2020年度の前半が終わり

4月始業の学校。今年度は最初の2ヶ月が「休校」という異例の事態であった。授業のコマ数だけ振り返ると、「正常化」したようである。授業を通してどんな価値を「提供」できたか、振り返ってみたい。

1、学びのモチベーション確保、楽しさを実感してもらうため、他者との「交流」の場を設置 徹底したアウトプットの場の確保。

2、探究の作法の概略 課題設定→情報収集→整理・分析→まとめ・発表の一連の流れの「体験」 

3、動画授業+アウトプットの場を提供(ただ見て終わるのではなく、必ず問題を出し合う場面を作る)

半年間で2回のテストを行った。少しずつではあるが、点数も上がってきた。だが、ここで自分の中で「点数をみんなで上げていきたい」という思いと「テストのためだけの勉強はさせたくない」という思いが出てきた。もし、テストで点数を上げることが目的ならば、「予備校方式」でガンガン講義を行い、「問題演習」を行えば、ある程度目に見える「成果」は出るであろう。だが、それでは進学後に「勉強しない学生」を量産するだけである。事実、私がそうであったように。では、どうしたらいいのだろうか。学びの楽しさを実感してもらうためにはどうしたらいいのか。学ぶことが楽しいと感じれば、学習者は勝手に学んでいくが、実際に自分から教科書を開いて「主体的に」勉強する学生は稀である。多かれ少なかれ、テストがあるからやむなく勉強している者が大半であろう。ここがとても難しい。点数を取ることの喜びと学びの楽しさは似ているようで全く異なる。

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私の感覚的なイメージだと、大半の進学校はこの黄色の部分の授業を行なっているのではないだろうか。知識を覚え、それをテストでアウトプットする。定期テストや模試ではどれくらい点数が取れるか力試しのごとく「挑戦」をする。勉強が苦手な人はできるだけ低い点数を取らないように必死に「回避的措置」をとろうとする。勉強することの意味を見失い。ひたすら目の前の課題をこなすことに奔走する。日々のちょっとした些細な楽しみを糧に、目の前の課題を「思考停止」でひたすらこなしていく。そうして嫌なことに耐える人材を育成する。工業社会の労働者や会社人間を育成するには抜群の効果があると言える。国家のために働く人材を育成するという観点から見れば、学校制度というシステムはよくできているのかもしれない。学校では様々な場面で「我慢」を生徒たちに強いてきた。その中で「努力」は美徳とされ、我慢をたくさんできる人は評価される。でも、本当にそれだけでいいのだろうか。我慢や努力できる人を育てる。確かにそれも大切である。特に大学入試など試験にはある程度、計画的に努力をしないと突破することができない厳しい世界である。高校の授業が「入試のための授業」となってしまうのはやむを得ない側面は確かにある。

もし大学入試が無くなったら、高校はどんな授業をするのだろうか。全国の高校の先生に問いたい議題である。入試なし、教科書なし、学習指導要領の縛りなしの時、生徒にどんな授業をするのか。この問いに対して、スラスラ自分の意見を語れる先生がどれくらいいるだろうか。前例踏襲で「思考停止」の作業のごとく教育活動を行う。私自身自戒の言葉にしているが、何も「悩み」なく教育活動をすることは楽である。だが、日々の活動の振り返りをしない限り、新たな「価値」は生まれない。

もし部活動の大会がなくなったら、どんな活動をするのだろうか。休校騒動はそんな課題を我々に突き付けた。だが、冷静に考えてみると、部活動とはそもそも大会のために存在しているわけではない。大会は確かに活動をする上で「目標」となる。だが、それは目的ではないのだ。

生徒には受験に向けて「独学力」をつけてもらいたい。自分の現状の力を把握して、目標先の学力との差異を明確に把握し、それを埋めるための行動計画を立てて、地道に自己の学習の振り返りができる。こういった人材を育てるためには、生徒1人ひとりの意識も大切であるが、先生の声かけもとても大切である。子供たちがやりたいことをとことん挑戦させたい。学校は子どもの学びを最大限保障する必要がある。今の子供に「やりたいことを10個挙げてごらん」と聞いて、スラスラ答えられる子がどれくらいいるだろうか。否、大人だってそうだ。私自身いきなり10個挙げるのは大変だ。少し前に大前研一氏が今の時代を「低欲望社会」と命名していたが、多くの会社人間は「やりたいこと」が「ない」状態ではないだろうか。今の時代は学ぶことが生涯必須となった。さらに行動も大事である。我慢や忍耐より、やりたいことを徹底して取り組ませる場を学校は提供しなければならないのではないだろうかと思った。

10月以降は探究的な学びの「情報収集」の細かな作法と「情報の整理・分析」を細かく教えていく予定だ。試行錯誤と悩みは尽きないが、その中でも日々教育活動ができることに喜びと感謝を持ってまた頑張りたい。

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