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情報消費体験は、まだまだ進化する

メディアとして、ユーザーにコンテンツを届けるとき、
"溢れる情報の中から、ユーザーに適切な情報を届ける" と同時に、
"それを、適切な表現・見せ方で伝える" ということが、大切だと思う。


情報との出会いの効率化

前者の "適切な情報を届ける" については、広く言えば「検索」とその結果の最適化から、「Yahoo! ニュース」などのアグリゲーションメディア、「Naverまとめ」やキュレーションメディア、パーソナライズを強化した「グノシー」など、様々な取り組みが存在する。

ネット上に玉石混交の情報が溢れるいま、質的な精査や効率的なマッチングの仕組みが求められた結果だ。
いつでも、ユーザーが望む情報が手に入りやすい環境になってきた。

ただ、後者の "適切な表現・見せ方" について、もっと圧倒的な進化が遂げられないものか、それを考えている。


情報の表現手法の進化

もちろん、いま広く利用される「DELISH KITCHEN」「kurashiru」「C CHANNEL」「ルトロン」など、動画中心の情報メディアは、"適切な表現手段" 追求の観点から、従来のテキストベースの記事から進化を遂げたものだ。

しかし、ここで言いたいのは、さらにその表層のレイヤーとなる、紙媒体でいうDTPなど、メッセージのビジュアライズ手法のほうだ。

いちばんわかりやすい例は、「LINE MOOK」だと思う。


LINE MOOK の衝撃

「LINE MOOK」は、LINEが今年正式配信を始めた、ビジュアル重視のメディアだ。言及するのは やや今さら感があるが、マガジンハウスと組んでいるだけあって、スマホに最適化された中でのそのビジュアルは、最初に見たとき衝撃を受けた。

下記は「LINE MOOK」の、女性向けのライフスタイル情報の「Toss!」と、メイク・ビューティ情報の「Steal me!」だ。縦長スマホ画面でのスクロール閲覧を意識した、この見やすさ!

アイテム紹介も、小さな画面でストレスなく見れる。

デザインを重視した、画像とテキストのレイアウト。

あえての手描き表現をつかった、世界観を壊さない見せ方。

「LINE MOOK」は、質を担保したクオリティの高いコンテンツを、決して速くはない定期的な頻度で、それを望むユーザーに届けるという、雑誌のモデルをそのまま実現しているだけにすぎない。しかし、スマホメディアにおいては、これはかなりの差別化になっている。


最適なコンテンツ表現を追求する難しさ

Facebookの「Instant Articles」、「LINE NEWS ダイジェスト」、Safariの「Reader」など、コンテンツを収集・閲覧する側のレイヤーで、コンテンツ消費体験を快適にする取り組みも、進んでいる。

しかし、それらは画一的なフォーマットでしかなく、各コンテンツごとに表現の最適化を実現するものではない。


先の「LINE MOOK」レベルのものを実現するには、配信媒体側とコンテンツ制作側が、同一あるいは協力体制を組む必要があり、さらに、扱うコンテンツの量だけプラスの編集工数がかかってしまう。

UGCのLIVE配信サービスが流行る理由のひとつにも、編集が要らない、つまりユーザー側に特別なスキルも要らないし、コストもかからない、ということが挙げられるはずだ。

つまり、このようなかたちで、よりよい表現のクオリティを求めると、コンテンツの量産や速報配信はできなくなる。ある程度のターゲットがいる領域での、ある程度ストック型が向くような内容ジャンルでしか、実現は難しい。
課金コンテンツにするか、スポンサードコンテンツにするかしないと、ビジネスとしても成り立たせるのは厳しいだろう。

そして、幅広いコンテンツを確保するアグリゲーションメディアでは、こういった一定以上の、コンテンツ表現の追求やコントロールが難しい。これは、オリジナルコンテンツをつくるパブリッシャーの、優位性のひとつだと思う。



求められる "伝わりやすさ"

先ほどの LINE MOOK「Toss!」の友だち登録数が、現状で55万人超も存在するという事実からも、"より伝わりやすくつくられたコンテンツ" の需要はたしかにあるはずだ。
ニュースをわかりやすく伝える池上さんが、TVで引っ張りだこになったり、Twitterでこばかなさん(@kobaka7)の # kobaka7_sketch が人気だったりするのも、情報表現が、視聴者や読者にとって伝わりやすい、望むかたちになっているからだと思う。

もちろん、情報の表現形式は、入出力装置とコンテンツデリバリーの進化に影響されて変わるものだと思う。
たとえば、いまの検索の仕組みでは、テキストベースでないと記事内容がインデックスされず、流通がひどく狭まってしまうし、今後もしスマートスピーカーが情報消費の中心になれば、最適な表現手法もまた変わるだろう。

ただ、スマホでの視覚的な情報閲覧体験で見ても、まだまだ改善の余地があるように思える。少なくとも、現在スマホで行われる日常のコンテンツ消費体験が、紙媒体のそれに劣るもので終わるのはおかしい。

スマホ画面で漫画を読むのが普通のいま、見開きの絵が分断されてしまうとき、それを感じる。(スマホに最適化された作品ももちろんあるが)



そして、もっと先へ

ユーザーの属性や関心・意図を読み取って、コンテンツとマッチングする仕組みの進化については、よく耳に入ってくるが、コンテンツの見せ方・表現形式の進化・最適化は、これからのメディアの進化として、大いに期待している。
旧来の紙媒体ではできなかったことが、今後、絶対にできるはずだ。

たとえばなんだろう、伝えたいメッセージと元データ、表現したい世界観の情報から、ふさわしい図解・チャートと全体の情報レイアウトを作成してくれるツールだろうか?
あるいは、コンテンツを自動解析して、情報を二次創作のように加工し、伝わりやすい形式に再デザイン・最適化するような技術だろうか?
もしくは、同じ情報源でも、ひとりひとりにとって、わかりやすい表現・見やすいビジュアルに最適化される、というようなパーソナライズの仕組みかもしれない。

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