400文字の……(20)落語の発表会、あるいは「間」について

 落語の発表会が終わった。通算3回目の発表会だが、今回ようやくちゃんと練習して高座に臨むことができた。過去2回はラストまで諳んじるだけで精一杯で、本番も「やった」というだけで終わっていた。そういう意味で、今回はようやく「反省」できるだけの出来栄えになった。
 そう反省なのである。今回、本番直前に練習をしていて、感情の表現がまだまだ足りないことに気づいた。というか、そこまでは「しゃべること」ばかりに意識がいっていて、全然、全体の表情というものに考えが及んでいないことに、その時点でようやく気づいたのである。もちろん受けなかったのはいろんな理由があるだろうが、一番の理由はここにあるんじゃないかと考えている。
 一方で今回の稽古を通じて学んだということもある。師匠が何回も言っていた、『「間」とは息を吸う」ということである。大事なことを言う前に息を吸うとそれが間になる。ブレスと間の関係がようやくわかったのだ。
 大昔に鴻上尚史が、RPGを作っていて「この台詞の出だし(テキストの表示タイミング)をちょっと送らせたいのにそれができない」という悩みを語っていて、ゲームプロパーの人が「それはそこで“5秒ウェイト”とかって指示を出せばいい」と応えていた記事を読んだ記憶がある(うろ覚え。間違っていたらごめんなさい)。僕はずっとゲームプロパーのひとがいうような単純なことが、鴻上さんになぜ飲み込めないのかがよくわからなかった。でも今はわかるような気がする。
 鴻上はキャラクターの“生理”を間=つまり呼吸をコントロールすることで表現したかったのだ。それは舞台では役者の生理と演出の要求のせめぎあいで決まることだろう。そこをコントロールしたい。
 そう考えるとおそらくその対策は、鴻上さんがストップウォッチ片手に台詞を読みあげて、間を計測して、それに近いタイミングで台詞のテキストを表示する、という方法論になったのではないか。つまりアニメの演出と同じ手順を踏めばよかったんじゃないかということだ。
 そんなことがようやく考えられるようになった。というわけでもうちょっと落語を続けようと思っているのだった。

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