どくラジ部presents『読書会ライブ』レポート~わたしを積読にしないほうがいい~

◆はじまり

しいたけ.さんの占いによると、私の12月のテーマは「勢いと愛」だったようです。

「愛はコンビニでも買える」ってマサムネさんが言ってたけど、勢いはどうか。誠品生活に行けば売ってるかな。

画像9

さて、今回の読書会は、全く新しい試みとなりました。

きっかけを作ってくれたのは、Twitterのフォロワーさんだった「まふぃ」さんです。

まず、自分はまふぃさんが今年から始めたインターネットラジオ『どくラジ』の初回からのリスナーでした。


どくラジは、

「まふぃさんが電話あるいは現地取材した読書会レポート」

「リスナーさんオススメの本紹介(心の本棚企画)」

「その他、本にまつわるスポット紹介」

が中心のプログラム。丁寧に練られているからこそ、ゆる~く癒される、本読みの「憩いの場」なのです。

10月には、自分が主催する『Book Fair読書会』も取り上げていただきました(正直、「やった!遂に!」って思ってました)。

それだけでも嬉しいのに、後日、東京旅行を計画中のまふぃさん(関西在住)から、合同イベントのお誘いが!

さらに、『彗星読書倶楽部』を主宰するダイナさんも加わり、

(お名前はダイナだけど好きなウルトラマンはティガ、という超極秘情報をいただきました)

ここに期間限定の読書会ユニット『どくラジ部』が発足したのです!!

12月の14・15日の2日間、この3人で色々なことに挑戦しました...全部書くと凄まじい量になるので、このnoteでは当委員会がメインとなった『読書会ライブ』の模様を紹介します!!

※最初は『Book Fairライブ』と銘打ってもいたけれど、やはりこーせーさんと共同主催してこそのタイトルなので、「読書会ライブ」に落ち着きました。この2日間のイベントは、ほぼ全部中継してましたが(笑)。

◆どこで、何やろう?

まふぃさんとの打ち合わせでは

「どくラジのオフ会」的なイベントをやりたい

→でも、リスナーは全国各地に散らばっているから難しい

→それなら、読書会をペリスコープ(アプリ)で配信しよう!

→そして、リスナーさんは読書会に慣れていない方も多そうだから、会場に呼ぶ方も初心者限定にして、みんなで「デビュー」してもらおう!いいね!

...という話になり、初心者限定、生配信ありの読書会『どくラジ部presents 読書会Live!』を立ち上げました。

※募集開始から1週間はお申し込みがなく「ヤバい...このテーマは無理があったかな」と焦りましたが、最終的には4人の方に参加していただきました!ありがとうございます。

会場は、8月のBook Fairでもお世話になった『あーとカフェ 笹峯ぎゃらり』を貸し切らせていただきました!

◆アイスブレイク

まずは自己紹介とともに、好きな動物について語り合うパート。世相を反映(?)してか、犬派より猫派(or両方)の方が多かったですね。パンダ(漢字で書くと「山猫」!)推しの方もいました。「お酒が好きな女性」という迷回答も・・・。

なんといっても、ここでは「カエルの骨格が好き!」というダイナさんが熱かった!!

この日の本紹介は、そんなダイナさんからスタートです!

ダイナさん→西東三鬼『神戸、続神戸』新潮文庫

画像1

「まさに、こんな小説が読みたかった!という大当たりの作品でした」とダイナさん。戦前~戦後の「国際都市(メトロポリタン)」・神戸を舞台に、何もかも投げ出してホテルに住みついてしまった男と、「ひと癖もふた癖もある人々」との出会いが描かれた物語です。

西東三鬼は、戦前から戦後にかけて「前衛俳句」という、二十世紀型のモダンなスタイルを進めた人物。俳人が書いた小説、と聞くと文体がイメージしづらいですが、とても読みやすいとのことです。

エジプト・ロシア・ドイツ出身の外国人や、娼婦、徴兵からの脱走者...こうした人々を寛容に受け入れてきた港町のホテルでは、どんな問題が起きるのか。そして、主人公の男の人生はどうなるのか。

『神戸』の続編である『続・神戸』では、戦争が終わり、何もかも失った主人公がどう生活していったのかが語られます。ダイナさん曰く「泣かせる、グッとくる結末」が待っている…とても気になります。

ダイナさんは【嘘みたいな人々が、リアリティを持って描かれている】という本作の面白さを帯で表現。ちなみにこの作品には「筆者の実体験(ノンフィクション)がかなり入っているのでは」と推測していました。

最後に、「今の作家にもこんなシチュエーションの物語を書いてほしいし、自分も面白いものを書きたい」と語ってくださいました。

アフタートークでは、皆さんが旅先で出会った人たちのエピソードを披露し合いました!

