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様々な付加価値

先日、ある企業様でお話をしていて、付加価値について話題になりました。価格を下げずにいかに付加価値を提供して利益を確保できるかが重要だが、全社的にそういう発想が弱い、ということでした。

私たちの日常の消費活動においては、得られるモノはほぼ同一でありながら、得る方法が異なる、ということがいろいろとあります。例えば、ウーバーイーツ。店頭でも買える同じものを、配達という形で受け取ることができます。配達の場合は当然、手数料が加算されます。

私の知人にも、ウーバーイーツの愛用者がいます。愛用者という枠を超えて、毎日の夕食をほぼウーバーイーツで賄っているぐらいのヘビーユーザーです。手数料も入っているため、1回あたりが結構な金額のようで、メロンパン1個を数百円で買うこともあるようです。本人は「家で待ってたら届く利便性や優越感」がよいということで、満足度が高いようです。その結果、月々の食費が結構な額になっているそうです。仕事帰りに駅前で買って帰ることもできるはずなのですがそうせずに、帰ったとほぼ同時にウーバーイーツが届けに来るのがよいそうなのです。

私はどちらかというと、同じ行動はとらないほうです。バーガーショップに行けば店頭価格で変えるものを、手数料数百円払ってハンバーガーの配達を頼むことはあまりありません。もちろん、移動時間を圧縮して家で集中して何かしたいときなどには利用しますが、帰り道でも買えるものをわざわざ追加でお金を払って家で受け取ることはあまり好まないためです。そのほうがトータルで少しは時間節約になるとは思いますが、そのためのアプリ操作も面倒だと感じてしまうほうです。

そうしたサービスを好むか好まないかは、個人の趣向によるところでしょう。ここで留意したいのは、わずかな利便性や優越感に価値を見出して手数料を払う人もいるということです。

ずいぶん前に聞いた話のためうろ覚えで恐縮ですが(不正確かもしれませんが、考え方のイメージということで)、可処分所得の低い人ほどコンビニを好んで使うという実証結果があったそうです。コンビニと100円ショップがほぼ同じ立地で隣り合っていて、コンビニで買えるものと同じもの(あるいは限りなく類似品)が100円ショップでも買える。当然、100円ショップの方が安い。それを当事者も知っている。しかし、(100円ショップが営業中の)日中であっても若年層の工場労働者はほぼ例外なく、100円ショップではなくコンビニの方で買い物をするという話です。

これは、論理的な説明が難しい行動です。可処分所得の低い若年層の工場労働者がものを買うなら、少しでも可処分所得を維持するために100円ショップを積極的に使うべきですが、そうしません。「コンビニ」という空間を使うことによる、何かの心理的充足があるのでしょう。安心感なのか、リッチ感なのか、ブランドなのか、その何かは人によって違うでしょうし、説明が難しいもののように思えます。

これらのことは、我々のビジネスで様々な付加価値が提供できる可能性を示しています。Aさんが見たら無駄なコストと感じることであっても、Bさんが見たら積極的に払う合理性があれば、かまわないわけです。重要なのは、Bさんを自社のターゲット顧客として見出せることと、そのBさんに提供する商品・サービスを定義できること、それが自社の理念や強みに合っていることでしょう。

冒頭の企業様では、そうした付加価値を探求する活動や発想ができていないこと、できていないためにお客様に言われたことだけをひたすら届ける、結果としてひたすら値段勝負に陥っていて収益性が下がっている、ということを嘆いていたわけです。

小宮コンサルタンツでは、マーケティングについて考える際に、Quality(商品の中身そのもの)、Price(価格)、Service(その他サービス)の3要素のフレームワークで整理することがあります。お客様は、この3要素の組み合わせで、競合品と相対比較しながら自社を選んでいるわけです。

最善なのはQで競合と差別化できることです。それが難しい場合は、Sで差別化することも考えられます。しかし、QもSも差別化できず、Pで選ばれることのみに注力し値下げ競争になっている、そのような状況もよくあります。いかに自社なりのQやS、そしてQPSの組み合わせを定義し実践できるかが重要になります。

<まとめ>
QualityかServiceで差別化する。


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