棄てられた者の行方 17

 マオンに一人の男がいて、名はナバルといい、妻の名はアビガイルだった。仕事場は北に二キロほど行ったカルメルにあり、彼は非常に金持ちで、彼には羊が三千匹、ヤギが千匹いた。そしてカルメルで彼の羊の毛を刈るときになった。妻は理解力があり、美しかった。しかし夫の方は粗野で、素行が悪かった。彼は頑固で有名なカレブ人だった。ダビデは、ナバルが彼の羊の毛を刈っていることを荒れ野で聞いた。そこでダビデは十人の若者を遣わし、その若者たちに言った。「カルメルに上り、ナバルのところへ行き、彼に平安を願う挨拶を私の名前でしなさい。お前たちは彼の長命を願い、次のように言いなさい。『あなたに平安がありますように。あなたの家にも平安がありますように。そしてあなたの家に属する全てのものに平安がありますように。今、あなたが羊の毛を刈っているのを私は聞きました。そして今、あなたに属する羊飼いたちはあなたとともにいます。彼らがカルメルにいた全ての日にわたって、私たちは彼らを傷つけませんでしたし、彼らにとって何かが失われることはありませんでした。あなたの若者たちに尋ねて見てください。彼らはあなたに告げるでしょう。私の若者たちがあなたのまなざしの中に恵みを見い出せますように。なぜなら我々にとっても、良い日なのですから。あなたの手が及ぶものを、私とともにいるあなたのしもべたち、あなたの息子ダビデにどうか与えてください』」。ダビデの若者たちは行き、ダビデの名によって、これらの全ての言葉をナバルに言って待った。ナバルはダビデのしもべたちに答えて言った「ダビデとは誰か。エッサイの子とは誰か。近頃は自分の主人から離れる者、離脱するしもべたちが多い。俺は自分に分け与えるべき自分のパン、自分の水、自分が屠った自分の肉を取り、どこから来たものかわからないような、自分の知らない者たちに与えねばならないのか」。そこでダビデの若者たちは彼らが来た方角へ向かって行った。そして彼らは帰って来て、これらの全ての言葉を告げた。ダビデは彼の部下たちに言った「各々自分の剣を取れ」。そこでそれぞれの者は自分の武器を取り、ダビデも自分の武器を取った。そしておよそ四百人の者がダビデに従って上り、二百人は荷物のところに残った。