おぐろんさん→くどうれいん『わたしを空腹にしないほうがいい 改訂版』BOOKNERD

画像2

皆さんはひとり暮らしの経験がありますか?私は8年以上ひとり暮らしをしているんですが、自炊ってなかなかできないんですよね。最初は調味料や食器を買い揃えても、だんだんと冷蔵庫に空白が広がっていって…」

そんなおぐろんさんが、福岡の書店でたまたま見つけたのが、若い歌人のエッセイ集。「食」をテーマに、学生時代のある年の6月、筆者が食事を通して感じたこと、友人とのささやかな会話が記されています。

この本を読み、おぐろんさんは「丁寧な暮らし」について改めて考えてみたといいます。そして「丁寧な暮らしとは、自分の感情を大事にすることであり、まずは食から始まる」と思ったそうです。

これをきっかけに、簡単でも少しずつ、自炊の機会を増やしました。すると、余計なことを考えず、自分と向き合う時間ができ、本当にいい影響があったのだとか。

帯は、そんな気持ちと、Twitterで目にしたつぶやきとのリンクによって生まれた文です。

実はこのエッセイ、元々はくどうさんの自費出版。それに目をつけた地元・盛岡の本屋さん『BOOKNERD』が、リトルプレスの形で出したところ、全国的な広がりとなったのです。


東北の書店が発掘した才能が、小さなエッセイ集となって九州に届き、東京から来ていたおぐろんさんの手まで辿り着く。そして、生活をちょっと豊かにしていった。とても素敵なストーリーだと思います。

ちなみに、おぐろんさんが購入したのは、小規模出版としては異例であろう「七刷」!これには、自身も文芸誌の制作に携わっているダイナさんを筆頭に、興味津々でした。

小説イズムさん→重松清『青い鳥』新潮文庫

画像3

小説イズムさんが「心に刺さる言葉がたくさんありました」と語る一冊は、重松清さんの『青い鳥』。これは、非常勤講師の村内先生を主人公にした、8つのお話からなる短編集です。

村内先生が生徒によく言うのは、「たいせつは、すごくたいせつ」。本当に大切なことは「すごくたいせつ」であって、それをどれだけ好きな人や、大切な人に伝えられるかどうかが大事だという意味があります。

村内先生は吃音のある人なのですが、だからこそ、余計なものは省きとって、大切なことだけを伝える。読みながら「自分もこういう先生に会いたかった、むしろ今会いたい」と思ったそうです。

小説イズムさんが最も引っかかった所は、あとがきの「僕のヒーロー像を書いてみた」と言う部分。ヒーローって、強い力で敵を薙ぎ払うだけではない。

そう思うと、「自分の中のヒーローって誰だろう?」「そのヒーロー(憧れた人)になれているだろうか?」と考えさせられたと言います。

アフタートークは、参加者それぞれのヒーロー像について語り合う時間でした。配信の視聴者さんからのコメントもあり、とても盛り上がりました。

表彰台の一番上に立てずとも、その演技で感動をもたらす浅田真央さん。お節介で、風来坊だけれど、みんなに愛される寅さん。どちらもヒーローですよね。

杉山さん→杉山大二郎『嵐を呼ぶ男!』徳間書店

画像4

織田信長ほど、生き様が物語として描かれる武将はいないでしょう。その人気は、「歴史・時代もの可」の新人賞で、3本に1本は信長関連の小説が応募される(杉山さん談)、というほどです。

一方、数々の作品の影響で、彼のイメージは「独裁者」で固定されている面もあります。その起源には、信長を討った明智光秀を破り、天下を統一した豊臣秀吉が関係しているといいます(光秀を悪者にしてしまうと、織田家の生き残りに政権を返さねばならないため)。

後の徳川家康も、自らの支配を正当化するため、信長を非難する資料を遺しました。戦前・戦中の歴史小説はそれらを参考に書かれており、必然的に「無慈悲」なキャラクターにされていたようです。

杉山さんは、自身初の歴史ものとして「新しい信長像」を確立する小説に挑戦。新たに発見された古文書などを基に、20歳の信長を描きました。

物語は熱い友情あり、ツンデレな恋愛要素もあり。杉山さんは「難しい表現は使っていないので、青春ストーリーとして、若い人にも是非読んでほしい」と話していました。

アフタートークでは、信長が掲げた「天下静謐」「天下布武」の意味などについての話が出ました。個人的にも、読書会で著者の方に本を紹介していただくのは初で、とても新鮮でした。

