生成AIのWebAPI料金比較 【2024年12月版】 ~新機能と価格改定で変わるLLM活用の形~
みなさん、こんにちは。WingArc1stでエンジニアをしている🗻🌸(ふじさくら)です。
最近、生成AIの世界では毎週のように新しい発表が行われていますね。特に料金面での変化が大きく、サービスを検討する上で重要な判断材料になってきています。前回5月に投稿した料金比較記事から、わずか半年でこんなにも状況が変わるとは予想していませんでした。
前回の記事をまだ読んでいない方は、こちらからご覧ください。
それでは、最新の料金動向を見ていきましょう。
各社LLMとAPI料金の比較
料金動向の考察
・ 価格競争の活発化が本格化
2024年後半から、AI言語モデル市場で価格戦略の見直しが活発化しています。7月にはOpenAIがGPT-4o-miniを、その後GoogleやCohereも新たな価格帯のモデルを次々とリリースし、高性能モデルの低価格化が急速に進んでいます
具体的な動きを見てみましょう:
Google
Gemini 1.5 Flash:入出力料金を約85%引き下げ($0.53から$0.075へ)
Cohere:
Command R:入力料金70%減、出力料金60%減
Command R+:入力料金17%減、出力料金33%減
OpenAI
GPT-4o:新モデルで入力料金50%減、出力料金33%減
このような動きの中で、Googleから超軽量モデルGemini 1.5 Flash-8b、CohereはCommand R7Bを提供しています。これらのモデルは名前が示す通りパラメータ数をそれぞれ8B、7Bと大幅に削減しながらも実用的な性能を維持しています。入力料金がわずか$0.0375/百万トークン、出力料金$0.15/百万トークンという、これまでにないリーズナブルな価格での提供を開始しました。ローカル実行との選択肢も含めて、生成AI活用の新たな可能性を広げています。
コスト最適化の新機能
・ プロンプトキャッシュ(コンテキストキャッシュ)
最近注目を集めているのが、プロンプトキャッシュという機能です。これは、同じ問い合わせに対する応答を効率化し、トークン消費量を大幅に削減する仕組みです。
例えば、カスタマーサポートのチャットボットを運用している場合、よくある質問の前提となる情報(会社の方針や製品の基本情報など)をキャッシュすることで、トークン消費を大幅に削減できます。
特に重要なのは、プロンプトの設計方法です。キャッシュの特性上、先頭にヒットする文字列が多いほど効果が大きくなります。そのため、変化しない部分(システムプロンプトなど)は先頭に、動的に変わる部分(ユーザーからの入力など)は後ろに配置することで、より効率的なキャッシュの活用が可能になります。
・ Batch API
もう一つの注目すべき機能が、Batch APIです。即時の応答が必要ない場合、このAPIを利用することで通常の半分程度のコストで処理を行うことができます。
特に以下のようなケースで効果を発揮します:
大量の文書の一括分析
定期的なレポート生成
データの事後分析
ただし、実装時には応答の遅延を考慮したエラーハンドリングが重要になります。
進化する生成AIモデル
料金表をご覧いただくと、一部のモデル(gemini-2.0-flash-expやgemini-exp-1206、learnlm-1.5-pro-experimentalなど)で価格が「記載なし」となっています。これらは現在開発が進められている実験的なモデルであり、正式リリース前の評価・検証段階にあるためです。今後、開発が進み次第、料金も公開されるものと思われます。
・ 新しい推論モデルの登場
o1シリーズの登場は、AIの思考プロセスに大きな変化をもたらしました。本日(2024年12月18日)の12 Days of Open AI にて、o1 APIが提供され、開発者はこの新しいモデルを活用できるようになりました。このモデルは、人間のように段階的に考えを組み立てていく「チェーン・オブ・ソート (Chain-of-Thought)」という手法を活用し、回答により多くの時間をかけることで精度を高めています。
これにより、複雑な問題解決や推論タスクにおいて、より正確で追跡可能な回答が可能になっています。通常のモデルと比べて応答は遅くなりますが、その分、より深い思考と正確な結果を得ることができます。
・ リアルタイムAIの実現
また、GPT-4o-realtime-previewという新しいモデルも提供が開始されています。このモデルは、これまでの「音声→テキスト→LLM思考→テキスト→音声」という複雑なプロセスを、「音声→LLM思考→音声」という形でシンプルにしました。AIが逐次的に思考しながら応答するため、人間との対話がより自然になっています。
このモデルの特徴的な点は、入出力でそれぞれ音声とテキストを選択できることです。音声のニュアンスを直接理解し表現できるため、まるで目の前に人がいるかのような対話体験を実現しています。
ただし、現状では料金設定が比較的高めとなっています。リアルタイムでの応答性を重視する用途では、コストと性能のバランスを慎重に検討する必要があるでしょう。
・ AIエージェントの進化
AIの活用方法に新たな可能性を提供する機能が登場しています。Anthropicからは、特に注目される2つの機能が発表されました。
まず1つ目は、コンピューターを操作するAI機能(computer use)です。この機能により、AIが人間と同じようにコンピューターを操作できるようになりました。画面を見て、カーソルを動かし、操作するという基本的なことができるようになっています。AsanaやCanva、DoorDashなどの企業がすでに実験を始めており、今後の発展が期待されます。
2つ目は、サービスとAIを繋ぐプロトコル(Model Context Protocol)です。このプロトコルは、AIアシスタントとデータが存在するシステム(コンテンツリポジトリ、ビジネスツール、開発環境など)を接続するための新しい標準として、オープンソースで公開されました。Google Drive、Slack、GitHubなど、主要なサービスとの連携がすでに用意されており、Block(旧Square)やApolloなどの企業が早期に採用を始めています。
```mermaid
flowchart LR
subgraph "Your Computer"
Host["MCP Host\n(Claude, IDEs, Tools)"]
S1["MCP Server A"]
S2["MCP Server B"]
S3["MCP Server C"]
Host <-->|"MCP Protocol"| S1
Host <-->|"MCP Protocol"| S2
Host <-->|"MCP Protocol"| S3
S1 <--> D1[("Local\nData Source A")]
S2 <--> D2[("Local\nData Source B")]
end
subgraph "Internet"
S3 <-->|"Web APIs"| D3[("Remote\nService C")]
end
```
まとめ
このように、生成AIの世界では性能の進化だけでなく、料金面でも大きな変化が起きています。特に注目すべきは以下の点です:
基本モデルを中心とした大幅な価格引き下げ
効率化機能(キャッシュ、バッチ処理)の充実
より高度な推論能力を持つモデルの登場
AIエージェントとしての活用の広がり
これらの変化により、生成AIの実サービスへの導入がより現実的なものになってきました。特にコスパの高いモデルを適切に選択し、効率化機能を活用することで、生成AI機能を実用的なコストで実現できる時代が来ています。
今後も引き続き、生成AI市場の動向をウォッチしていきたいと思います。最新の情報は、また記事にしてお届けしますね。
参照情報
Claude
Cohere
Mistral AI