ATOUN Vision 2030を発表しました。
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ATOUN Vision 2030を発表しました。

こんにちは、藤本です。

本日、2020年6月3日、ATOUN本社で『10年後、パワードウェアは技能やスキルを「ダウンロードして着るもの」に変える―』と題してフリーアビリティ社会を目指した取り組みについてメディア発表しました。

その時の発表内容をアップいたします。

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2003年の創業以来、人と機械の新しい関係性を模索して参りました。
あうんの呼吸で動く着るロボットの社会実装を奈良の地で進めています。
今日は、パワードウェアのある2030年のライフスタイルを紹介させていただきたいと思います。

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ロボットを着て人間がもっと自由に動き回れる世界。
それがATOUNの目指すところです。
その世界では、ロボットはファッションであり、好きなようにカスタマイズし、色や形をオーダーし、自分らしさを表現するものになっています。
それが、パワードウェアです。

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パワードウェア。
それは、これまでにない人間のパワーを引き出すウェアであり、シャツを羽織るように、ズボンを履くように、着ることのできるロボットです。

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すでに実用化され、空港のグランドハンドリング業務や物流、工場といった現場で使われ始めています。

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着るロボットは、センサ、制御、情報、インテグレーション、モバイルコンピューティングといった技術が統合されたものです。

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それでは、ここから、ATOUNのイノベーションを裏で支えてきた手法について紹介いたします。

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それは、Sci-Fiプロトタイピングです。

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Sci-Fiプロトタイピングは、SF作家により描かれた物語を、企業のビジョンやミッションの策定、新規事業の創出、技術ロードマップの策定などに生かす手法です。

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多くのテクノロジー企業の創業者は、SF作品から未来を見通し、それを事業に結び付けることで、新しい価値を世に生み出してきました。
この妄想力こそが、価値創出の源泉であり、これを民主化し体系化したものが、Sci-Fiプロトタイピングなのです。

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ATOUNでは、常に我々のプロダクトが未来にどのように使われるかを、時にはスタッフ同士、時にはSF作家らと一緒になって妄想し、探求してきました。

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未来に対する仮説を、サイエンスフィクションとして描き出し、そこからバックキャスティングによって、プロダクトのあるべき姿を描く。未来の予測ではなく、未来から逆算してつくることによって、非連続性の高い発想が可能となり、イノベーションが起こしやすくなります。

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例えば、パワードスーツNIOは、映画からバックキャストしたプロトタイプと言えます。

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ATOUN VISSION 2030の策定では、ブランディングと開発パートナーである世界的クリエイティブ集団、伊藤直樹さんが率いるPARTYの協力のもと進めてきました。

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また、2030年の未来の物語は、創業まもなくから未来を描く作業をサポートいただいている映像作家の吾奏伸さん、今回新たにご縁を持ったSF作家の樋口恭介さん、イラストレーターのよー清水さんと一緒に描きました。

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3つの物語をご紹介させていただきたいと思います。

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私はバレリーナです。
今年で五〇歳。
ここ数年、怪我の治りが悪くなって……何度も引退を考えました。
英国⼀のプリマが現役を去る……それをカンパニーは喜びません。もちろん観客も。
けれど、みんなはいつだって理想的な私を期待している。
それがジレンマで、引退公演を⾏う勇気すらありません。
そんな時、この透明で美しいパワードウェアと出会いました。

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今、私は⾜⾸を痛めています。背中と、そして⾸も。
けれど、これを着ると「魔法」がかかる。
私の過去の動きを記録したアクティビティデータが、⾝体の不調を察し、必要なタイミングで、不⾜した筋⼒だけをサポートしてくれる。

しかも、能動的な動きを邪魔したりは⼀切しない。操り⼈形にはならず、こうだ、こっちだと、思うままに全⼒で踊りきることができる。
バレエ本来の「喜び」が少しも失われない。 過去の私と現在の私が溶けて、混ざり合って、⼀つになれるのです……!
ああ、5分前のベルが鳴りましたね。
きっと観客は怪我の影響を感じないでしょう。 着けていること⾃体もわからないでしょう。 でも、何より私は、私らしい舞台にできることがとても嬉しい。 眉間に皺を寄せて悩むより、微笑んでいる⽅が⾃分らしいと思うから。

