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今、最も人気を集めるBL作品は?「BLアワード」投票結果から読み解くBL界の潮流

年に一度、その年の人気BL作品を発表するランキング「BLアワード」。12の部門を設け、それぞれの部門で輝くBL作品を読者投票で決定しています。
2021年度の有効投票数は11,367。2009年の第一回から約30倍に増え、各部門の上位作品 が次々に映像化するなど注目度が高まっています。

BLアワードで投票している「腐女子」のユーザーは趣向も世代も様々ですが、一体どんな層がどんな作品に投票しているのでしょうか?また、どのような方向性の作品がランクインしやすい傾向があるのでしょうか。
BLアワード2022の実施を前に、2021年度の投票結果からユーザーの好みや投票行動を読み解きます。

BLアワードとは

BLアワードとは、2009年より株式会社サンディアスがBL情報サイト「ちるちる」で行っている年に一度の“商業BLの祭典”です。ちるちるのユーザーによるサイト上での評価ポイントとweb投票ポイントで、各部門の順位を決定します。2022年度も同時期の開催を予定しています。

【BLアワード概要】
対象作品: (巻末に記載された)発売日がその年の1月1日~12月31日に発売された紙書籍BL関連作品。また1月1日~12月31日に発売された電子書籍の単行本。
部門:コミック・小説・CD・声優・攻め・受け・次に来る(新人)・エロティック[s1] ・ディープ・シリーズ・表紙デザイン・映像(ノミネート制)
※部門は今後変更になる可能性もあります。
投票期間:(2021年度の場合)1月29日~2月7日 ウェブ投票のみ受付
投票資格:ちるちるに会員登録されている方(会員登録無料)
結果発表:(2021年度の場合)4月2日(金)

BLアワード2021の投票者は、20代がメイン

「BLアワード2021」の投票総数は、11,367票。投票者の年齢層を見てみると、20代が38%と最も多く、30歳以下の投票者で半数以上を占めています。

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普段のちるちる上での評価やレビューの数は20代以下よりも40代以上の方が多く、「BLアワード」の投票数はそれとは逆の結果になっています。20代以下のユーザーは、こういったイベントをきっかけにして、評価や投票といったアクションを起こしやすい傾向があるようです。

また、投票数は年々増加しており、2021年度は12年前に実施した第1回の約30倍でした。

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全体のうち日本語での投票が約91%で、次いで英語、中国語、韓国語が続きます。近年、アジア各国のBLコンテンツの発信が盛んなこともあり、今年度も海外票は増加する見込みです。

BLアワード2021 コミック部門の世代別投票結果

ここからは、「コミック部門」「シリーズ部門」「次に来る部門」「エロ部門」の4部門について、それぞれの投票結果を世代別に見ていきましょう。

まずはコミック部門。BLアワードの花形とも言える部門で、その年に発売されたBLコミックスの中から最も読者投票数が多かった作品を選出します。BLコミックは基本的に1巻で完結する作品が多いため、この部門にあたる作品が最も多く、ランクインするのが難しい部門になっています。

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世代別の投票結果がこちら。
全ての世代で『オールドファッションカップケーキ』(佐岸左岸/大洋図書)が1位という結果でした。

2位以下については、20代以上の順位が似た結果に。10代の3位『夢ならどこまで許されますか?』(百瀬あん/三交社・メディアソフト)、5位『オンラインゲーム仲間とサシオフしたら職場の鬼上司が来た』(ん村/一迅社)は10代のみでのランクイン。他の世代よりも少し軽めのタッチで描かれた明るい作風の作品が好まれるようです。

全ての世代で1位を獲得した『オールドファッションカップケーキ』は、ストーリーや設定もさることながら繊細な絵柄や細かな日常生活の描写も支持される理由の一つでした。2020年はコロナ禍の影響か「癒し系の作品」「何気ない日常を描いた作品」が世代を問わず人気を集めた1年。そういった傾向を象徴する作品だったと言えそうです。

BLアワード2021シリーズ部門の年代別投票結果

続いて、シリーズ部門。「その年に2巻以降が発売された作品」がノミネート対象です。
そもそも2巻以上続く作品が少ないBLコミックス業界。2巻以降が発売されている作品には、すでに熱心なファンがついていると言えます。

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世代別の投票結果は、ゆるやかなグラデーションになっています。10代、20代では『ギヴン』(キヅナツキ/新書館)、20代、30代では『セラピーゲームリスタート』(日ノ原巡/新書館)、40代、50代では「blanc(同級生シリーズ)」(中村明日美子/茜新社)が人気を集めていました。

