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花留多唄【く】グラジオラス

 『グラジオラス』という名前は古代ローマの剣グラディウスに由来しています。花よりも葉がそっくりなんだとか。そのせいか、花言葉にも『勝利』『尚武』『武装の準備ができた』という勇ましいものが目立ちます。

 『密会』『忍び逢い』『忘却』『準備』という花言葉もありますが、どうしてでしょうね。いかにも球根っぽいなぁとは思いますが。

 以前、借家に住んでいたときのこと。
 初めての夏になると、玄関までの石畳沿いにグラジオラスが沢山咲き並んだことがありました。前の住人が球根を植えたままにしていったのでしょうね。
 もちろん私たち家族はそんなこと知りもしませんから、「これはなんだろうね」と見守っているうちに、立派な花をつけて初めてグラジオラスだと気がついたわけです。花言葉にあるように、なんだか前の住人の『記憶』を垣間見たような気になりました。

 グラジオラスの花言葉には『誠実』というものもあります。きっと、自分を植えてくれた人を喜ばせるために咲いたのでしょう。
 威風堂々としたグラジオラスに守られた玄関までの道のりは、まるで両側に鮮やかなマントの戦士が並んでいるようで、毎年とても華やかだった記憶があります。
 既にあの借家を退去して数十年。願わくば、あのグラジオラスが毎年咲いているといいなと思うのです。

文字札:くじけぬ心の戦士

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