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従業員のエンゲージメントを高めるには(2)

前回は、株式会社カイラボ様による対談ウェビナー「3/2 従業員のエンゲージメントを高めるには?」での対談内容を振り返り、エンゲージメントが重視される背景や、「ワークエンゲージメント」の視点に加え「従業員エンゲージメント」の視点で向き合う必要があることについて考えました。

前回取り上げてみた、従業員エンゲージメントの定義は下記でした。

従業員エンゲージメント:従業員が企業全体、上司、仕事の中身など働く場面にある諸対象に、どれだけ強い関与や思い入れをもっているかの度合い

「エンゲージメント」と似た意味合いの言葉がいろいろあります。例えば「モチベーション」や「一体感」などです。これらと従業員エンゲージメントとは、何が違うのでしょうか。それらに決まった定義はなく、各人の解釈次第かもしれません。

そのうえで私の解釈になりますが、エンゲージメントが重要と言われている背景から、「従業員エンゲージメントが高い」と言える状態は、少なくとも2つの要素を満たしている必要があるのではないかと考えます。ひとつは、組織の成果が上がっていることです。

成果が出ているから組織活動や仕事への思い入れが高まるのか、思い入れが高まるから成果が上がるのか、どちらが先なのかは卵と鶏みたいな関係かもしれません。しかし、少なくとも両者は無関係ではないはずです。

個人としてのモチベーションは高くても組織としての成果が出ているかはまた別、一体感はあるが何かを生み出しているわけではない、などの状態もあり得ます。サークル活動であれば一体感だけで十分かもしれません。一方で、企業組織でそれでは不十分です。成果と関連付けるべきだということが、「エンゲージメント」という言葉への期待に込められているのではないかと考えます。

もうひとつは、関わる人や組織との関係性の深まりを伴っていることです。

婚約指輪がエンゲージメントリングと呼ばれるように、エンゲージメントという言葉は、もともと「契約」や「約束」といった意味合いで使われます。婚約は、相手との関係性があって成り立つものです。自分だけで行うものではありません。

前回、これまでの「ワークエンゲージメント」が「仕事」を対象としていたのに対して、これからさらに求められる「従業員エンゲージメント」の対象は「仕事+かかわる相手」ではないか、と考えました。「エンゲージメント」が本来持っている相手との関係性という要素からも、経営の視点では「従業員エンゲージメント」のほうが追求していくべき本質に近いのではないかと感じます。

世界には西洋をはじめ、契約ごとの明確化や可視化を重視する文化圏があります。契約を意味するエンゲージメントを高めるための施策や状態の可視化・把握などにも、そうした文化圏のほうが敏感だったのかもしれません。

そうした重要性の認識や、経営者が自社の存在意義を「パーパス」と言って従業員に明示して自社への帰属意識を高めてもらうこと、エンゲージメント度合いの定点観測とそれを高める施策などを体系的に行なう仕組みが発達し、それが日本に輸入されてきたというのが、これまでの流れではないかと想像します。

日本企業が、エンゲージメントづくりができてこなかったわけではないでしょう。かつて大躍進を遂げた企業もあり、今に至るまで発展し続けている企業もあります。そうした企業では、経営と従業員の間でエンゲージメントづくりができているのだと思われます。

一方で、バブル経済崩壊までは発展しながら、ここ30年間で伸び悩んでいる企業もあります。そのような企業では、前回取り上げた「かつての雇用環境」での経営の中で自然につくれていた従業員エンゲージメントの状態が、「これからの雇用環境」に変わってビジネスモデルの変換が求められている中で、うまくシフトできていないと言えるのかもしれません。

エンゲージメントについては、「結果として見る視点」が大切だと考えます。売上と同じイメージです。売上も結果として見る指標のはずです。

時には「売上をあげるために今自社では何をすべきか?」の問いを立てることもありますが、基本的に売上や利益は企業活動の最終目的にはなりえません。商品・サービスによってお客さまに喜ばれ、経営学者のドラッカー氏の言うところの、企業の目的である「顧客の創造」を実現し、お客さまを通した社会からの評価の大きさが売上という結果指標になって表れます。自社として取り組むべきことに取り組むことができれば、売上という結果は自ずとついてくるはずということです。

エンゲージメントも同様に、会社組織をよくしていった結果の状態と捉えるべきではないでしょうか。時には「エンゲージメントを高めるために今自社では何をすべきか?」という問いがあってもよいかもしれませんが、それが直接の目的となった施策の連発にはならないようにすべきだと思います。さもなくば、「売上を短期的にあげるためにお客さまの不利益に目をつぶって売る」のように、エンゲージメント指数を短期的にあげるための本末転倒な施策に走ってしまうかもしれません。

続きは、次回以降考えてみます。

<まとめ>
従業員エンゲージメントの成立には、組織の成果が上がっていること、仕事で関わる人や組織との関係性の深まりを伴っていること、が必要。

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