注目すべきは、1巻が2014年に発売された『ギヴン』が10代、20代からの支持を集めている点でしょう。若い世代ほど新しく始まったシリーズものを読んでいる、ということではなく、あくまで作風で、世代ごとに好まれる作品が異なるということが言えそうです。

BLアワード2021次に来るBL作品部門の年代別投票結果

「次に来るBL作品部門」は、前年までにBLアワード20位以内のランクインがなく、商業デビューからおよそ2年以内の作家の作品から選ばれる部門です。

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比較的新人に近い作家の作品のみがノミネートされるこの部門。「作家のファン」の投票が少なく、純粋な年代ごとの好みの傾向が現れやすい部門でもあります。投票結果には、過去のBLアワードの投票結果や普段のちるちるでのレビュー傾向でも言える、2つの特徴が顕著に現れていました。

1つ目は、40代以上が「日常もの」を好みやすい点。これまでのBLアワードでも、40代以上の世代には過激な描写や読む人を選ぶ設定が含まれるビビッドな作品よりも、ほのぼのとした日常を描いた作品が好まれる傾向がありました。『マスク男子は恋したくないのに』(参号ミツル/リブレ)が主人公と同世代の10代だけでなく40代以上でも1位になっているのは、そういった傾向を表していると言えそうです。

2つ目は、20代、30代に過激な描写や読む人を選ぶ設定が含まれるビビッドな作品が好まれやすいという傾向です。『歌舞伎町バッドトリップ』(汀えいじ/リブレ)は過激な性描写も含まれる作品。20代では1位でしたが、40代以上では5位以下という結果でした。

BLアワード2021エロティック部門の年代別投票結果

こちらは、濃厚なHシーンや特殊プレイ・特殊シチュエーションでのHシーンが含まれる作品から選ばれる部門です。BLコミックではHシーンはほとんどの作品に含まれる要素ですが、この部門には特にその要素に重きをおいた作品がノミネートされます。

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投票結果には、ここまでご紹介してきたどの部門よりも世代による結果の差が大きく出ています。

10代から30代までは、順位は異なるものの、1位~3位に同じ作品が並ぶ結果となりました。特に10代、20代では5位まですべて同じ作品がランクインしています。一方、40代、50代では他の世代で5位以下だった『高嶺の花は、散らされたい』(左京亜也/新書館)が1位です。

この結果は、作品の傾向と作家の活動歴に相関しているようです。

10代~30代に支持されているのは、ストーリーはシンプルでHシーンの描写にこだわりがある作品。王道なカップリングで、「甘々」なHシーンが描かれているものが多いと言えます。

一方、40代以上に支持されている作品はストーリーが少し暗めのものや、物語に読み応えのある作品が多いようです。活動歴の長い作家の作品が多く、「Hな作品ならこの作家」といった信頼感から読む作品を選ぶ傾向も見えてきます。

ユーザーの評価・投票のモチベーションは「推し作家/作品への愛」

BLアワード2021の世代別の投票結果と最終的な順位を見てみると、やはり上位になりやすいのは「すべての世代から人気を集める作品」。次に、投票者数の多い20代と、20代と比較的似た投票傾向のある30代・10代に支持される作品が各部門で上位になりやすいと言えます。

また、ちるちるに寄せられたユーザーの声からは、BLアワードにおけるユーザーの評価・投票のモチベーションは「推し作家/作品への愛」ということがわかります。上位になる作品は、ノミネート期間前から「ちるちる」上で多くレビュー・評価されています。ユーザーは、「もっと多くの人にこの作品を知ってほしい」「もっとこの作品が評価されてほしい」という気持ちから評価や投票という行動をとっています。

また、ノミネート後の投票期間に作家自身がSNSなどで「応援よろしくお願いします」といった内容でイラストの投稿などをしてアピールをすることも、投票を促進する重要な要因となっています。

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昨年は、日常を描いた作品やほのぼのとした作品が全体的に人気な傾向にありました。今年は、特に後半に入ってからは特にエッジの効いた作品が多く、ファンタジーや特殊設定の作品も人気を集めています。

BLアワードは、読者による作品への評価と投票でノミネート作・受賞作が決まります。
11月からは「BLアワードアテンション期間」として、ちるちる上や公式SNSでもユーザーに「評価」を呼びかけ、アワードが盛り上がるように様々な働きかけを行っていきます。

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