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時間をかけることの価値

■余白の効果

学校が閉校となり、stay homeの大号令で家にいる時間が増えた子ども達。有り余るエネルギーを発散できず、ストレスだけ溜まっていく生活の中で、非日常を体験してもらいたいと「大きな紙」を配りました。

想像と予想を遥かに超え、2500枚以上の紙が工場から旅立ち、子どもの創造力を掻き立てることに貢献しました。詳細は以下リンクに。

これまで完成品を納品することを価値としていましたが、余白の力の凄まじさを痛感しました。白い紙は印刷屋にとっては原材料で、製品ではありません。それが使い方次第でこんなに喜んでもらえ、完成品には出せない価値があることに世界観が変わりました。


■きっかけの一通

なんとなく第二弾を考えていた時にヒントとなったのは社員のお子さんからの一通の手紙でした。

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大きな紙を使ってくれたお礼に書いてくれたものでした。

53文字と2つの絵を読んだ時、胸の奥を小さな掌で包まれたような、あたたかい気持になりました。

一生懸命文字を書いてくれている姿や、楽しそうに絵を描いている姿が想像でき、自然と「ありがとう」の気持ちが湧いてきました。


■手間暇は愛

この1ヵ月で数えきれないほどのオンラインmtgをしてきました。zoom飲みも何度もしました。移動のための時間がないことの素晴らしさや、離れている友人と久しぶりに再会できるメリットは素晴らしいものです。

これからは確実にオンラインを織り交ぜた生活になるだろうし、むしろ積極的に活用するはずです。

ただ、どれだけオンラインで画面上で対面しながら会話しても、LINEで頻繁にやり取りしても、SNSでいいねを押してもらっても、あの一通の手紙に勝る喜びは得られることができません。

その理由を背景に存在する手間だと考えました。


ある時ふと気が付いたのですが、クローゼットの洋服を整理していたら、捨ているもののほとんどは通販で購入したもので、残しておいたものは店に行き、会話し、悩んだ末に購入したものでした。

無意識のうちに モノとしての価値とは別に、購入に至った経緯に愛着を持っていました。それが労力をかけたものであればあるほどです。

例えばクラシックカーや革靴が良い例です。決して便利とは言えないものですが、深く愛されています。


■手紙は究極のミニマリズム

手紙も同じです。相手のことを想像する。書き出しから悩む。ペンを動かしている時間なんて考えている時間に比べたらごくわずかです。失敗しないように慎重に字を書き、バランスや字間も意識しては何度も見返す。「これを読んだらどう思うだろうか?」と何度も何度も考える。

そうした時間は全て相手への時間。愛情が詰まっています。

手紙はどこでも書けます。字を知っていれば誰でも書けます。いつでも書くことができます。手紙こそ手間暇かけて愛情をしたためるミニマリズムの形だと思いました。


私が仕事としている印刷も特別です。本を作ることはもっと特別です。ぼくらは特別なことを仕事にしています。本をつくることは本当に大変ですが、出来上がった喜びは何事にも変えられません。

本をつくることは誰もができないけれど、手紙ならできる。手間をかける喜びは、手紙も本も同じだと思います。


■手紙をつくる時間を増やす

「会いたいあなたへ」をコンセプトとして、「お元気ですか」という名前のレターセットを作ることを決めました。詳細はこの投稿にあるので、お時間ある方はぜひ読んでみてください。

手紙を配ることが目的はなく、手紙をつくる時間を増やしたいです。

今は会いたいのに会えない人が沢山います。息子たちも山梨の祖父母の家に行く予定がなくなりました。遠方の友人と旅に行く予定がなくなった知り合いもいました。近くの友達とも会いにくい声も聴きました。

今では手紙を書く行為そのものが非日常で特別な体験です。大事な誰かのことを思い、手紙をしたためる時間が、日常の幸せな時間になるはずです。

手紙を書く時間が生まれ、誰かを思う時間が生まれ、手間をかけることが大事な人に喜んでもらえる。

そんな機会が提供できたら最高です。


■最後に

このレターセットができたのも私のお願いに二つ返事でOKしてもらった仲間がいるからです。決して一人ではできませんでした。藤原印刷も同じ、サポートしてもらえるパートナーのおかげです。本当にありがとうございました。

・Design コヤバシタケシ

・illustration モノホーミー

・Hotstamp(箔押し) ダンクセキ

・封筒作成 大徳紙商事


(藤原隆充)

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