 ナバルの妻アビガイルに、若者たちのうちの一人が告げて言った。「御覧なさい。ダビデは私たちの主人を祝福するために、荒れ野から使者たちを遣わしましたが、彼は彼らに対して罵りました。この人々は私たちに非常に良くしてくれました。私たちが野にいた時、彼らと一緒に歩いた全ての日々、私たちは傷つかなかったし、何も失いませんでした。彼らは私たちが彼らとともにいた全ての日々、夜も昼も私たちのために壁となって、羊を守っていてくれました。そこで今、あなたが何をなすべきかを知り、見極めてください。なぜなら、私たちの主人に到来する災いがはっきりとしたからです。しかし彼は邪な人間で、彼に対しては語ることもできません」。そこでアビガイルは急がせて、パン二百個、ぶどう酒二袋、肥えた羊五匹、炒り麦五升、干しぶどう百房分、イチジク菓子百個を用意し、ろばに乗せた。そして彼女は若者たちに言った「この私はお前たちの後について行くので私の前に進みなさい」。しかし彼女は夫であるナバルには告げなかった。彼女はろばに乗った。そして山の下草の中を下って行った。すると、ダビデと彼の部下たちが彼女に向かって下ってきた。そして彼女は彼らと出会った。ダビデは部下に言った「私が荒れ野でこの者に属する全てのものを守ったのは全く無駄なことだった。彼に属する全てのもののうち、何も失われたものはなかった。彼は私に対して、善に代えて悪を返した。神がダビデの敵に対して次のように、否それ以上にしてくださるように。すなわち、私は明日の日の出までに、彼に属する全ての者のうち、壁に向けて尿をする者、すなわち男どもを一人も生き残らせることはないであろう」。アビガイルはダビデを見つめて、ろばから急いで降りた。彼女はダビデの前で顔を伏し、地に屈んだ。彼女は彼の足元にひれ伏して言った「私の主よ。この私にだけ罪がありますように。どうかあなたのはしために、あなたの耳に語らせてください。そしてあなたのはしための言葉を聞いてください。どうか私の主よ。この邪な男、ナバルにはご自分の心をお掛けにならないでください。彼は彼の名前の通り、彼の名前がナバルであるように、愚かさ(ネバラー)が彼とともにあります。そしてこの私、あなたのはしためは、あなたが遣わした私の主の若者たちを見ませんでした。そこで今、私の主よ。神は生きておられ、あなたの魂も生きておられます。神は流血のためにあなたがお出でになられるのを止められ、あなたのために、あなたの手で復讐されるのを止めてくださいます。そして今、あなたの敵、私の主に災いを求める者はナバルのようになりますように。そして今、あなたのはしためが私の主に持ってまいりましたこの贈り物が、私の主の御足に従う若者たちに与えられますように。どうかあなたのはしための過ちを赦してください。なぜなら神は、私の主に確かな家を必ず造ってくださるからです。私の主は神の戦いを戦っておられます。災いがあなたの生涯にわたって見出されませんように。人はあなたを追うために立ち上がり、あなたの命を求めて立ち上がるでしょう。しかし私の主の命は、あなたの神によって生かされる者の束に束ねられ、あなたの敵の命は、放り投げられた者たちの穴の只中に投げ出されるでしょう。神はあなたに対し語られた幸いの全てを、まさにその通りに、私の主のために実現してくださるでしょう。私の主にとっては、心の悲しみや苦しみ、故なく血を流すこと、私の主がご自分のために復讐することがあってはなりません。神は私の主を良しとされるでしょう。どうかあなたのはしためを覚えてください」。ダビデはアビガイルに言った「今日、私に会うためにあなたを遣わしたイスラエルの神は祝福されるように。あなたの思慮は祝福されるように。今日流血のために、自らのため、自らの手で復讐するために行くことから私を引き止めたあなたは祝福されるように。あなたを傷つけることから私を引き止めたイスラエルの神は確かに生きておられる。あなたが私に会うために急いで来なかったら、明日の日の出までに、壁に向けて尿をする者(男たち)は一人も残されなかったであろう」。ダビデは彼女の手から、彼に持ってきた贈り物を受け取った。そして彼は彼女に言った「安心してあなたの家に上って行きなさい。見なさい。私はあなたの声を聞き入れた。私はあなたの顔を立てよう」。アビガイルはナバルのもとへ帰った。そして彼を見ると、王が催すような宴の最中だった。ナバルの心は浮かれていた。また彼は非常に酔っていた。それで彼女は朝が明けるまで小さいことも大きいことも告げなかった。朝になって、ナバルからぶどう酒の酔いが覚めた時、彼の妻はこれらのことを彼に告げた。すると彼は脳梗塞を起こして倒れ、硬く動かなくなった。そして十日ほど経って彼は死んだ。ダビデはナバルが死んだことを聞いた。彼は言った「ナバルのやり方に対しての私の訴え、争いを裁いてくださった神は祝福されますように。神はしもべを悪から押しとどめてくださった。そしてナバルの悪を彼の頭に帰してくださった」。ダビデは使者を遣わして、アビガイルに対し、妻として娶りたいと語った。ダビデのしもべたちは、カルメルのアビガイルの元へとやってきた。彼らは彼女に語って言った「ダビデ様はあなたを妻に娶るために我々を遣わしました」。彼女は立ち、顔を地にかがめた。そして彼女は言った「ご覧ください。あなたのはしためは、私の主のしもべたちの足を洗うための仕え女です」。アビガイルはろばに乗って、急いで出立した。そして五人の仕え女たちが彼女に従った。彼女はダビデの使者たちについて行き、彼の妻になった。ダビデはアヒノアムをエズレルから妻に娶った。そして彼女たちは二人とも彼の妻となった。一方サウルはダビデの妻である彼の娘のミカルを、ガリム出身のライシュの子パルティに与えた。


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