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会議での意志決定を進めるには

先日、ある企業関係者の方とお話する機会がありました。同社様は業界の中でも有力な企業であり、相応の組織規模と実績があります。これまでに私もご相談を受けながら、いろいろなことを具体的に検討されているのですが、会社として最終的な意志決定がなされていないというお話でした。

お話をお聞きしてみると、各課題について部門の代表者や幹部から役員へ提案されるところまでは進んでいて、方向性として賛同は得ているようですが、最終的な承認がとれていないということのようです。

この事象に対して、私が問いかけてみたのは、4つの要因の有無でした。

1. 意志決定プロセスが不明確である

だれが何に対して承認の権限を持っているのか、何を役員会や取締役会にかけて採決を求めて意志決定するのか、などが不明確であれば、どこまでが検討され、どこまでが承認されているのかがあいまいになりがちです。しかし、同社様の場合は、相応の組織統治がなされていて、稟議の仕組みも含めて意志決定のためのインフラは整っていることを確認しました。今回話題になったいくつかのテーマは、すべて役員会で幹部から提案されているようです。

しかし、その役員会の進め方に問題があるようです。役員会終了時に、「役員が今後の検討課題として理解はしたものの、この場で是非を決めるところまでは求められていない」という認識の状態で終わっているようです。意志決定の仕組みはあるが、運用がうまくできていないということのようです。

運用不全の大きな要因は、役員会の進行にありそうです。アジェンダや資料が、何が報告事項、協議事項、判断を決める事項なのか、あいまいなつくりになっているようです。その結果、「何となく検討はした」という結果に終わりがちになっているようです。

単純ではありますが、「報告事項」「決議事項」といったテーマに沿ったアジェンダの設定、「決議事項」は「○○で決まりました、よいですね」ということを宣言して会議終了する。資料も「報告資料」「以上に対する承認を求めます」といった、アジェンダに沿った見せ方をするとよいという話になりました。

2.判断基準が不明確である

判断基準がなければ、承認も否認もできません。A案とB案のどちらを選ぶか、どちらも否決かを決めようと思えば、コスト・効果・リスクの高さなど、両案のメリット・デメリットがあることで、どちらか一方を選ぶことができます。あるいは、会社として満たさなければならない方針を外していれば、両案とも選ばずやりなおしという決定になります。

お話の限りでは、今回話題になったいくつかのテーマに関する判断基準は、それなりのものがあるそうです。よって、この点は当てはまらないようです。

3.エビデンス(社外・社内)が不足している

判断基準があっても、提案内容(期待される効果など)の確かさや妥当さを説明するエビデンス(根拠)がなければ、承認してよいかどうかの判断ができません。今回取り上げていたテーマは、社員の働き方や処遇の変更に影響するものがほとんどでした。例えば賃金であれば、最近の物価高を含め社会一般や業界でどのような改定の動きがあるか、社外の根拠を情報として集め、それも踏まえて自社ではこうするという意志決定をすることも必要です。

また、社内に関する根拠です。これがいち幹部や特定部署のみの意見ではなくて、組織全体として理解が得られる内容になっているか、それにより社員にとってプラスの影響がありそうかなどの想定も、判断には必要です。

お話からは、ここには課題感がありそうでした。提案部署なりに社外・社内の情報収集やヒアリングなどを行った結果として案をまとめているものの、役員の視点からは少し弱いと感じられたようです。今後、社外の人材も活用して社外のデータを集めると共に、社外の人材が社員にヒアリングなどを行い、中立的な立場からどのように現状を評価するかのエビデンスも追加することになりました。

4.重要度や緊急度の認識が不足している

その案件の重要性や緊急性の認識が足らなければ、「検討はするけど今決めなくてよい」と意志決定を先延ばしにしがちです。お話からは、今回のテーマに対して、役員の方の重要度・緊急度認識があまり高くないようでした。よって、他の事案より優先度が下がっているようにも見受けられました。上記3.を進める中で、重要度・緊急度認識を高めていく想定です。

「意志決定が進めない」という事象も、それを妨げている要因はいろいろ考えられます。自組織で妨げとなっている要因を想定し、改善できるとよいと思います。今回は、上記1.3.4.の合わせ技だったようですが、中でも1.の影響が大きかったようです。会議のアジェンダを明確にするといった単純なことでも、改善できることは大いにありそうです。

<まとめ>
会議は、「報告」「協議」「アイデア出し」「決議」など、目的に沿ってアジェンダを明確にする。

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