみようかなと思います。 建築家の日埜直彦さんが『現代思想』2018年4月号でブックガイド書いているので、こっちの方が要チェックですね。(読まなきゃ...) 現代建築に関する16章 〈空間、時間、そして世界〉/五十嵐 太郎ブルータスなどの一般誌やcakesでも執筆している建築史家・建築批評家の

個人的に必読だと思う建築系の本を紹介していく新年度エントリ1─『装飾と犯罪』アドルフ・ロース

昨日に引き続き、新年度エントリ。なぜだか書きたい気力があるので、個人的に必読だと思う建築系の書籍を紹介していこうかな。いくつかの記事を書いていきたいと思っています。昨日のエントリより専門的な内容が入ってくるので、ある程度学んでから読んだ方がより楽しめます!もちろん普通に読み物としても面白いものばかりですので、気になった方はぜひ読んでみてください! 昨日のエントリ↓ 歴史上、もっともスキャンダラスな経歴を持つ建築家による宣言書19世紀にウィーン、パリで活躍した建築家,アドル