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story.10 生ひ優る方向音痴

昔から方向音痴のエピソードには枚挙に暇がない。

大学受験の時、すべり止めの大学に下見に行った。

印刷した地図を頼りに進むが辿り着かない。諦めて駅に戻ると、道案内の看板は、進んだ道の反対側に出ていた。

5年以上前、新宿駅南口で友達と待ち合わせた。

西口から案内板を見ながら向かうが、辿り着けない。行っては戻りを繰り返し、小一時間徘徊、なんとか辿り着いた。

そして数年前、夜スーパーから自転車で帰ろうとした時のことだ。

道を何回か曲がり家につくはずの頃合い、私は完全に自分の居場所を見失った。とりあえず大通りへ出よう。さらに走った。

「今どこにいるかわからない」

半泣きで電話する私。困惑する夫。その後も闇雲に走り続け、急に大通りに出た。そこは、スーパーの前の大通りだった。

ここまできたら開き直るしかない。

迷うからこそ、旅先でも発見があるのだ。そして方向音痴を極めているからこそ、こうして書ける文章もあるのだと。

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