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警視庁からの手紙

知人の息子さん(小学生のAさん)が、警視庁から手紙をもらって帰宅したそうです。当然、親は「一体何事だ」という反応になりました。

内容は、警察署から親御さんにあてられたものでした。概要は以下です。
~~○月〇日に、Aさんがシールを取得し、△警察署に届けていただき、ありがとうございました。落とされた方(持ち主)にお礼をしていただくために、△さんの住所、氏名等をお伝えしてよいものか、確認をさせていただきたく、ご連絡いたします。・・・~~

そして、同封されていた拾得物件預り書には、「ポケットモンスターシール」と書かれていました。Aさんが、道端に落ちていたポケモンシールを拾って、落とした人が困っているだろうと思って警察署に届けたというのが、事の次第のようです。相手が子供なので、持ち主に個人情報を伝えてもよいのか、保護者に確認を求める趣旨の手紙です。親御さんとしては、Aさんの行動力に驚いたそうです。

私もこの話を聞き、こういう人もいるんだと感心しました。自分がAさんと同じぐらいの年齢で同じ立場に置かれても、警察署に届けようとはしなかったしょう。「あ、シールが落ちているな」ぐらいの感覚でそのまま通り過ぎてしまうと思います。高額品ならともかく、シールを見つけて警察署に届けるという発想が出てこないでしょう。多くの小学生が私と同じではないかと想像します。

しかし、落とした人にとっては、もしかしたら何らかの思い入れの詰まったとても大切なシールかもしれません。Aさんがそう思ったのかどうかはわかりませんが、自然と「警察署に届けなきゃ」という意識が働いたとのことです。

この話だけ聞くと、さぞかし育ちの良い子供に思えるかもしれません。しかし、普段の子育てでは手を焼いているとのことです。ありがちと言えばありがちですが、親御さんの話では重症だということです。

・最低限の宿題はやろうとするが、宿題以外の親が買い与えた教材には見向きもしない。
・宿題も早く切り上げようとして間違いばかりし、理解が蓄積されない。
・自己管理が甘い。夏休みや冬休みがいつからいつまでか聞いても覚えていない。
・ユーチューブとゲームは取り組むが、それ以外へのことへ興味関心が見られない。
・友達が塾に通っているという話を聞いても、特に気にもしていない様子。
・勉強するよう、親がいろいろ説得や叱咤しても機嫌が悪くなるだけ。
・・・など。

一方で、ものすごく機敏な反応や行動力を発揮する場面もあるそうです。例えば、Aさんの弟さんが転んだりケガをしそうになったりした時に、素早く駆け寄って声をかけるなど。親御さんとしては、そんなに神経質にならなくても大丈夫だと思うようなちょっとしたことでも、自分や近親者、友人の安全や和が脅かされそうな出来事へのアンテナが敏感なのだそうです。

親御さんの思い付きで、子供向け簡易版エニアグラムの診断をウェブで試してみて、どのタイプが当てはまるのかをやってみたそうです。すると、結果はタイプ9でした。

「9つの性格」(鈴木秀子氏著)によると、「人間は9つの本質の中のひとつを与えられて、この世に生を受ける。自分のタイプを知り、囚われから解放されれば、自らの能力と個性を最大限に生かすことができる。」と説明されています。エニアグラムは生来的なものであるとする立場をとっているため、子供であってもどの性格なのか既に決まっていることになります。9つの性格とは、次の通りです。

タイプ1:完全でありたい人
タイプ2:人の助けになりたい人
タイプ3:成功を追い求める人
タイプ4:特別な存在であろうとする人
タイプ5:知識を得て観察する人
タイプ6:安全を求め慎重に行動する人
タイプ7:楽しさを求め計画する人
タイプ8:強さを求め自己を主張する人
タイプ9:調和と平和を願う人

そして、タイプ9の説明として、次のように書かれています。
~~葛藤や緊張を避ける平和主義者で、自分の内面がかき乱されることを嫌う。他人に同化するため、周囲の人たちの影響を受けやすいが、よい環境にあるならば、心が広く、動じることがなく、辛抱強い。偏見がなく、人の気持ちになることができるので、他者の悩みを聞いてあげる聞き上手でもある。「落ち着いている」「調和に満たされている」ということでもっとも満足感を得る。~~

NPO日本エニアグラム学会のサイトでは、タイプ9の説明として次の通りです。上記と合わせ見ると、おおよそのイメージがわいてきます。
~~このタイプの人は、落ち着いてゆったりとした安定感があります。内面での静けさを保っていたいので、葛藤や不快な状況は好きでなく、その状況に遭うと、それを解消しようとしたり、避けようとしたりします。

いろいろなことで忙しくすることがありますが、内側では落ち着きを保っています。平和に、円満に暮らすことを好み、自分から事を起すよりも、起こってくることに沿って行こうとします。しかし、一旦動き出せば大きな力を発揮することが出来、創造的になれる人で、想像力やビジョンがあり、かなりの時間、その中で生きていくことができます。

平和を愛し、人と争うのが嫌いなため、周囲を穏やかにします。他の人に対する価値判断をしないので、その人たちの間で一緒にいることができます。物事を切り替えたり、新規にやり始めたりするよりは、順当に起伏なく過ごす方が性に合います。~~

これらからは、Aさんが自分や近親者、友人の安全や和が脅かされそうな出来事を見ると、その出来事を解消しようとする行動エネルギーが出ることもうなずける気がします。落ちているシールが気になったのも、Aさんにとっての調和と平和の状態が崩れたと感じ、落ち着かなかったのかもしれません。(普段、道に落ちているものを全部見ているわけではないと思いますが)

親御さんは、次のような説得や叱咤をするものの、Aさんにはまったく響かないそうです。それぞれ、別のタイプの人に対してであれば、もっと響くのかもしれません。タイプ9のAさんに対する働きかけとしては、もっと別のことがよいのではないかと、親御さんとしては振り返っています。

・(テストで)こんな凡ミスで×をつけられて恥ずかしくないの?⇒相手がタイプ1なら有効かも
・友達の○さんに馬鹿にされて悔しくないの?⇒相手がタイプ8なら有効かも
・将来仕事で成功したいと思ったら英語はできないといけないのに、こんな成績じゃだめでしょ⇒相手がタイプ3なら有効かも

子供向け簡易版の診断ですので、その結果をもってして特定のタイプと決めつけるべきではありません。また、コミュニケーション上の課題すべてをエニアグラムで考察・解決しようとするのも、無理があります(9通りの種類の対応だけで済むわけではない)。その上で、相手がどんな人なのか、ちょっと立ち止まって想像してみるのには、エニアグラムはある程度有効だと言えるでしょう(エニアグラム以外のツールでもよいですが)。

自分と相手がそもそも得たいと思っている心の状態や、本来的にどんなことを志向しているのかが違っているということを認識してコミュニケーションをとるかとらないかで、結果に大きな差が出るはずです。

自分と相手は異なる。改めて感じた出来事でした。

<まとめ>
より良いコミュニケーションのために、相手のタイプを知ろうとする。


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