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2019読書録

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読んだ本すべてなにかしらの文字列をつづってインターネットの海に放流したいです。
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2019年1月の記事一覧

「新しい暗黒時代」のために「考え続けよう」─『ニュー・ダーク・エイジ テクノロジーと未来についての10の考察』

〈情報の海〉で溺れないために ―― 最注目アーティストによる未来の洞察 現在最注目のアーティスト・思想家による初の著書。 デジタル・テクノロジーに覆われた現代世界を走査し、「新しい暗黒時代」の予兆を抉る。クラウド、気候変動、論文捏造、アルゴリズム、金融市場、ロボット労働、自動運転、機械学習など、数々のトピックを駆使して、未来を鋭く論じる。 情報テクノロジーはますます進化し、経済・政治・社会の変化を加速している。しかし今、人々は溢れかえる情報の海の中で、単純化された物語や「ポス

技術と変容─『ドローンの哲学――遠隔テクノロジーと〈無人化〉する戦争』

新しい技術が生まれたとき、わたしたちは、それをどのように考えればよいのだろうか。 ドローンは、戦争を、わたしたちの社会をどのように変えるか、フランスの哲学者が多角的に分析し、そこから見えてくるテクノロジーと人間のありようは、誰も逃れられない現実だ。 本書は、これからの戦争を考えるための必読書である! *** 大きなプロペラ音を鳴らしながら、飛び立っていく。そして、その姿は次第に小さくなっていき、私たちの肉眼では視認できないほどの距離へと飛んでいく。一方で、それが映し出

「無責任」なファンタジー─『製造人間は頭が固い』

人間を生物兵器・合成人間に造り変える力を持つ“製造人間”ウトセラ・ムビョウ。彼を説得してその能力を発動させようとした人々を、ウトセラは独自のロジックで翻弄していく―“無能人間”の少年コノハ・ヒノオに始まる双極人間/最強人間/交換人間との邂逅、そして奇妙な論理で導かれる結末とは…“ブギーポップ”シリーズの裏側を明かす、異能力者たちによる新対話集。書き下ろし「奇蹟人間は気が滅入る」を収録。 *** 言わずと知れた『ブギーポップ』シリーズの前日譚、と言ってみるもじぶんはブギーポ

不迷の人類へ─『NEVER LOST AGAIN グーグルマップ誕生 (世界を変えた地図)』

著者は、グーグルマップの生みの親ジョン・ハンケの学生時代からの友人でいまも同僚のビル・キルデイ。 ジョン・ハンケとの出会いからキーホール社の立ち上げ、グーグルによる企業買収、そしてグーグルマップが世界的な成功を得るまでの軌跡を描く。 グーグルマップを支える技術の話はもちろんのこと、内部の人だからこそわかるジョン・ハンケやグーグルの雰囲気が、著者とジョン・ハンケ、個性豊かなメンバーとのやりとりなどを通じて伝わってくる。また、グーグル創業者であるラリー・ペイジ、セルゲイ・ブリンと

するっと紛れ込むSF─『女子高生、リフトオフ!』

女子高生の森田ゆかりは、16年前ハネムーン先で失踪した父親の消息を求めて、ソロモン諸島・アクシオ島を訪れた。そこで出会った「ソロモン宇宙協会」の所長、那須田と名乗る男は、父親捜しを手伝うかわりに、ゆかりを協会にスカウトする。そこには、軽量化を余儀なくされたロケット打ち上げのため、小柄で体重の軽いゆかりを飛行士に採用しようという協会の思惑があったのだが…。 *** 野尻抱介氏の作品はあまり読んだことなく『南極点のピアピア動画』くらいなのだが、どちらの作品も現実にするっとSF

「非物語」たちが構成する「物語」─『〔少女庭国〕』

卒業式会場の講堂へと続く狭い通路を歩いていた中3の仁科羊歯子は、気づくと暗い部屋に寝ていた。 隣に続くドアには、こんな貼り紙が。卒業生各位。下記の通り卒業試験を実施する。 “ドアの開けられた部屋の数をnとし死んだ卒業生の人数をmとする時、n‐m=1とせよ。時間は無制限とする” 羊歯子がドアを開けると、同じく寝ていた中3女子が目覚める。またたく間に人数は13人に。脱出条件“卒業条件”に対して彼女たちがとった行動は…。扉を開けるたび、中3女子が目覚める。 扉を開けるたび、中3女子