目_非常にはっきりとわからない_スケーパー対談1

「目 非常にはっきりとわからない」について「スケーパー × 目 [mé]が対談」(1)

「非常にはっきりとわからない」は、千葉市美術館で行われた目 [mé]の現代アート展です(会期:2019年11月2日~12月28日)。
僕はスケーパー運営統括としてこの展示に関わりました。

スケーパーとは?

スケーパーとは目の造語で「景色の人」という意味です。
Scaper=landscape(景色)+person(人)
今回の展示で重要な役割を果たしたスケーパー。そんなスケーパーと呼ばれる人々が作品として存在していました。
こちらで把握できていないスケーパーもいますが、一部のスケーパー(8名)から話を聞く機会がありました。

始まりはオーディション

友 オーディションから、何もかもがわからなかった。
倉島 Googleマップを見ても、全然オーディション会場にも全然たどり着けないし。
友 場所わかんなかったよね。
川島 建物も怪しかった。
倉島 すごく怪しい雑居ビルで。
緒野 そう、すごい怖かった。
荒神 変なビルだった。
南川 張り紙も怪しかったよね。詳細を出せないから。
全員 そうそうそう。

オーディション会場の張り紙

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川島 俺、会場まで行ったけど、帰ろうかと思ったもん。
倉島 俺も。
緒野 私も。すごい危ない団体で、取り囲まれたらどう逃げようかなって考えてた。
加藤 私、一回帰りましたもん。会場のドアの前まで行って「よし帰ろう」と思って、建物を出ようとしました。そしたら、入り口で、内藤さんに会って「あ、受ける人いるんだ」と思って引き返しました。

倉島 募集要項に何も情報がなくて、それが面白そうだと思って応募したんですけど、会場に入ったら4人(荒神、南川、畑井、藤木)が横一列に座ってて、意味わかんないとこに来ちゃったなって。
全員 うんうん。
倉島 そもそも目とか知らなかったし。
ほぼ全員 うんうん。
倉島 目の過去作品のカタログを見せられて、全然よくわかんねーよって思って。でも、色々と話をして。俺がすごくくだらない話をしたんですけど、そのとき荒神さんが真っ直ぐな目で俺のこと見てくれて。
川島 荒神さん、真っ直ぐな目で見てくれますよね。
全員 うん。
倉島 オーディションで荒神さんと南川さんが俺のことを見てくれた目が良くて。くだらない話をこんなに真剣に聞いてくれる人初めてだなと思って。だから、だからやる内容は何でも大丈夫で、やりたいって思いました。今もやってること自体には興味がないですし。こんなに同じことできるなんて中々ないから楽しいです。
倉島 あのオーディションここ4、5年くらいで一番面白かったです。
藤木 くだらない話を聞いてくれたから?
倉島 はい。

戸井田 私は、わからないってことが好きで。宇宙とかも。説明がつかないものに対する興味が強くて。だから募集要項にも何も情報がないってところに興味を持って応募しました。オーディションは橘高さんと一緒だったんです。橘高さんは、アートに詳しくて、目と会えたことに興奮して、すごく熱く語ってて。私は目を知らなかったんだけど。
全員 うん、知らなかった。
戸井田 橘高さんに影響を受けて、へえーすごい人たちなんだって。
緒野 会場は怪しくて怖かったんですけど、オーディションを受ける人が何人か会場の前で座っていて。それで受けるだけ受けてみようって。
私も目を知らなかったんですけど、過去作品をカタログで見せてもらったとき「すごい面白い作品を作ってる人たちなんだ!」って思って。やりたくなりました。
川島 俺もそうだったー!
友 えー!嘘だー!過去作品のカタログ見せてもらったけど、意味わかんなかったよ!
倉島 意味わかんなかった!
川島 俺、めっちゃ面白そうって思った!
勝又 俺、見れてない。スマホのビデオ通話でオーディションだったから、小さすぎて。
全員 あははは
勝又 僕は募集要項を見たときに「何これ?アート?どんな人がやってんだろう?受けてみよう」って。なんとなく応募しました。やばかったら逃げようとは思いましたよ。でも、4人の人柄が良さそうだったから。

緒野 オーディションの内容も不思議だった。
友 アート作品だって聞いてたから、オーディションのとき、絶対体にペイントされると思ってた。
緒野 なんか物を動かしてくださいって。藤木さんが目の前で椅子とか箱を動かして見せてくれて。じゃあ、同じように動かしてくださいって。
勝又 いいなー。俺もやりたかった。色々話をしただけだもん。