まふぃさん→辻村深月『朝が来る』文春文庫

画像5

この小説は、2人の母親を軸に進みます。

ひとりは、「特別養子縁組」の制度を使って子どもを迎え入れ、「育ての親」となった女性。

もうひとりは、望まない妊娠の末、子どもを前者の夫婦に送り出した「産みの親」の女性。

血のつながりがあろうとなかろうと、1人の子どもに愛情を注ぐ2人の描写が続いていきます。

特にまふぃさんは、「産みの親」であるひかりに、「同じ女性として深いところで共感をした」と言います。

制度上、もう子どもとは会えないと決まっていても、変わらぬ愛情を持って思い続ける。そこに心を動かされたそうです。

最後に、まふぃさんは色分けされた帯の文章について、

「ひかりちゃんは、子どもを身ごもってから苦しい夜を過ごし、産んでからも、転がり落ちるように堕落してしまいます」

「そして、雷雨の夜に飛び降りて死のうとするのだけど、それを子どもを育てた女性が止めて、朝が来て…そんなシーンを思い浮かべて書きました」と解説していました。

アフタートークは、「小説が照らし出す社会の一面」について。仕事、人間関係から戦争まで、私たちに疑似体験させてくれるフィクションの力、それを改めて感じました。

けーわんさん→南章行『好きなことしか本気になれない。 人生100年時代のサバイバル仕事術』ディスカヴァー・トゥエンティワン

画像6

「好きなことしか本気になれない」というタイトルに惹かれた、とけーわんさん。著者は、アプリで自分のスキルを売り買いするサービス『ココナラ』の創業者です。

けーわんさんが「良いな」と思ったのは、著者が父親から言われていた「セルフ・リーダーシップ」という言葉だそうです。これは、「自分らしく生きるために、自ら決定していく」という考え方。

「人生100年時代」「AI時代」と呼ばれる不確実な世の中だからこそ、周りにどう思われても、自分で進める大切さを強調しています。

それに加えて、売りになるスキルや、「自分はこれが好きだ」という強い価値観を持てば、「自分のストーリーを生きる」ことに繋がる。

けーわんさんは読了後「自分の物語をおざなりにしているのでは」と気付き、本当にやりたいことについて考えたと言います。そして、本に関する仕事がしたいという気持ちを再確認。そこからの第一歩として、この読書会に来たと明かしてくださいました。

(本当にありがたいです。この話を聴いた瞬間は、冗談抜きでうるっと来てしまいました…。主催の3人とも、企画して良かったと感じていたはず)

そしてアフタートーク。けーわんさんが「本を通して、人と人、人と場所をつなぐ人になりたい」と語るなど、各々の「セルフ・リーダーシップ」「自分の物語」について意見交換しました。

ふっかー→ひぐらしひなつ『救世主監督 片野坂知宏』内外出版社

画像7

今年は「スタジアムに本を持っていこう!」をテーマに、サッカー観戦DAYの合間に本を読む『蹴読プロジェクト』を始めました。

その中で、「サッカーの本だけど、サッカーに詳しい人も、詳しくない人も楽しめる本はないか?」と思っていたところ、ピッタリだと感じたのがこちらです。

これはもう、目次からして何の本か分かりません。「秘技・猫じゃらしにみんな釘付け」「ターミネーターが追ってくる」「変態には変態で応戦だ!」「ヒゲよさらば!髪よさらば!」…なんじゃこりゃ。

しかし実際の内容は、本格的なスポーツノンフィクションです。かつてはJ1(プロサッカーの1部リーグ)で優勝を争うも、2016年にはJ3(同3部リーグ)にまで落ちてしまった大分トリニータ。そんなボロボロのチームが、片野坂知宏監督の下で復活し、再びJ1に返り咲く過程を番記者さんがまとめたものです。

降格が続き、お金もない中で、いかに作戦を工夫して勝ち抜いたのか。そんな様子を、時にユーモアを交えて書いているので、こんな破天荒な目次なのです。

この日は、「肉を切らせて骨をイマイチ断てていない」(監督同士が激しい頭脳戦を繰り広げた結果、両軍無得点で試合終了…)が一番ウケましたね(帯の「浅田飴」については、読んでのお楽しみ!笑)。

画像9

◆最後は、本の集合写真!参加してくださった皆さん、配信をご覧になってくださった皆さん、本当にありがとうございました!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?