
【 What=経営方針 を How=現場が仕組み化する③「人的資本の消去」】
①解雇予告手当の振込②グループ会社へ転籍③IDの抹消・解雇処理④離職票交付希望『無』で雇用保険資格を喪失。限りある財源で人的資本を強化するため、①法的に消去②人脈を消去③権限を消去④社会保険を消去、をほぼ同日に進めることで、リストラ施策なしに消去可能な人的資本を消去してきました。例年4~5月、挨拶なしに突然こうして多くのアラフィフ社員が姿を消していきました。退職金のある1999年3月31日以前に入社した方が多くを占めたから成立した仕組みとも言えます。
皮切りは9月。3QRFを策定し、次年度の事業と人員の計画から、消去可能な社員がこの時期にみえてきます。この上期の評価のタイミングで、暗に本人への退職勧奨がはじまります。
その最たるはPIPです。部下の側をスケープゴートとすることで、会社としては、DXの原則たるトップダウンの考え方に背き、存在意義の薄れた組織・上司の側に手を打つことなく、部門ごとリファインするチャンスを失います。組織も人間関係も機能不全に陥り、関係組織まで悪循環が及びます。該当の部下は、上司に従うと不利益を被るという恐怖に囚われ、本能的にエンゲージできなくなります。上司も底意ない指示ができなくなります。結果、信頼・共感・挑戦すべてが回復不能となり笑顔とやりがいが失われます。PIPは会社、経営にとって、百害あって一利ないことが明白です。
はて?公平な評価や客観性ある昇給昇格は、AIが技術的に確立されても、実際に企業内に実装され機能するのは、まだ先のことでしょう。況や、旧態依然とした経路依存性と、実態は成果評価から変われていないポスト型人事制度のもとで、この手口による人的資本の消去はどんな結果をもたらすのでしょうか。ここでは、立方体と三角錐に例えてご説明いたします。
この図は、立方体ABCDEFGHから、三角錐CBDGを切り出しています。三角錐CBDGを目に見えて評価されるポスト、経営に貢献できる戦略的な人材に例えると、そのなかでも、一次元の頂点や、二次元の面を構成することが、現在、人的資本経営時代を勝ち抜く社員に推奨されている立ち居振る舞いと言えるでしょう。
お客様や社会は、本当にそんな企業の在り方を望んでいるでしょうか。一次元、二次元に厚みはありません。ビジネスが成立する企業の存在意義、お金をお支払い頂く価値、それは三次元の部分、生物であれば骨も肉もあり血も流れている、厚みの部分にあると思うのです。
さらに、三角錐CBDGだけを見て、立方体ABCDEFGHを成していると思ってしまうと、大変!大きな間違いになります。三角錐CBDGは、CB・CD・CGの3軸を有しています。事業と社員を厳選して、三角錐CBDGだけで、効率的に事業を推進しているつもりになりがちです。ところが、軸CB・CD・CGを有していても、体積比は、三角錐CBDG:立方体ABDEFGH=1:6です。7分の1しか実態がない感じ、これが全量に積みあがらない実態構造の1説明として成立すると考えます。三角錐CBDGのに隠れがちな、それ以外の図形ABDEFGH、これを消去するのが、はたして人的資本経営なのでしょうか。
全社DXプロジェクト(FUJITRA)では、従来、2:6:2のパレートの法則で、変革へのエンゲージ状況について多くを説明してきました。これは、2:6:2=2:8=1:4と変換することができますが、社員のリップサービスを除外し正直にスコアを補正すると、上記の1:6のほうが実態を表しているように思います。
氷山の一角、海面から見える部分も7分の1と言われています。氷山の奥深くにあるジョブを可視化せず、表層のポストのみを経営に貢献できる戦略的な人材と定義する限り、7分の1どころか、体積にすら成り得ないのです。
社会全体の人材の流動化を提唱するのであれば、撤退する事業についても、人的資本の消去に、おのずと当事者意識を向くはずです。本当に、日本から、世界から、その技術が失われてしまってよいのでしょうか。新たに業界1位を獲得した企業様は、十分な技術レベルで提供なさっているでしょうか。
経路依存型の人事関係者が自らリファレンスを成し、率先して人的資本の消去にエンゲージを行えば、「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界を持続可能にする」「社内外の多彩な人材が俊敏に集い、いたるところでイノベーションを創出する社会」の実現に向けて貢献できることもあるのでしょう。