藤木 川島さんと、廣田さんは、どうして応募してくれたんですか?
川島 内容は全然わかんなかったですけど、美術系のお仕事ってやったことがなかったので面白そうだなって思って。
廣田 どんな人たちなんだろう?っていうのが1つ。あと募集要項に「アートに興味がない人でも楽しめる作品です」って書かれていたので、どんなのだろうって思って。そこに一番興味持ちましたね。自分が全然、現代アートとかに興味が持てないから。結果、お客さんとして何回も見に来ちゃってる。
友 私も3回以上来てる。全然わかんないけど。倉島さんが、お客さんとして見に来たときに「めっちゃ面白い!」って言ってたじゃん。私、何が面白いのか全然わからない。いまだに自分が何してるのかもわからないし。
倉島 何が面白いかわかんないから、面白いんじゃないですか?
友 わかんない。だって、わかんないじゃん。オーディションのときから「わかんねーな、これ」って思ってて。何か質問ありますか?って聞かれても、わかんないし。
全員 うんうん。
友 質問しようがないよね。何やらされるかもわかんないんだもんね。

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作品になった心境

藤木 同じことを何度も繰り返してると飽きませんか?
 初日から飽きた。
川島 俺も。
勝又 初日やばかった。
倉島 俺は飽きるってことはなかったですね。
廣田 私もあんまりない。色々やってるから。
藤木 どんなこと?
廣田 最初は、とにかくお客さんに話しかけられたくなくて。話しかけないでオーラ全開でやってたんですけど、学芸員としてその態度は良くないかなって。やってても辛いし。で、途中から「あ、そうだ!畑井さん(展覧会のキュレーター)を真似しよう」と思って。やり始めてからからは気持ちも楽になったし、お客さんからも意外と話しかけられないし。
緒野 リハーサルやってみて、大丈夫かもって思ったんですけど。いざ始まったら、結構大変だなと思いました。
倉島 勝又さん、今はどうなの?
勝又 モチベーションが落ちるときはありましたよ。始まって2週間目くらいのときが一番きつかった。
倉島 でもそれ、表に出ないよね。
勝又 それは自分の中で解決してます。新しい楽しみ方を見つけていくとか。
 今も?
勝又 今は飽きたりとかないです。結局「今」に集中するのがいいって気づいて。
全員 お~。
勝又 いまやってる作業と、相手に集中するのが一番時間が過ぎるのが早いです。
川島 わかるわー。

戸井田 私も初日がいちばん飽きました。でもまだ何日もあるし、どうやったら楽しめるかなって色々考えて。あっ、毎回記憶をなくせばいいんだって思って、記憶をなくすようにしました。
倉島 繰り返してないってこと?
戸井田 繰り返してはいるんだけど、動く前に次は何だっけ?って思うようにしてます。
藤木 よく忘れられるよね。
南川 それは興味深い。
川島 小野さんが「僕らはこれをやるためだけに生まれてきたSFの世界の人なんだよ」って言ってたんですよ。ああ、そうだなって。
全員 あははは
川島 でも確かにそんな感覚かもなって。
全員 うんうん。
川島 動作が自然かどうかとか、もうない。だからもう自分にとっての自然体でしかやってないです。
 川島さんだけだよ、家にいても、控え室にいても、スケーパーをしてても何にも変わらないのは。
川島 だってそのままやった方が絶対いいと思って。
戸井田 川島さん、リラックスしすぎて今日も鼻歌歌っちゃってたもん。
川島 えー!そうなの!?
 キャラに合ってるから大丈夫だよ。
川島 全然気がつかなかった。
全員 あははは

 これだけは伝えて欲しいことがあって。
藤木 どんなこと?
 私、絶対お客さんに性格が悪いと思われてる思うんだけど、「そうじゃないですよ!」って釈明したい!あれは設定ですよって!
全員 あはは。
 設定として、笑顔を無くして、ツンデレのツンしかないようにやってるけど。
倉島 本当ですか?
 本当だって!これがお芝居だったら、そういうお話のそういう役だったってわかるけど。この展示だと、ただの性格の悪い女で終わっちゃう。
全員 ああ~。
 だから、図録とか見たときに「いたな、この性格が悪い女」って。
全員 あはは。
 スケーパーのときは、陽気なテンションを全てオフにしてやってるだけ。
全員 本当は明るくていい人だもんねー(棒読み)

