見出し画像

そちらの世界のマイクロノベル 他3篇 #6

 そちらで三次元の巨大な歯車として世界を動かす存在は、こちらではマルバハグマという植物の花として、林床に咲くのが見られる。三つの花が合わさり一つの花のように見え、キク科だがそちらに関係の無いことだろう。

 そちらでの都市の発展が、こちらでは幼虫の成長へと投影され観察ができる。資源を喰らい脱皮して成長し、やがて蛹へと姿を変える。その後羽化して飛び立つ際に、そちらの都市はどのような変貌をとげているのだろう。

 夏草は空へ帰ろうと、アンテナだかなんだか知らないけれど、どんどんと登っていった。上までたどり着いて、電波になって空を飛ぶか。待てよ、ここから急に歩き出してやれば、人間たちが驚いておもしろいかも知れん。

 彼岸花咲く棚田の道を行くと、ふと花にバッタが乗っているのが目についた。よく見ると、あっちの花にもこっちの花にも……しまったな。そっと歩いてなんとか家まで帰りつき、玄関を閉めた途端、扉が激しく叩かれた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?