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インドでのEV充電インフラの設置最適化シミュレーションにより、1配送あたりのEV充電時間70%削減可能に

こんにちは!富士通 広報note編集部です。

この夏は、連日の猛暑や大型の台風が相次ぎ、地球温暖化への懸念が増した方も多いのではないでしょうか。日本の8月平均気温は、様々な変動を繰り返しながら上昇しており、長期的には100年あたり1.27℃の割合で上昇しているそうです(気象庁ホームページより)。今回は、気温上昇を抑えるための国際的な取り組みに貢献する富士通の活動を紹介します。


WBCSDでの活動

皆さん、WBCSD(World Business Council for Sustainable Development)(以下、WBCSD)をご存じですか。

WBCSDは、世界200社以上の企業が加盟する団体で、Vision 2050「90億人以上がプラネタリーバウンダリーの範囲内で真に豊かに生きられる世界」を実現すべく、ビジネスを通じた変革の加速に向けて活動しています。富士通は、 国際団体やあらゆるステークホルダーと連携し、持続可能な社会の実現に向けて取り組んでおり、2013年より同団体へ参画しています。

WBCSDのプログラムの一つTransportation & Mobility Pathwayは、1.5℃目標※1に沿って、ゼロエミッション車、およびゼロエミッション車普及を支援するテクノロジーの導入を促進し、世界中のトランスポーテーションにおけるCO₂排出量削減を目指しています。富士通もこのプログラムに参画し、2022年10月には、脱炭素交通の実現を目的に、オランダのコンサルティング会社、およびイギリスの電力会社と共同で、電気自動車(以下、EV)に関するデータと、電力のグリーン度を表すカーボンインテンシティ(単位あたりのCO₂排出量)のデータを、「Fujitsu Uvance(ユーバンス)」※2のEV充電計画シミュレーションができるEV-Shiftを活用して掛け合わせることで、グリーン電力 (風力・太陽光発電など) が豊富な時間帯にEVを充電できるようにサポートする実証実験を実施し、フリート事業者(法人車両を持つ企業)のEV充電によるCO₂排出量を15%削減しました。

また、自家用車からマルチモーダル通勤への行動変容の実証実験を通して、都市の脱炭素化やCO₂削減における、公共交通機関や徒歩などの環境負荷が低い交通手段を含めたマルチモダリティを考慮したMaaS(Mobility as a Service)計画設計の有効性を検証してきました。

※1   1.5℃目標: 2015年パリ協定にて策定、世界平均気温の上昇を産業革命前と比べて1.5℃以内に抑える努力を追求すること
※2 「Fujitsu Uvance」:クロスインダストリーで社会課題を解決する富士通の事業モデル

EV充電インフラ設置最適化の実証実験

WBCSDの活動として、2023年から富士通が力を入れて取り組んでいるのが、ZEV-EMI (ゼブエミ、Zero Emission Vehicle Emerging Markets Initiative)です。これは、政府と企業の協業を促進することで、排気ガスを一切出さないゼロミッション車への移行を新興国や途上国で加速させることを目指したイニシアティブ(構想)です。その一環として富士通は、EV-Shiftを活用することで、フリート事業者の業務効率と経済性を両立させるかたちで、インドにおけるEVの充電インフラを最適に設置するための実証実験※3を、2023年11月から2024年3月まで行いました。

※3  ゼロエミッション社会を目指し、インドでEV充電インフラの設置を最適化する実証実験をけん引(富士通プレスリリース 2023年12月6日) 

その背景には、インド政府がEVの普及を推進する一方で、EV充電インフラの整備が遅れており、都市における充電需要を考慮した新規設置計画が進まない実態がありました。

実証実験では、ニューデリーとムンバイの2都市を対象に、富士通のEV-Shiftとソーシャルデジタルツインを活用して、EV車両走行データ、人口密度データ、既存のインフラ設置場所や設置数データを掛け合わせて分析することで、新たにEV充電インフラを2都市に設置する際の最適な設置場所や設置数を特定できました。なお、シミュレーションに不可欠となるEV走行データや充電状況などのEVに関するデータは、本実証実験の趣旨に賛同してくれたフリートオペレーター会社から共有いただきました。

図:富士通のEV-Shiftとソーシャルデジタルツインによるシミュレーションの概要

富士通は本実証実験で、フリート事業者がガソリン車からEVへシフトした場合を前提として、フリート事業者の業務効率と経済性を両立する最も効果が高いEV充電インフラの設置数や設置場所を導出しました。その結果、インド2都市の既存充電インフラを使用した場合に比べて、移動時間および待ち時間を含めた1配送あたりの充電時間は70%削減、燃料コストは13%削減、そしてCO₂排出量は60%以上削減できることがわかりました。これにより、今後のインドにおけるEVおよび充電インフラへの投資促進をデータドリブンなかたちで後押しすることが期待できます。

2023年12月ドバイで開催されたCOP28(第28回気候変動枠組条約締約国会議)において、 本実証実験を開始することを、富士通 執行役員EVPの大塚(右から3番目)が発表

EV導入運用をトータルサポートする富士通のEV Shift

新規設置計画を策定するために、最適な設置数や場所をシミュレーションする本実証実験は、EV充電インフラ導入の意思決定を支援するものでした。富士通は、このEV導入計画の意思決定フェーズから、充電計画や配車計画、バッテリーマネジメントの運用フェーズに至るまで、EVのライフサイクルをEV Shiftにて網羅的にサポートします。CO2排出量や電力消費量、配送計画工数の削減などの多様な視点で効果がわかり、意思決定に必要な情報を提供します。

 具体的には、①EV導入から運用に至るコストを試算し、車両走行計画や充電運用など事業者への影響を事前評価することで「EVシフトへの意思決定」を促進します。さらに②EVや充電インフラの台数、EVコストや容量、走行距離や配送ルートといった様々な条件を考慮した配車や充電計画により「EVおよび充電インフラの導入運用」を加速します。そして③EV利用の効果測定やバッテリー状態の可視化を通し、継続的に「EV運用」を支援します。 

EV-Shiftは、車両のライフサイクルを通じたデータ活用により、次世代自動車の普及に必要な環境を整備することで、次世代自動車を軸としたサーキュラーエコノミーの実現、地域の環境負荷低減への貢献を目指しています。

図:車両のライフサイクルを通じたデータ活用により目指す構図

最後に

脱炭素化への取り組みとしてEV普及が促進される一方で、導入費用や充電時間など、様々な課題が存在しています。富士通は、WBCSD活動の次のステップとしては、様々なインダストリー間を跨ぐデータシェアリングや、マルチモーダル(陸や海)にわたる複数の機関と連携して交通を円滑にする総合的な施策によるCO₂削減に向けたアプローチを目指します。そして、国内外の物流やリース事業、自動車に関わるお客様とともに、レジリエントで低環境負荷な社会の実現をリードします。

【関連リンク】
Digital collaboration for EV charging infrastructure substantially reduces costs and improves operations(WBCSDプレスリリース 2024年9月10日)

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