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パナソニックの旧PDP工場跡回顧で思うカメラ事業の「反省」

日本を代表する総合家電メーカー「パナソニック」。
私の居住地は兵庫県尼崎市なのですが、その尼崎の南部臨海地域には、かつてパナソニックの象徴であった「プラズマディスプレイパネル」の工場がありました。
今回は、かつてあったプラズマディスプレイパネルを写真で回顧し、そこから見るカメラ事業について私なりに述べます。

※以下、名称紹介をパナソニックPDPとします。

かつて尼崎に存在した「パナソニックPDP工場」

旧パナソニックPDP尼崎工場の全景
敷地内を横断している高架道路は、阪神高速5号湾岸線
※2014年6月撮影
旧パナソニックPDP尼崎工場 正門横の看板
※2014年6月撮影

尼崎工場が稼働したのは2004年のこと。
大阪府茨木市に存在していた第1・第2に続いて、第3~第5工場が尼崎市末広町にと規模拡大の一方でした。
JR立花駅・阪神出屋敷駅から朝夕のみではありますが、多数の路線バスが運行され、どの便も長い行列からの高い乗車率でした。
プラズマテレビこそがパナソニックの強みであったように思いますが、それとは裏腹に海外(特に韓国など)の安い液晶テレビに押され、わずか10年で生産終了。工場は全面閉鎖となり解体されました。

旧パナソニックPDP尼崎工場の建物を、対岸の尼崎のびのび公園より望む
2015年3月撮影
上の写真と同じ位置から
現在は建物が建て替えられ、物流会社の倉庫になっている
2021年10月撮影

かつて実家には、パナソニックのプラズマテレビが置いてありました。
大画面でキレイなのとは裏腹に、発熱量が多い、ラジオへの高ノイズ、パネル寿命の短さといったデメリットが大きかったように思います。


パナソニック製品、もとい松下電器産業時代(ナショナル・パナソニック)の製品は、両親の影響で購入していたものがほとんど。
白物家電やAV機器、更にはノートパソコン「Let's note」まで持ってました。
しかし、テレビは最近ほとんど見ておらず、今後買うとしても白物家電(洗濯機などモーター系のものは除く)くらいになるでしょう。

カメラブランド「LUMIX」20周年

さてここからが本題。
パナソニックが抱える事業の一つ、カメラ事業について
パナソニックは、2021年11月にデジタルカメラブランド「LUMIX」が20周年を迎えた記念の年です。
LUMIXはコンパクトデジカメとレンズ交換式の両方を出していますが、大きな特徴として

  • マイクロフォーサーズ規格の小型センサー搭載と、本体の小型化

  • 優れた動画記録性能

  • 「4Kフォト」 動画機能を応用した写真記録方式

  • ライカレンズの採用

などあります。
ちなみに、2008年は世界初のミラーレスカメラ「DMC-G1」を発表しました。

オリンパス(当時、現在OMデジタルソリューションズ)と共同で「マイクロフォーサーズ」規格のマウントを開発していました。
もちろん両メーカー共通規格なので、両社間の装着も可能です。
あと、LUMIXは動画機能に優れているため、YouTubeなど動画配信に使用されている方もおられるほどです。

パナソニックのカメラ事業に対する「反省」

さて、2022年に入った直後、日経新聞の紙面およびネットニュースに、このような記事が掲載されました。

上記記事より、カメラ売上のシェアが1桁台で、苦戦を強いられているとあります。
原因は大きく3つ

  • マイクロフォーサーズという小型センサーが不利な状況
    フルサイズに比べて、画質の向上に限界がある
    (注意:高画素化できないというのは、一概に言えない)

  • 製品開発や製造が「メーカー主導」であったこと
    開発段階からユーザーの意見やフィードバックが蔑ろにされた?

  • スマートフォンの高画質化と手軽さも、シェアダウンの一層の拍車

特に製造だけに囚われたあまり、開発や製造の過程において「メーカー主導」だったことについては「反省」しているとのことです。
ですが、そうでなくとも、ソニーが「フルサイズミラーレス」でシェア独占という事実に変わりはありません。(キヤノン・ニコンに巻き返されるのは必至だが)
ソニーはさらに動画機能に特化した機種も登場させているので、尚さら不利になっていると思われます。

また広告戦略ですが、
パナソニックの場合、CMに綾瀬はるかさんを採用していました(現在も各製品のCMには出てますが)。
しかし、売上につながったとは言い難いです。
オリンパスも過去に宮崎あおいさんを採用し、所謂「カメラ女子」ブームを巻き起こす、とされていましたが…
難しい状況にありました。

カメラのCMは、“国民的人気“と言えるような女優を採用しても、売上に繋がるとは限りません。そもそもの原因がメーカー主導だったということもあり、結果として他メーカーに遅れを取ることになってしまいました。

さらにキヤノン・ニコンを追う形で、ライカLマウント採用による「フルサイズ市場」に進出しましたが、他メーカーにはほど遠い状況です。
だからといって、多数のユーザーを抱えているのですから、業績が悪化しているからといってカメラ事業撤退という安易な決断は絶対にしてほしくないのです。
ユーザーがいる以上は、末永いサポートが最重要となります。
カメラ本体・レンズが高価であり、長期間使うものであるだけでなく、「写真」という文化の発展にも大きく影響します。
メーカーの開発者の方々には、単にカメラを作るだけではだめです。
コンセプトを明確にし、ユーザーが何を求めているのか意見を汲み取らなければ、いい製品は出来ません。

パナソニック(全体としての)復活に向けて

パナソニックは2022年4月には各事業ごとの持株会社へ移行するとされますが、優れた放送用カメラも抱えているとはいえ、スチルカメラとは非なるもの。
動画機能の強みを生かしつつ、スチルカメラにおいてはキヤノンやニコンをお手本に、ユーザー目線かつユニークな製品を送り出して欲しいと思っています。

本記事はカメラに特化していますが、白物家電などその他の事業についても同じです。
「Let’s note」「TOUGHBOOK (TOUGHPAD)」はいい話を聞きますが、その他は海外(特にチャイナ系)の脅威が大きいように思います。
カメラ事業においても、プラズマテレビ撤退のような衝撃は避けてほしい。
日本を代表する家電メーカーだけに、日本の技術力の高さおよび経済を支える大きな役割を今後も担って欲しいと思うのは無理なんでしょうか。

お読みいただき、ありがとうございました。

私自身の作品づくりはもちろん、カメラや写真の明るい未来を信じて活動します。 いただいたサポートは、喜んで有効に使わせていただきます。