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お客さんから作品として見られて

南川 ある意味オブジェのようにも見られてると思うんですけど、お客さんの目線についてはどう?
戸井田 そんなに気にしてなくって。普通にバイトに来てる感覚なので、見られてることに違和感とかはないです。舞台とかで見られてるのと重なるし。始まる前に仮設定のようなものを送ってもらったじゃないですか。
南川 はいはい。
戸井田 だからそれでやってる感じだったので。でも、他の人に話を聞いたら、設定は気にしてないって人が多くて「あ、気にしてないんだ」って。それで設定を抜いてみたら、バイトに来てる感覚になって。特に作品になってるって感覚はないです。
南川 見られてる感覚ってあんまりないんですか?
戸井田 お客さんも景色として見ているので。ただこっち見てるなっていう感じで。
増井 緊張とかはしないですか?
戸井田 しないです。
 私もしないです。
廣田 動作が体に染み込むまでは、多少緊張しましたけど。今はないです。

増井 やってるときって何を考えているの?
廣田 作業のことと、作業とは違うことも考えています。
川島 ああ、それはあります。今日は何を食べようかなとか。作業とは違うことを考えた方がわざとらしくならないから。
南川 確かに、実際作業してる人もそうだよね。

増井 忘れることはないの?
勝又 うーん。忘れてて、次なんだっけ?って思ってると、それより先に体が動いちゃう。動きが染み付きすぎて。
荒神 ゲシュタルト崩壊みたいなことはないの?
勝又 ないですね。
戸井田 デジャヴみたいな感じはあります。毎回忘れるから。一度もやったことがないはずなのに、あれ?またやってる?って。何度もやってるんですけど。
全員 あははは
川島 すごい才能!
南川 えー、それってすごいことですよね。デジャヴに近い感じというより、本当に忘れるからデジャヴが実際に起こってしまうってことですか?
戸井田 そんな感じです。
南川 いやー、すごいですね。そこまで忘れられるのも、すごい。
増井 見てる方も怖くなる。あれ、さっきも見た?って。

南川 終わって、日常に戻ったらどうなりそう?
勝又 わかんないです。これが日常になってしまってるから。どうなるんだろう。
 私は全然大丈夫。日常に戻れる。
勝又 一昨日、ゴミ収集車の人が帽子を落としたんですよ。最近、落とすっていう動作を見るとゾクッとします。
藤木 カラスの話は?
勝又 カラスが2日続けて同じ電線にとまってて。このカラス昨日もいたなって。スケーパーだって思います。本当に。
全員 カラス!
勝又 あと、古着屋さんに行ったときにマフラーを広げて、畳んだときにもゾッとしました。
全員 えー!
勝又 わ!俺また畳んでるわ!って。怖かったです。
 でも川島さんは、そういう感覚にならないでしょ?
川島 ならないです。
 川島さんは、勝又さんとは感覚が違うんだよ。私と川島さんは、展示をやっても日常に侵食しないと思う。

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「わからない」をみんなで守りたい

南川 今更ですけど、目に対して要望とかないですか?
※この対談を行ったのは、会期終了1週間前の2019/12/21
全員 うーん。
 要望じゃないですけど、未だに何をやってるのかわかんないんですけど。この作品は何なんですか?
南川 笑
 「非常にはっきりとわからない」を面白いって人と、つまらないって人がいるじゃないですか。私はこの展示が何なのかわからないままなので、何なんだろうって。何を思ってこれを作って、どこをどう楽しんだらいいのかっていう。
南川 生きてるのって謎じゃないですか?
 うーん。やりたいことやってれば意味があるし。なんで生きてるんだろうとか思わない。
廣田 なんで生きてるんだろうとかは思うな。
 生きることと死ぬことに意味があって。私は死ぬことを楽しみに生きてるから。
南川 うーん。
 全然わかんない!

