色素性乾皮症(指定難病159)

色素性乾皮症は露光部の皮膚にしみがたくさん生じ皮膚が乾燥し、皮膚がんが普通の人の数千倍多く生じる病気で半数以上の患者で神経症状が現れる。また多くの患者で日に当たると異常に激しい日焼けの反応が生じそれが引くのに1~2週間かかる。この病気にはA-G群とV型の8つの病型が知られているが、それらの症状はどの病型かによってもその程度や現れ方が異なる。色素性乾皮症の患者の割合は日本では人口2万2千人に1人の割合と考えられている。いくつかの資料、文献から得た情報に現在通院中の方などを加えると、おそらく300 - 600名の患者がいると推定される。この病気は遺伝病であり男女による頻度の差はなく、特にどのような人に多いということはない。全世界中の全ての人種で見つかっている。ただ、日本では欧米と比べると頻度が高く特にA群とV型が多いことがわかっている。両親のうちの両方がこの病気の遺伝子を持っている(保因者)場合、その両親から生まれた子供が発症する確率は1/4となる。XPA~G群、V型全ての原因遺伝子はわかっている。A-G群の遺伝子はヌクレオチド除去修復という遺伝子の傷を修復する過程に必要な蛋白を作る。V型の遺伝子は損傷乗り越え複製という機構に必要な蛋白を作る。この複製機構があることにより紫外線によって突然変異が生じるのを防いでいる。この病気は常染色体劣性遺伝という遺伝形式で遺伝する。すこし詳しく説明すると、ヒトの染色体は46本あり、そのうち2本は性染色体で男女の性別を決めるものですが、残りの44本の染色体は2本ずつ対になって22対あります。いろいろな遺伝子はこの対になった染色体にそれぞれ1個ずつ(1対、計2個)ある。XP-A群の遺伝子はこの22対の染色体の9番にある。B 群、C群、D群、E群、F群、G群、V型はそれぞれ2、3、19、11、16、13、6番染色体にある。仮に母親も父親もXP-A群の保因者とすると、それぞれの親の9番染色体の一対ある染色体のうち片方のXPA遺伝子に異常を持っているわけであるが、片方の染色体の遺伝子異常だけでは発症せず、全く普通の人と同じように陽に当たる事が出来る。子供は両親の2個の遺伝子のうち1個ずつを受け継ぐが、たとえば、この時、父親からも母親からもXPA遺伝子に異常がある方の遺伝子を受け継ぐ確率が25%ある。そのような場合 XP-A群として発症する。日本は島国で特定の遺伝子異常を持っている集団がいる。たとえば、日本で最も多いXP-A群を例にとると、8割以上の患者はXPA遺伝子の同じ遺伝子異常で発症しているが、日本では113人に1人は片方の遺伝子にこの変異をもつ保因者。たまたま、その保因者同士が結婚して1/4の確率で患児が生まれることになる。病型によって症状は異なる。共通する症状は日光露光部に発生する皮膚がん。しかし、すぐに皮膚がんが生じるわけではなく、最初のうちは日光に繰り返しあたるうちに露光部の皮膚にしみが増え皮膚が乾燥する。A群では光線過敏症状が非常に強く、生後初めての日光曝露後に健常人と比べてはるかに激しい日焼けの反応が生じる。たとえば5分外出しただけでも真っ赤に顔が腫れ、涙が出て、翌日には水ぶくれも生じ、その症状は日を追うごとに増し4日後あたりがピークとなる。眼の白目の部分も紅く充血する。このようなことを繰り返すうちに日に当たる部位に1~2歳でそばかす様の色素斑が目立ってくる。C群やV型については日焼けの反応がひどいという症状ははっきりしないことも多く、日の当たる部位に10歳までにしみがたくさん生じ日光曝露量にもよるが、20歳頃から露光部に皮膚がんが生じ始める。中年以降皮膚がんが多発して初めてXPと診断される場合もある。神経症状については日本ではA群の患者で多くみられる。頚のすわり、寝返り、つかまり立ち、歩行などは通常よりやや遅れが見られるもののほぼ年齢相応の機能が獲得できる。