物語の中に、アクティビティデータというワードがでてきました。これは、その人の「動き」などの情報を解析、最適化したものです。未来では、過去の最高の時と現在との差分を分析し、パワードウェアが適宜サポートをしてくる世界が訪れます。

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私は苦笑いした。やっちまった。
⼀歳になる娘のために、通販で買った⽊製のかわいいベビーウォーカー(押し⾞)が何と組み⽴て式だったのだ。
いちおう箱をあけて中⾝を並べてみた。
ネジが⼭盛り、パーツはバラバラ。
普段こういう作業は夫に任せっきり。
でも彼は出張中で、⼀ヶ⽉ほど戻らない。ならば。

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私はARグラスを着け、パワードウェアを装着した。
検索すると……あるある!
同じ作業をこなした動画がわんさか。
ひとたびアクティビティデータをダウンロードすれば、あらゆる作業が、筋⼒や指の使い⽅のみならず視覚的にもアシストされる。
重たいインパクトドライバーを構え、ネジを⼀本つまみ上げて……私みたいなメカ⾳痴でも、安全に作業を進めることができそうだ。 かなり時間はかかっちゃったけれど、なんとか完成。DIY好きな夫の気分を味わうことができるのも、ちょっと嬉しい。
彼が戻った時、⽴って歩く娘をみたら、きっと驚いてくれるだろうな。
あれ? ということは、お戻りがあんまり早くてもよろしくない。歩けるまでの練習時間が必要。早すぎず、遅すぎず、帰ってきてね……パパ。

ここでは、アクティビティデータをダウンロードして使っています。

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僕はクロスカントリースキーの選⼿です。
⽗は有名な選⼿で、いつも僕の⽬標でした。

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⼦供の頃から、僕は⽗のアクティビティデータを使い、練習を重ねました。
まずARグラスをかけ、パワードウェアを着る。
⽗の動きに沿って練習し、⾝体に覚え込ませる。
それからウェアを脱いで、⼀⼈で実践。 初⼼者を教える指導者としての動きから、競技者としての動きまで、彼のライブラリは充実しています。 僕は来る⽇も来る⽇も、繰り返しました。 ⽩銀の世界の中を、いつも⼆⼈で駆け抜けた。 いつも、⼆⼈で。
⽗は僕が産まれる前にこの世を去りました。 けれど、その感覚は永遠です。
そして今、僕は国の代表に選ばれ、決勝戦のスタートラインに⽴ちました。 ずっと傍にいる「⾒えない⽗」へ −ありがとう。
競技を離れても、なるべくパワードウェアを着て⽣活したいですね。 ⽗のようにデータを残したい。 時間を超えたい。 僕の⼦供のため? いいえ、それだけではありません。 すべての⼈が、誰かのために「⾃分」を残す。 ⼈類の記憶の⼀部になること。
それは、きっと僕らの使命なんです。

この物語ではアクティビティデータをダウンロードしますが、それをもとに型を学び、そして、経験を蓄積し進化する。自らの力で型を破るということが表現されています。

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3編のSF小説のあらすじを紹介いたしましたが、これらの世界がATOUNの目指す2030年です。

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フリーアビリティ社会。
生来の身体的能力を自由に拡張して動き回れる社会です。

これまでATOUNは、パワードウェアの提供を通じて、性別・年齢にともなう力の差からうまれる不平等や制約の解消に取り組んできました。ハードの面でのアシストとすれば、2030年に向けて取り組みはソフト面のアシストです。
パワードウェアで、動作を読み取り、技能をデータ化し、技能を再現し、シンプルなものであれば技能を引用し、高度なものでも直接体験することで技能の短時間での習得が可能となります。動きの再現だけでなく、体験を通じて身につけていく。時空をも超えて優れた技術を社会の財産とし、人々がさらに自由に動き回れる世界を目指します。

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そのために必要なものが、「中動態」の実現です。
中動態とは、能動でもあり受動でもあるという状態のことです。

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電動自転車の体験は分かりやすく、ペダルを踏みこむとセンサが検知し分析し適当な力でモータがアシストしてくれます。自分の力で能動的に漕ぎ出していますが、そのうちにモータが押してくれていることを感じ取り受動的に足が押されている感覚となります。能動から受動、受動から能動と行き来する間に、無意識化の状態となります。この状態が中動態と言えます。