南川 じゃあこれは?小学校のときから、答えに向かってたじゃないですか。正解はあって、わからないだとダメで。それで、時間が経って学校で教えられない…例えばロックとか。ラジオで耳にしたりして何だろうと興味を持っていて。それで大きくなって新たに友達ができたときに、「それ、俺も聞いてた」とか。それはそれで嬉しいんだけど、段々とロックが「わかる」みたいになことになってくる。
 はい。
南川 そういうのが積み重なっていくと、結局「わかんない」が絶滅していく。世の中では「わかんない」は、ダメって言われることが多くて、結局わからなきゃダメってなってる。
 うん。
南川 でも、今回だけは「わからない」が「わかる」に勝てるかも知れない。例えば作品を作るときであっても「こんなことやりたい」って提案したときに、当然「理由は?」って聞かれます。「理由がないとダメ」になっちゃうんです。
全員 うんうん。
南川 でも地球の運動って意味がないじゃないですか?
 うん。
南川 これだけの大人が一生懸命、本気で「わからない」ことをやると、それを子どもが見ても、これでもいいんだってなるかもしれないじゃないですか。「わからない」をみんなで守ってるんです。
 わかったかも!「この作品ってなんだったんですか?」って聞かれたときに、何もなかったって答えても、それはそれでOKということですね。
荒神 そうかも。
倉島 人が足を動かしてるって大きいかも知れないですね。お客さんとして見にきたときに思ったんですけど。足を動かして疑問に思うことって少ないじゃないですか。
全員 うんうん。

南川 よくあることですが、僕らが「こういう作品をやりたい」って言い始めたとしても、いつも仕方ない事情で変わってしまう。問題が起こったり。結局「わかる」方向に向かう。でも、今回はそうじゃない。全員が全員、無意味にまっしぐらというか。
 無意味にまっしぐら!今更だけどテーマができた!
全員 おおお!!(盛り上がる)
南川 友さんみたいに、わからないことでもはっきり言えるのってすごいですよね。それによってこうして皆で共有できますもんね!

スケーパーの日常写真

スケーパーをしていないときの写真をオンラインのアルバムで共有していました。

南川 みんながスケーパーをしていないときの写真をアルバムで見てると、よくこれだけ濃い人が集まったって思いますよ。
 薄い人を揃えたはずなのに。
全員 あははは
荒神 あのアルバムめっちゃ好き。

別のスケーパーとの対談はこちら。

「非常にはっきりとわからない」に参加したスケーパーの一部

勝又 諒平 twitter
川島 信義 instagram
伊藤 正幸
小野 峰靖 HP
廣田 琴美 twitter
盛 由子(ヴァリンダ) Facebook
霜垣 真由美 instagram
緒野 マナ美 twitter
橘高 絢 HP
加藤 美雲 twitter

倉島 聡
戸井田 奈都子 HP
関 美能留
矢島 理弘 instagram
鈴木 望生 twitter
内藤 ゆき twitter
緒野アヤ美 twitter
立山 東紀

2020年、東京の空に誰かの顔が浮かぶ

目[mé]の新作「まさゆめ」

──中学生の頃、突如、街の上空にまるで月のように人間の顔が"ぽっ"と浮かんでいる夢を見た。代わり映えのない日常の中で、ある日偶然見てしまったこの夢がなぜかとても大切な気がして、ずっと忘れられなかった。

4年に1度の人類最大規模の集いのなか、実在する誰かの巨大な顔が、東京の空に浮かぶ。その圧倒的な風景は、私たちがこの広大な世界に存在しているということの不思議や実感をあらためて問いかけるでしょう。空に浮かぶ顔は、特別な誰かではなく、あなたや私でもあるかもしれません。

Tokyo Tokyo FESTIVAL企画公募採択事業である“まさゆめ”は、年齢や性別、国籍を問わず世界中からひろく顔を募集し、選ばれた「実在する一人の顔」を2020年夏の東京の空に浮かべるプロジェクトです。

目 [mé]とは?

果てしなく不確かな現実世界を、私たちの実感に引き寄せようとする作品を展開している。手法やジャンルにはこだわらず、展示空間や観客を含めた状況、導線を重視。個々の特徴を活かしたチーム・クリエイションに取り組み、発想、判断、実現における連携の精度や、精神的な創作意識の共有を高める関係を模索しながら活動している現代アートチーム。

中心メンバーは、アーティスト荒神明香、ディレクター南川憲二、インストーラー増井宏文。


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「目 非常にはっきりとわからない」@千葉市美術館 スケーパー運営統括。 オムニバスムービー #平成最後映画 の1本「僕のパ、あなたのパ」監督。 https://www.yusukefujiki.com/
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