運動機能のピークは6歳頃で次第に転びやすいなどの神経症状が出始めるが、通常の意思の疎通は十分に行なえる。学童期前半で聴力レベルの低下が見られ学童期後半では補聴器装用が必要となる。知的障害の進行と聴力低下に伴い15歳ころに言語機能は消失する。体のバランスを保ちにくいことも特徴でよく転ぶ。残念ながら現時点で患者を完全にXPから解放できるような治療法はない。細胞レベル、動物実験レベルでは原因遺伝子を外から入れると遺伝子の傷を修復する能力が改善する効果は得られているが、ヒトではまだ試みられていない。皮膚症状については遮光を確実にすることで皮膚がん発症をかなり防げるようになってきた。しかし、確定診断が遅かった症例では皮膚がんが次々と生じてくるので、出来てしまった皮膚がんは早めに見つけて大きくならないうちに切除する。がんの標準的な治療はがんの周辺の正常な部分もつけて切りとるのだが、XPでは切り取った部位に日の当たっていない別の部位から持って来た皮膚を貼付ける(植皮と言います)という方法がとられる事が多い。神経症状を伴っている患者では、入院をきっかけに体を動かす機会が減ってしまうためか、日常できていた生活動作が出来にくくなることがしばしばみられる。その観点からも遮光による皮膚がん発症の予防は重要である。神経症状については良い治療法がないのが現状。神経症状が何故おこるかということもまだ研究中である。それが解明されれば良い治療法がみつかると思われる。拘縮によってますます行動範囲が減ることで可動性も悪くなることから、リハビリ訓練もされているが、どのくらいの負荷をかけるのが良いのかについてもまだ答えが出ていない。尖足や内反足による歩行困難に対しては整形外科で装具をつけて矯正をしたりすることもある。このように、症状によって、それに対応した治療になるので、定期的に医師の診察を受けることが必要。重症例では生まれてすぐの日光浴で日に当たった部分が赤くはれ、治まるのに1週間から10日かかるが、そのようなことを繰り返すうちに、しみ、皮膚の乾燥などが増えてくる。そのまま放っておくと10歳以下でも皮膚がんが日光にあたる部位に多数出現する。神経症状のない病型の方だと、若いうちに診断がつき遮光をきちんと行えば、生命余後は良好。神経症状を伴う型では、症状の程度にもよるが、20歳くらいになると歩くのが難しくなり誤嚥などを起こすこともあり、そのために肺炎をひきおこしたりすることもあるので、胃ろうを作る事が多い。夜,無呼吸発作が生じる事も有り、そのような場合には、命にかかわるので気管切開を実施する。日常生活では遮光を徹底することが肝要。サンスクリーンはSPF30以上のものを用い、汗などで流れるので2時間おきに塗り直す。規定の量を塗布しなければ表示されている遮光効果は得られない。サンスクリーンはXPの患者にとっては皮膚がん予防のためには必須だが、現在の日本の医療制度では化粧品の扱いになり、健康保険の適応はない。しかし、地方自治体によっては補助を出しているところもある。保育園、学校でのXP患児に対する遮光対策は地方自治体により対応が異なる。日常の生活圏内の校舎の窓ガラスなどに遮光フィルムを貼ってもらう場合には、入園、入学の2~3年前から関係部署と相談のうえ対応を御願いする事が多いようである。紫外線量を測定する器機は用いる端子、集光や測定精度の善し悪しが機器によって異なり、その精度に10倍程度の開きがあるのが実情。また、精密機械なので定期的な校正も必要。そういう事を考えると、いたずらに紫外線の線量を測定するよりは遮光の原則を守るのが安全で現実的といえる。

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引用:希少難病ネットつながる理事長 香取久之



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