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機械にあやつられるのでもなく、機械のサポートを受けながら、自分の身体で、自分の意志で動く感覚。それが中動態です。

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中動態を実現するために3つのポイントを挙げています。
あらゆる身体の部位をサポート、高性能なセンシングと制御、クラウドによる再現性です。

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ユーザーがサポートを必要とする部位は、千差万別です。利用シーンによっても変わります。そこで、あらゆる部位をサポートするパワードウェアが必要となります。

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ATOUNでは、2030年に向けて3つのラインで開発を進めています。

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腰、腕、脚をサポートするパワードウェアです。

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ATOUN MODEL Yは、体幹や腰をサポートするパワードウェアです。物流や工場、建設、農業など、あらゆる現場で導入が進み、累計出荷台数は700台を超えています。直近では、JALのソーティング場で貨物の取り扱いに活用されています。

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腕をアシストするkoteは、昨年5月からJALグランドサービスの協力で実証試験が進んでいます。現在、導入を前提とした実証試験パートナーの募集を行っています。

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最後に歩行を支援するパワードウェアHIMICO。AMED、日本医療研究開発機構の支援を受け虚弱高齢者の健康寿命延伸を目指して研究開発を進めてきました。そして、その技術を利用し、2019年12月にKNT-CTホールディングスの協力のもと、京都で紅葉を楽しむ体験ツアーを実施しました。歩くことに自信が持てなくなった方からも高い評価を得て、ユニバーサルツーリズムの新しい価値を見出しました。

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次に、これらパワードウェアをしっかりと制御することが必要になります。
気づかないうちにサポートされていたという中動態の感覚を生み出すために、着用感やフレキシビリティに注力し、様々な動作意図を認識するセンサやプロセッサ、そして力強いアシスト力が必要です。

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ワイヤーユニットテクノロジー。ATOUN独自開発のこの技術により、中動態制御を実現させます。

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3つめは、パワードウェアのIoT化です。
年齢や体調、コンディションなど人間の力は日々変化します。最高の状態をダウンロードできるとすればどうでしょうか?
また、ほかの人のアクティビティデータをダウンロードして学ぶこともできます。

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まず、パワードウェアのセンサから取得されるデータをATOUNクラウドにアップロードします。

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クラウド内でアクティビティデータは蓄積され、膨大なデータから機械学習によりユーザーの最高の状態が解析されます。これにより、自らのデータの継承がされるのです。

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さらに高パフォーマンスのデータをクラウドからストリーミング。
ユーザーのパフォーマンスが低下しているときは、デバイス側で差分を認識し、筋力調節などのフィードバックを行います。

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そして、アクティビティストアから、他のユーザーが蓄積したアクティビティデータを自らのデバイスにダウンロードすることもできます。

歩行支援パワードウェアHIMICOでは、歩容を見ることができます。作業支援のパワードウェアMODEL Yでは、作業時の状態を解析しています。疲労を管理し、より効率的な動作が提案されます。

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また、これらを可視化するアプリケーションの開発も進めています。

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以上、ご紹介させていただいたように、我々が現在進めている取り組みはすべて、フリーアビリティ社会に繋がっています。

ロボットを着て、人間がもっと自由に動き回れる世界をつくる。
ATOUNは、このミッションのもとで、パワードウェアの提供に取り組んできました。
今後も旗印を変えることなく、「もっと自由に」を追求し、人間の未知なる可能性を拓くために努力して参ります。

以上で、ATOUN Vision 2030の説明を終わらせていただきます。
ありがとうございました。


今回の発信で、物語を一緒に作っていただいたSF作家の樋口恭介さんが、別の物語を上げておられました。この物語も素敵でした!合わせて読んでいただけると、フリーアビリティ社会にさらに詳しくなります。






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ご縁に感謝いたします。
”着るロボット”パワードウェアを開発するロボティクスファームATOUN 代表取締役社長/大阪大学 工学部 原子力工学専攻/国立大学法人奈良女子大学 客員教授/大阪工業大学 客員教授/けいはんなR&Dコンソーシアム 技術・運営委員/1970年7月21日生