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伊藤計劃・円城塔「屍者の帝国」を読んだ。

 大森望編集の「NOVA」で「屍者の帝国」のプロローグ部分を読み、これは全部読まなければと思って、Amazonで購入した。
 面白い。
 面白いが難しい。
 歴史改変ものであり、スチームパンクであり、諜報ものであり、著名な歴史的人物が多数登場するパスティーシュ小説でもある。読み手が深い知識を有しているほど面白くなる仕組みだ。
 語り手はジョン・H・ワトソン。それだけでも読みたくなる。
 時代背景は1878年から1881年とかなり古い。車や飛行機はまだないが、世界中に電信網が張り巡らされ、大英帝国は地球人口の3分の1を支配している。蒸気で駆動する解析機関が格好いい。
 この世界では、ヴィクター・フランケンシュタインによって屍体の蘇生技術が確立され、屍者が世界の産業・文明を支えている。労働力としての屍者はいかにも死体っぽいが、まるで生者のような動きをする新型の屍者があらわれ、アフガニスタンの片隅で屍者の王国を建設しようとしているというのが物語の端緒だ。
 円城塔はすごい仕事をしたものだと思う。

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