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富士山自然図鑑④(ラジオ原稿)「高山植物が無い?!」※無料

こんにちは。富士山自然図鑑を担当します富士山ネイチャーツアーズの岩崎と申します。
このコーナーでは私の大好きな富士山で生きる植物をはじめとする様々な生き物たちにスポットを当てて、彼らの生き様や、思わず「へぇ~」と声を出してしまいたくなる興味深い生態を紹介していきます。
富士山に行くのが楽しくなる、新たな富士山の楽しみ方が見えてくる、そんな情報をお届けします!

さて、久しぶりに制限の解除された登山シーズンが始まりました。今年こそは富士登山!という方も多いのではないでしょうか?
そこで、今回は富士山の五合目より上のエリアのちょっと不思議なお話をしたいと思います。

富士山は言わずと知れた日本一高い山。国内には日本アルプスをはじめとする3000mを超える高山が他にもたくさん存在しますが、富士山には他の高山と決定的に違う点がるのです!
高山での自然の楽しみ方の一つに高山植物たちとの出会いがあります。厳しい環境中、美しく、そして可憐に咲く花々はいつの時代も登山者を魅了してきました。日本一高い富士山ならこうした高山植物たちにきっと沢山出会えるのでは!と期待も膨らむことでしょう。

しかしながら、なんと富士山には高山植物は存在しないのです!えっ、日本一の高山なのに高山植物が無い?!なんてちょっと不思議ですよね。
実はこれ、高山植物の由来を知ると納得なんです。高山植物は氷河期の生き残りと言われ、地球全体が寒かった時代、極寒の環境に適応して生きていました。やがて氷河期が終わり徐々に地球が温かくなると、寒さに適応した植物たちは逆にこの暖かさに適応できず、自分たちの暮らしやすい環境を求めて寒冷な高山に逃げ込み、隔離されたというわけです。こうした植物を「真性高山植物」と呼びます。
一方富士山が現在の形になったのは1万~1万5千年前と言われ、ちょうど最後の氷河期の終わり頃に当たります。つまり、高山植物たちが既に他の高山帯に隔離された後に出来上がった富士山には彼らが進出するタイミングが無かったというわけです。現在富士山の高山帯で生きる植物たちは、その後、低地から進出、適応した「高山性の植物」というわけです。

日本一高い山富士山と高山植物の意外な関係、いかがでしたか?
今年は富士山に暮らす植物たちの生きざまに思いを馳せながら登山を楽しんでみてはいかがでしょう?

それでは、またお会いしましょう!富士山ネイチャーツアーズ岩崎でした。ありがとうございました。

※高山植物:真性高山植物 / 北方・極地起源の高山植物 / 温帯起源高山植物 / 北方・周北極系要素


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